夏の落とし子、
その忘れ形見に耳を傾けて‥
‥‥‥
ロックにのめり込んでいったティーンの頃、
情報を深めようと様々な雑誌にも手を伸ばした。
バンドブームごときのナンパさじゃあ、
まさか手を伸ばす訳がないであろう「レコードコレクターズ」なる雑誌にも、
当然手を伸ばした。
当時の音楽情報誌の主流といえばナンパな「パチパチロックンロール」、「バンドやろうぜ」、後にエロ本→B級社会情報紙となるサブカルチャーな「宝島」。
誰もが読んでいたとは言わないが、フツーにロック好きなティーンは目を通す雑誌だったと思う。
そしてX、ブルーハーツ、RCやスライダース等にハマると「ロッキンオンジャパン」に移行する(ここまで来ると結構なロック好き)。
そこから洋楽にハマると「プレイヤー」やら「ギターマガジン」等のシンコーミュージック系の雑誌。
まぁ、この辺は楽器を持つ(持ちたい)人の情報誌でもあるんで読む人は限られるのだが。
‥そして徹底的にハマると「レコードコレクターズ」に辿り着くわけである。
ちなみにロッキンオンに行きつく人も、
いくらバンドブームと言えどそれほど居なかった様に思う。
そして幸か不幸か「レコードコレクターズ」に行き着いてしまったので、
誌上でまだ見ぬ(聴かぬ)様々な音楽に恋してしまうことになる。
「レコードコレクターズ」は執筆人が的確であり硬派なため、
レコードの音が言葉から聴こえるというか‥
実に魅力的だった。
そんなおり、当時のロックブームも手伝ってか、
「レコードコレクターズ増刊」なるものがシリーズ出版される。
そこでは様々なロックレジェンドの過去の発表作が、
実に魅力的に紹介されていた。
高校生には当然CDを沢山買えるお金も無かったし、
ラジオだけでは情報も限られる。
そんな時にこの本は“誌面上のラジオ”みたいなものだった。
そして大好きなビーチボーイズのドラマー、デニスウィルソンのソロアルバムに出会うことになる。
まだ文字の上でだけど。
当時、唯一のビーチボーイズのビデオ「アンアメリカンバンド」は観たことがあり、
その中でヨレヨレの状態のデニスが歌う「ユーアーソービューティフル」がすごく素敵だった。
だからデニスのソロアルバムってのはとても魅力的だった。
しかし当時は廃盤。
CD化もされていない状態だった。
そして数年後、渋谷の中古レコード屋で出会い、
割りと高値だったそれを、
またしても割りと高値だったフーのイギリス盤1st(ロック史上、サイコーにクールなジャケットだ)と共にやっと目前に出会い、
そして即、手に入れることとなる。
その時一緒にレコード屋巡りをしていた友人も流石に驚いていた。
「そんな高価なLPを2枚も同時に買う奴は初めて見た!」
その後二人で下北沢の俺の家で缶ビール開けながら聴き明かしたっけ‥
うん、とてもムードあるアルバムだった。
イメージ通りのアルバムだった。
「いいねぇ‥」
僕らはかなりの量の缶ビールを空にした。
‥そしてそれからまた数年後の去年、
やっと‥この素晴らしいアルバムがCDとして復刻された。
しかも幻のセカンドアルバムの音源やボーナストラックをおみやげにして。
このレコードのファンとしては待望の復刻、
しかもそのジャケット仕様には、溢れるほどの復刻スタッフ達の愛を感じられ、
とても嬉しいものであった。
‥そのイメージは夏、
しかし決して陽射しギンギンの夏ではない。
「サマーオブラブ」の忘れ物といった様な‥
切なさがたっぷりでさぁ‥
ビーチボーイズの中では唯一のサーファー・デニスはその晩年、とある思想団体と関わりを持ち、
その挙句、全てを失いボロボロになり溺死してしまう。
その晩年の彼の姿は、悲しくも映像としてハッキリと残っている。
‥でもね、その時のデニスの歌声の美しいこと‥!
晩年のデニスの行動の経緯については詳しいことは知らない。
ただ単純に、デニスの残した素晴らしい歌達に、
今夜も酔いしれるばかりだ。
それでいいんじゃないか?
それだけで‥さ‥
‥‥‥
夏の落とし子、
その忘れ形見に耳を傾けて‥
その忘れ形見に、
耳を奪われて


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