
■昨日の「
大阪にも『地図と歴史』を!(その6)Google Earthと上町台地」にも書いたように、iGaさんの『
MADCONNECTION』の「
Google Earthは悟空のきんとん雲」を読みました。そして、はまってしまいました、Google
Earth に!!

。
■飛行機に乗るとき、できるだけ
窓側の席を取ります。そして、国内だとずっと、窓の外を眺めています。そして、特徴的な地形を確認しながら、景色を楽しみます。まさに、「
遊覧飛行」の感覚です。しかし、この Google
Earth からは、そのような「遊覧飛行」の楽しさを感じるとともに、なにやらそれとは
別の気持ちの悪さも同時にそこに感じてしまうのです。
■それはともかく、Google Earth を使うと、いろんな所に「
行くこと」ができます。いま「
行くこと」が、と書きましたが、もちろん実際には行くことなどできません。Google Earth で体験できるのは、すべて「
死んだ景観」です。実際の「遊覧飛行」とは違います。ちょうど、生物学者が、フィールドで採集してきた魚をホルマリンやアルコール標本にするのと似ています。ただし、Google Earth の写真は、人工衛星によって撮影された「
死んだ景観」なのです。
■Google Earth を使っていると、地図帳(アトラス)や最近出版されるようになった航空写真の本を見るのとは、かなり違った感覚を経験することになります。地図帳にしろ航空写真の本にしろ、「
主導権」は、地図帳や本を編集する側にあります。しかし、Google Earth のばあいは、あたかも使う側のほうに「
主導権」があるように感じられるのです(地図や航空写真でも、主導権をもつことができるのですが、それには訓練がいります。修行がいります)。「
行くこと」ができると書いてしまうような、そのような感覚を私たちのなかに生み出します。もちろん、あくまで錯覚にしか過ぎないのですが。Google Earth を通して、私たちは、「
死んだ景観」に関する大量の画像情報を巧くつなぎあわせて、空間を移動するという感覚を味わうことになります。しかし、たとえ錯覚であるにしろ、この感覚は強烈です(最近の技術は、人間の脳みその中心に直接的にはたらきかけてくるものが多いですね、ヤバイです)。少し、Google Earth の写真を見てみましょう。
■これらの写真は、すべて Google Earth によるものです。【トップ】まずは、手近な所から。大きな構造物・・・と考えてて頭に浮かんだのが、
明石海峡大橋です。画像の解像度が高いエリアと、そうでないエリアの両方にまたがっています。南(下)に見えるのが、
淡路島です。画像が不鮮明なほうが、
神戸市垂水区にある舞子です。大橋は、単なる直接でしか見えないのですが、
海峡にうつった影で、この直線が巨大な吊橋であることがわかります。
■続いて、こんどは、グ〜ンと遠くに「行って」みましょう。
エジプトに飛びました。
カイロの郊外にある
ピラミッドとスフィンクスです【上左】。スフィンクスは、sphinx って書いてある字がないとよくわかりませんが、ピラミッドはたしかにはっきりみえますね。
■ピラミッドは、文化遺産です。すでに墓としての神聖性よりも、文化遺産というイメージのほうが強いように感じられます。将来、そのような文化遺産、それも近代遺産として登録されるかもしれない(もちろん冗談なのですが・・・)建物を見てみることにしましょう。【上右】この三
角形のタワーのような建物がなんだか分かった人は、かなりのマニアです。これは、
ピョンアンにあり、現在、建設が中止されている
柳京ホテルです。ネットの情報によれば、「高さ300メートル105階建て、約3000の部屋数を誇る超巨大ホテル」なのだそうです。しかし、現在は廃墟になっているそうです。
■では、その下【下左】。これはなんだかわかりますか。ピョンヤンから南に215`ほどいったところにある、「
板門店」です。韓国と北朝鮮の分断の地です。探すのにかなり苦労しました。やはり、地図(アトラス)を手元におきながら見ないと、たいへんです。右上が北朝鮮側、左下が韓国側です。 Google Earth では、解像度の高いエリアとそうでないエリアがあります。この「板門店」のばあいはギリギリ、解像度の高いエリアのなかにはいっていました。この写真には写っていませんが、周囲にある水田に注目すると、韓国側のほうは、土地改良を行っているようにみえます。そしてなによりも、コンバインで刈り取った特徴ある跡がありますが、北朝鮮側にはありません。しかし、不思議ですね〜。この解像度の高いエリアの設定には、なにか意図があるのでしょうか??(ダウンロードするサイトに説明があるかもしれませんが)
■こんどは国内です。私は、造船関係のサラリーマンの息子で、少年時代、西日本の港のある街を転々としました。そのような街のひとつが、
広島です。当時、住んでいた郊外(混住化地域)の家を確認することができました。裏山は住宅地にかわっていました。いや〜、実際にいってみると、すっかり景観がかわっているのでしょうね。ところで、広島といえば、多くの人びとが訪れる場所に、
広島平和記念公園があります。
原爆が投下された場所に記念公園がつくられました。そして、そこには様々な慰霊碑がおかれ、平和記念資料館もあります。ところが、です。【下左】の写真を見えください。この記念公園を含んだエリアだけが、 Google Earth では、解像度が低く、ここに何があるのかがわかりません(灰色っぽい部分が解像度が高く、赤っぽいところが低いのです)。う〜ん、これはどう考えたらよいのでしょうか。ここにもなにか意図があるのでしょうか??(考えすぎだと思いたい…)
■生身で感じる景観との対比であえて「
死んだ景観」と表現しましたが、このような Google Earth を使うと、やはりいろいろな発見があります。この記事で取り上げたような構造物以外にも、
棚田のような人間がつくりだしたものから、地学的な地形の特徴にいたるまでをいろいろながめてみました。とっても
勉強になります。また、「
遊楽飛行」をして楽しむことができます。
■さて、冒頭に書いた「別の気持ちの悪さ」ということについても述べておきましょう。「遊覧飛行」は、自分の住んでいる働いている街、あるいは観光に来て歩いた街を、普段やこれまでとは違う視点、つまり「鳥の眼」から見るところに楽しさや面白さがあるように思います。有名な
吉田初三郎のパノラマ地図なども、これと似た楽しさや面白さですね。小さな飛行機に乗って、ブ〜ンと街の上にまいあがり眺める。そして、またもとに場所に舞い降りる。そのような経験は、普段の感覚と、空から見る「鳥の眼」の感覚とが繋がっています。また、地図マニア、地形マニアの皆さんが、地図をみるときの感覚も、実際にフィールドを歩くときの「虫の眼」の感覚と、地図を見るときの「鳥の眼」の感覚がどこかできちんと繋がっていると思うのです。そうでないと、意味がありません。
■ところが、この Google Earth には、そのような
「鳥の眼」と「虫の眼」の間を往還するような契機が見えてきません。もちろん、問題は Google Earth の使い方のですが・・・。ここにあるのは、圧倒的に「鳥の眼」、いや「神の眼」のような感覚です。 Google Earth は、「
対象」を一方的に見つめる自由に操作する「神の眼」のような感覚をスムースに経験させてしまうのです。Googleのマップでも少しそのようなことを感じましたが、この Google Earth は、その比ではありません。地球全体から、解像度の高いエリアでは、たとえばニューヨークのセントラルパークでピクニックシートをひろげて日光浴をしている人たちに至るまで(本当に芥子粒のような存在にしか見えませんが)自由自在に見ることができるのですから。
■繰り返しますが、問題は Google Earth の使い方なのです。しかし、それでも冒頭に述べたような「
別の気持ち悪さ」を感じるのは、このような
Google Earth を使用するときの感覚が、私たちの日常生活のなかにしだいに浸透しつつあり、「あたりまえ」になってきているからなのではないでしょうか。ちょうど、米軍によるミサイルの画像などは、その典型ですね。いろんな意味で大変強いショックを受けたあの画像が、いつのまにか、「あたりまえ」になってきています。
■少し前のことになります。私よりも10歳程年上のコンピュータサイエンスの研究者と話していたときのことです。「
私たちの研究成果は、すぐにああいう形で軍事技術に利用されてしまうのですよ。もっと、環境問題だとか人類の幸福に役立つ技術を研究してきたつもりなのですがね。」とお話しくださいました。私はよく知りませんが、このような衛生画像の技術が軍事技術と無関係とは思えません。もともとインターネットも軍事技術がはじまったことを考えれば、笑いごとではありません。
■問題なのは、こういった技術が処理する「対象」になってしまっているにもかかわらず、「対象」を一方的に見つめる、自由に操作する「神の眼」のような感覚をスムースに経験し(テレビで見せられたミサイル攻撃の映像に典型的なのですが)、その感覚を内面化してしまうこと…。今、大切なことは、こういった
「鳥の眼」(あるいは「神の眼」)の技術に取り込まれることなく、それを「虫の眼」のレベルからどのように使いこなしていくのか、ということのように思うのです。
【追記1】
■ナスカの地上絵や、イギリスのストーンサークルも探してみましたが、解像度が高い地域でなく、また手元に位置を示す具体的な情報がなかったので、うまくいきませんでした。もし Google Earth を使用されるのであれば、地形図や地図を手元においておくとよいと思います。
【追記2】

■Google Earth で探してきた画像の“偏り”は、私が「文化遺産」の社会学的研究をしていたからだと思います。少し以前ですが、『
文化遺産の社会学−ルーヴル美術館から原爆ドームまで−』(2002年,荻野昌弘編,新曜社)という本をグループで出しました。と、ちょっと宣伝

。

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