思い返せば、だいたいの作品を読んでいる作家は数少ない。昔から私は読書家ではないし、むしろ我慢して読んでいることの方が多いからだ(今もそうである)。読むのは速いが、忘れるのも早いので、繰り返して読むことが多いためでもある。
村上春樹はそういう数少ない作家のうちの一人である。私が村上春樹を読み始めたのは20歳の頃、ちょうど『ノルウェイの森』のあたりからだと思う。その後、『風の歌を聴け』にさかのぼって、だいたいの作品を、しかも繰り返し読んでいる。『羊をめぐる冒険』は5回は読んだ。『ダンスダンスダンス』も4回は読んだ。同じくらい繰り返し読んでいるのは、夏目漱石の『それから』くらいである。
新作が出るというので、だいぶ前から期待して待っていた。初版でかなり読まれているらしい。相変わらず非常に厚い本なので、いかに読むのが速い私でも休日のほぼ一日を費やした。東京で、夜、シンと静まりかえった夜に、読みたい本、である。

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