
■「
2つの『森』の思想(その2 )」で書いたように、「東京の『森』の思想とは異なる、まったく別の『森』の思想」を、「2つの『森』の思想(その3 )」で述べる予定にしていたのですが、その予定を少しかえて、再開発と深い関係にある「
土地問題」について、ひとつの記事を紹介しておきたいと思います。
■2005年10月17日(月)の朝日新聞の「らうんじ戦後60年」のシリーズものの記事です。この回は、「
土地の60年 農地改革に始まった『土地神話』。一攫千金狙いバブルに、果ては二極化に。いまや株と同じ金融商品。」です。
■記事のなかで、不動産投資に係わる関係者は、「『
土地はいまや株と同じ金融商品。投資物件は『勝ち組』だけを選んできた」と述べています。「土地が市場経済に組み込まれる度合いは深まるばかり」なのですが、記事は、その「商品化」の源流が、戦後の農地改革にまでさかのぼるといいます。
「戦後の農地改革は戦前の地主支配に代わって、多数の小規模土地保有者を出現させた。都市への人口集中が加速すると、細分化された土地の価格は上がり続け、『土地神話』が生まれた。土地は有利な資産となり、企業にとって土地を持つことが事業拡大につながった。不動産担保融資の割合は、49年の8.3%が75年には31.4%。独特の『含み益経営』や『土地本位経済』が形成された。」
このような「土地本位経済」が頂点に達したのが80年代の後半のバブル期でした(今、大学で教えている学生たちのなかには、この頃生まれた学生がたくさんいます)。
■新宿区の富久町は、98年に破綻した
日債銀からの地上げ資金で「土地転がしなどによる一攫千金の攻防の舞台となった」ところです。
「現金を抱えた男たちが路地裏を走り回った数年後、
バブル崩壊。宴のあとに残ったのは、世帯数半減、地区面積の6割が空き家や駐車場という『
虫食いの街』だった。5億円の売却金が入るというので、前受け金と銀行融資で賃貸マンションを建てたものの、残金をもらえないまま地上げ屋に逃げられ、全財産を失った街を去った人もいる。
農地改革は、民主化と平等主義という戦後の政策理念を象徴した。だが個人も企業も、私的利益の追求に走るあまり、生活や生産の基盤であり公共的な性格の強い土地を、値上がり益や配当の対象にしたのが、戦後日本だった。」
■現在、六本木ヒルズやアークヒルズのように、再開発で収益をあげることのできる「使える土地」をもつ都心と、それとは反対に投資もなく「使えない土地」として放棄される地方との、二極化が始まっているといいます。
土地の「勝ち組」と「負け組」が生まれてきているのです。
■『日本列島改造論』田中角栄のお膝元、「地価はピーク時の3分の1、廃業した商店の土地が放置されている」長岡市中心部の話しが登場します。上越新幹線などの開発がはじまると、押し寄せたのは、「土地投機でもうけようという中央の不動産業者や大手商社だった」といいます。そして、このような地方の開発を土地投機のチャンスとしてとらえるような当時の状況を、国土総合開発計画を作ってきた元・国土事務次官は、「開発景観は土地が金融に利用され、資産追及の広告宣伝に使われた嫌な思い出だ」と述べています。そして残された現実は、「工場は海外に出ていき、兼業が大半の農家は田んぼを人に貸している。以前は担保になるから土地を無理してもっていたが、いまは買い手もいない。地方は土地とともに沈んでいく感じ」だったのです。
■記事は、「生活の足元がどこかで落ち着かないのも、土地を市場にさらしてきた戦後社会の帰結だ。」と締めくくっています。この記事と同じページに、作家の宮崎学さんがコメントをしています。そのなかで印象的なことを語っています。宮崎さんご自身も、バブル時に立ち退き交渉を仕事とされていました。
「額に汗して働いていればいいことがある、とやってきた人たちが突然、何億円もの立ち退き料をもらったという話しにでくわした。土地を売れば全部解決するよ、という悪魔のささやきが聞こえてきたのだ。
地上げをやる側は金になれば何でもよかった。土地にこだわっていたわけではない。金でなんとでもなるということにでやっていた。
だが、小さな頃から慣れ親しんできた故郷の町が、地上げでこつぜんと消えたのをみて足がすくんだ。自分が地上げをしながら壊していたものは、人々が暮らしてきた地域共同体だったんだと気づいた」。
■一番上の新聞記事の写真には、次のようなキャプションがついています。「地上げの攻勢を受けた当時の姿を残す地域。その向こうに、再開発されたマンションが立つ」。

写真は、記事とは直接関係はありませんが、やはり、再開発でマンション建設の進む東京・小石川です。ブログを通して親しくさせていただいているのMさんに案内していただきました。(Mさんの写真は、
私のものとはまったく違ってすごいですから。ほんとに。)宮崎さんが語っている「地域共同体」、ここでも消えつつあります。
■「
2つの『森』の思想(その1)」と「
2つの『森』の思想(その2 )」で、中沢新一さんの『アースダイバー』と関連づけながら東京の再開発の現状について見てきました。今回は、この記事を紹介することのなかで、「なぜ、今、『アースダイバー』なのか」、その背景を自分なりにもう一度整理・理解しておこうと考え、予定を変えることにしました。「2つの『森』の思想(その4)」は、岩手県の県北、一戸町にお住まいのおじいさんのお話しです。7万坪の土地に、どんぐりのなる樹の森を育てている方のお話しです。

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