巨人の踏み拔く地は
無辜威に脅え寝やらず
平和搖れ浮ける夢魔を
細り聲
宥め證させ
もろ手閉づ
ゴヤ 巨人 Francisco de Goya (1746-1828)
1808-1812
きよしんのふみぬくちはむこゐにおひえねやらすへいわ
ゆれうけるむまをほそりこゑなためあかさせもろてとつ
ゴヤの絵は対ナポレオン戦争といふ時代背景を軸に鑑賞すべきでせうが、ふと一月前の北オセチア学校テロを思ひ出しました。チェチェン武装勢力が、多くの児童とその親等に残忍卑劣極まりない仕打ちを加へたその根源には、ロシアの南下政策に伴ひて制圧された民族の癒し難いルサンチマンがあつたのではないかと。
これを受けてロシア政府が一層の集権化に舵を切らうとして居る現状を一概に民主主義の尺度から批判するはあたらぬところでせうが、憂ふべき傾向ですが、支配側といふ者は過去の経験則の呪縛からはなかなか脱し切れぬものです。画中を占拠する巨人にも、打ちひしがれる民衆の影にも等しく、やり場のない憤怒と苦悩と恐怖の影を感じます。支配被支配の間に通底する解消しやうのない矛盾を今に予言し得て居る画幅かと思ひ本日の美術館に。