toki の映画・読書ノート
映画と読書の感想と日常雑記
【 今週の巻頭言 】
Happiness. Simple as a glass of chocolate or tortuous as the heart. Bitter. Sweet. Alive.
幸福。グラス一杯のチョコレートのようにシンプルで、人の心のように複雑。苦くて、甘くて、生き生きとして。
「
Chocolat ショコラ
」/ジョアン・ハリス
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2005/8/21
「映画「いつか読書する日」(2005)」
日本映画・ドラマ
先月と今月、渋谷のユーロスペースで公開された田中裕子主演「いつか読書する日」と、原田知世主演「サヨナラ color」(現在公開中)を観ました。僕は主演の二人の女優さんのデビュー当時からのファンなので、久しぶりの再会ができてうれしかった。お二人の魅力はもちろんのこと、どちらの作品もとてもよい内容でした。
「いつか読書する日」(2005)
(監督)緒方明 (演)田中裕子、岸部一徳、仁科亜希子、渡辺美佐子
私には大切な人がいます。でも私の気持はぜったいに知られてはならないのです。
高校の時の初恋の相手だった美奈子(田中裕子)と槐多(かいた・岸部一徳)は、美奈子の母と槐多の父が自転車に相乗りして交通事故死してから会わなくなった。それから30年が経ち、美奈子はいまだ槐多への想いを抱きながら一人暮らしをしていた。末期がんで寝たきりの槐多の妻(仁科亜希子)は、偶然そんな二人の想いを知り、死の直前に自分の最後の願いを綴った手紙を二人に託した。
30年もの年月、相手への変わらぬ想いを抱き続けることができるのだろうか。できたとしてもその想いは日常化することにより風化し、美奈子にとって生活習慣の一部に変質していたに違いないと思う。そんなとき、思いがけない形で二人が直面することになる現実(希望、絶望?)に、内心は動揺しながらも凛とした美奈子の姿が切なく、また美しいと思いました。
美奈子の部屋の一角に大きなスペースを占めた本棚には、読書中の「カラマーゾフの兄弟」(米川正夫訳がうれしい)などの海外文学、福永武彦などの日本文学から早川のポケミスまで美奈子の守備範囲はとても広く、共感を覚えました。
本を読むことができさえすれば、たとえこのまま想いが槐多に伝わらなくても、美奈子は悔やむことはなかっただろうとも思いました。
美奈子の叔母(渡辺美佐子)は小説家のようで、彼女は美奈子をモデルにした小説を書いていました。映画の結末のつけ方がいかにも小説的(ドラマティック)であったので、もしかするとこれは叔母の小説の結末が引用されているのではないか、現実の物語(美奈子と槐多の関係)はもっと日常的な形で続いていたのではないかという気がしています(そうであって欲しい)。
夜明けの空気の中、自転車も通れない急で長い階段坂を、牛乳びんを詰めたバッグを肩にかけて一気に駆け上がっていく美奈子。背景となった長崎の町の風景も強く記憶に残る映画でした。
(参考)
●「
いつか読書する日」公式サイト
●
渋谷 ユーロスペース
1
投稿者: toki
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投稿者:
toki
2006/8/27 21:10
待ち続けた時間の長さに比例して愛の純度が極まっていったのだなと思いました。
たとえ槐多の死が事実であったとしても、彼に後悔はなかったのでしょうね。
昨日図書館から借りてきた「向田邦子傑作ドラマシリーズ」の1作「思い出トランプ」でも田中裕子と岸部一徳が共演していました。16年前のTVドラマだそうですが、こちらもとてもよかったですよ。
http://blue.ap.teacup.com/tokizawa/
投稿者:やこ
2006/8/24 0:04
>もしかするとこれは叔母の小説の結末が引用されてい
>るのではないか、現実の物語(美奈子と槐多の関
係)>はもっと日常的な形で続いていたのではないかと
>いう気がしています(そうであって欲しい)。
わたしも同感です!でも岸部一徳の最後の表情が
とても良くて救われました。
昨今、純愛ブームと言われた映画が(だいたいは広告
が激しすぎるやつ)何本かありましたが、「読書する
日」はまさに純愛と言うにふさわしい、珠玉の一作だ
と思いますね
投稿者:toki
2005/8/24 12:41
たしかに、実際に自分の足で歩かなければならない現実は薄氷の上なのですね。
薄氷の上で生きていることを受け入れるための勇気と、心の安らぎとを本の中の仮想現実に求めているということなのかなと思います。
本(たとえば「カラマーゾフの兄弟」)には現実の重みを支える力があると思っています。
http://blue.ap.teacup.com/tokizawa/
投稿者:マツナガ
2005/8/23 14:37
>本を読むことができさえすれば、たとえこのまま想
いが槐多に伝わらなくても、美奈子は悔やむことは
なかっただろう・・・
>本の中で生きる現実も、その重さにおいて日常の現
実と比肩できるのではないかと思っています。
なかなか私にはドキリとする内容でした。”
本の中で生きる現実”は例え”比肩できる”として
も”薄氷の上を歩く”ようなもの。それを受入れ
て”歩く”。でも現実は薄氷の上なのです・・・。
でもそのはかなさをも含んだ決意(受け入れる
事)がこの映画を美しくしているように感じていま
した。
http://depthtruct.exblog.jp/
http://depthtruct.exblog.jp/
投稿者:toki
2005/8/23 12:14
本の中で生きる現実も、その重さにおいて日常の現実と比肩できるのではないかと思っています。
クニコさんの映画評拝見しました。
美奈子が読みながら涙した「カラマーゾフの兄弟」と映画の関係についての示唆に富んだ考察に瞠目しました。
http://blue.ap.teacup.com/tokizawa/
投稿者:
マダム・クニコ
2005/8/22 13:17
>本を読むことができさえすれば、たとえこのまま想いが槐多に伝わらなくても、美奈子は悔やむことはなかっただろう・・・
同感です。幻想の中で、恋愛もののヒロインになれるのですから。
http://blog.goo.ne.jp/mt1936_001
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