妖精のような歌声だ、って言うのはよく聞くけど。
彼女の歌声は まさに女神の歌声だと思う。
新幹線も乗り入れている大きな駅。
その駅の西口からでたところで彼女は毎週ストリートライブを行っていた。
疲れたサラリーマンやOL達がその歌声に癒しを求めて、毎回ライブは結構な人数が集まる。
「みんな、集まってくれてありがとう。 今日もいっぱい聞いていってね」
肩からかけたギターを演奏し始める。 一瞬で曲に心を奪われる。
心地よいメロディー。
そこに彼女の女神の歌声が重なる。 両方が引き立てあい、決してケンカしていない。
終始、彼女の歌だけがその空間を覆い尽くす。 車の騒音も気にならない。
「じゃあ、ラストになりました。 聞いてください」
最後の歌は元気のいい歌だった。 聞いてるだけでストレスなど飛んで行ってしまう。
演奏が終わり、拍手とアンコールの声が飛び交う。
「ありがとう・・・・本当にありがとう」
彼女は涙ぐむ、今までそんな事は無かったのに。
「ごめんね、今日でここでのライブは終わりなの。 あたし、メジャーデビューが決まったの」
祝福する声と惜しまれる声が入り混じる。
「あたしはこの場所が好きだった。 だから、あんまりデビューしたくないの・・・・」
観客は静まりえる
「だから、今日のライブの出来で決めようと思ってたの。 ここから巣立っても恥じないミュージシャンになれたかって」
周囲から拍手が起こる
「あなたなら立派にやっていけるわ」「CDでたら必ず買うよ」
「でも、またここでもライブやってほしいな」
など、いろいろな声が飛び交う。
彼女は目にいっぱい涙を浮かべ、服の袖でその涙を吹き取る。
「ありがとう。 じゃあ、今日は私がメジャーデビューのために書き上げた新曲を歌うね」
またこの場に熱気が戻って来た。
それから10年。 彼女は出す曲出す曲すべてオリコン一位を獲得するようになっていた。
「みんな、久しぶり! この場所は私の原点なの」
彼女は約束どおり帰ってきたのだ。
ストリートライブをやっていたころの観客の倍以上の人が見に来ていた。

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