
■先月の末のことですが、岐阜県の
各務原市にいってきました(あいかわらず、ブログ的な意味で"旬の時期"を逸しています…)。地名の読み方ですが、「かかみがはら」と読みます。我が家の子供たちがまだ小さい頃、この各務原市にある「
かかみがはら航空宇宙科学博物館」に行ったことがありますが、各務原市のこと、な〜んにもわかっていません。そんな私なんですが、岐阜県教育文化財団・生涯学習センターのお手伝いということで、この各務原で開催された地域づくりのワークショップを見学させていただくことになりました。なぜ、岐阜県なのか…という点については、
こちらをお読みください。まあ、「ご縁」というやつでしょうか(「ご縁」って大切ですよね…)。
【各務原市つにいて】
■俄か勉強の成果(?)を少しだけ…。この各務原市、かつての木曽川が形成した河岸段丘である各務原台地のうえにあります。水はけがよいといいますか、水持ちが悪いといいますか、稲作にはまったく不向きで、山沿いの街道にそって広がる地域では溜池に依拠した農業が行われていましたが、それ以外の地域には原野が広がっていただけといいます。その原野に、1879年、陸軍の演習場が開設され、1917年には陸軍各務原飛行場が開設されました。現在では航空自衛隊岐阜基地となっています。現在の市域は合併によるものですが、その真ん中にドーンと飛行場があるわけです。戦後は、航空機部品や自動車に関連する工場が集積する県内でも有数の工業地域となっています。

■岐阜県では、岐阜県生涯学習審議会の答申(2007年3月20日)を受け、県内の生涯学習を、「個人的生活充実のための学習」から「社会的生活拡充のための学習」へとシフトさせていくことになりました。私なりに言い換えてみると、人々の「幸せの尺度」を「私の幸せ」から「私も含めた私たちの幸せ」へシフトさせていこう、そうすることで地域づくりの基盤をつくっていこう、ということなのでしょう。そして、この答申にそって「『地域づくり型生涯学習』推進モデル事業」として「岐阜県生涯学習マスター養成講座」が企画され、2007年度は各務原市で実施されることになりました。今回、私が見学させていただいたワークショップ(WS)は、この「岐阜県生涯学習マスター養成講座」の第2回目にあたります。
■予定では、今後、このモデル事業は、5月:ワークショップによる地域課題設定、6月:地域課題を解決するための方策・計画の立案、7月〜8月:市内各地域での実践、9月:中間報告、10月〜11月:地域での実践、12月〜1月:まとめと発表会の準備、2月:市民を対象にした実践発表会の実施、こんな感じで進められていくようです。

■というわけで、この日、この「岐阜県生涯学習マスター養成講座」の講師である、早稲田大学WABOT-HOUSE研究所の小笠原先生のご講演を拝聴し、先生の指導のもとで和やかに進むWSの様子を見学することになりました。
■WSは4つのテーブルにわかれて始まりましたが、そのうちの1つのテーブルは、大規模な新興住宅地にお住い皆さんでした。おそらくは、60歳〜70歳代の皆さんと思われます。この各務原に一戸建ての住宅を求めて転居され定住されている皆さんです。少しお聞きしてみたところ、隣接している農村地域とはほとんど交流がないとか…。各務原は、岐阜県の一番南に位置しています。お隣は愛知県。名古屋までも名鉄を使うとすぐです。というわけで、高度経済成長期以降は、名古屋市のベッドタウンにもなってきました。大規模な住宅地が開発されています。もともとの農村地域に、工業地域、新興住宅地が混在するようになった、いわゆる「混住化地域」であるわけです。
■ちなみに左上の写真は、各務原市役所の職員チームです。行政の立場から、WSに参加されていました。
■すでに述べたように昨年度から、岐阜県の生涯学習関連の事業に少し関わらせていただいています。ただし、「個人的生活充実のための学習」から「社会的生活拡充のための学習」という方向性に賛同しながらも、正直、少し違和感も感じてきました。個人的な意見ですが、リーダーを養成し、そのリーダーを各地域に派遣して地域づくりを活性化させるという発想、行政の立場からすると、施策的には効率的なやり方に思えるのかもしれませんが、そこには以下のような危険性があるように思うからです。
■地域づくりのあり方や進め方は、ひとつの県の中でも様々です。岐阜県のばあい、この各務原のように名古屋の衛星都市のような地域から、飛騨高山のような地域まで、多種多様な地域を含んでいます。それぞれの地域は、さまざまな条件や歴史を背景にした固有の課題をかかえています。そのさい、地域住民が地域内部の固有の課題を発見し、その課題に取り組んでいく過程で、地域づくりの担い手やリーダー、言い換えれば地域づくりの主体が形成されてくるという点を重視しなくてはなりません。地域づくりの成果ばかりに目がいきがちですが、この主体形成の過程にこそ地域づくりの重要なポイントが存在しているように思うからです。ところが、行政側がトップダウンに地域づくりを推し進めようとするとき、地域づくりがいつのまにか行政の「下請け機関」化してしまう「エージェント化」の危険性が発生してきます。また、行政があらかじめ地域のあり方について青写真をもち、そこに地域づくり活動を誘導していくような「ミッション化」の問題も生じてしまいがちです。そのとき、せっかくの主体形成のチャンスはしぼんでしまいます。
■行政が、限られた期間と予算で、とにかく成果(もちん行政組織からみた成果であって、地域住民が納得するような成果であるかどうかは別問題です…)を出そうと一生懸命になればなるほど、そのような「エージェント化」や「ミッション化」の落とし穴にはまってしまいがちです。そのような問題を発生させてしまうと、地域づくりの活動は、行政の事業予算がつかなくなり、行政が支援の手を引いてしまったとたんに停止してしまいます。地域づくりは、持続性のないものになってしまいます。そのような地域づくりは、行政の施策や事業を正当化するための単なるアリバイとしてしか意味を持たなくなります。もちろん、現場の職員の皆さんはさすがといいますか、私と同じような問題認識を強くお持ちのようでした。むしろ、県(本庁)の方向性と現場の実態とのあいだで、御苦労されているようにお見受けしました。でも、ここで踏ん張って、頑張ってほしいわけですね。
■もし、岐阜県が、地域づくりと生涯学習が結びつきをさらに強化していこうとするのであれば、このようなトップダウン方式とは別に、逆に自発的な地域づくりの活動のなかで生まれた担い手をさらに支援していくような、そんな事業も県として進めていくことが必要ではないでしょうか。たとえば…。地域の具体的な課題に自発的に取り組んでいる人たちは、現在、まさにさまざま情報や資源を必要としている人たちでもあります。そのような人たちが自分たちの地域づくり活動のこれまでの経緯や成果を発表し、交流し、ノウハウや情報交換をし(成功の秘訣、失敗談、さまざまな資源へのアクセスも含めて)、さらにレベルアップを目指すような「場」づくりが必要なように思うのです。そして、それぞれの地域づくり活動に取り組む人たちの「ネットワーク」が県内に拡大していくことが必要だと思うのです。そのような「場」や「ネットワーク」が生きた地域づくりのデータベースといってもよいのかもしれません。これは、大きな財産になります。
■もうひとつ。狭義の生涯学習を範囲を超えて、さまざまな部局で展開している地域づくりの活動との連絡と調整をきちんと進めていく必要もあるでしょう。地域住民の側からみたとき、対地域住民の地域づくりの施策や事業がバラバラと降りかかってくるようにみえることは、避けなければなりません。行政が、自分たちに何かをさせようとたくらんでいる、なんて疑われることのないようにしなくてはいけません。また、今回の「岐阜県生涯学習マスター養成講座」(「『地域づくり型生涯学習』推進モデル事業」)のばあいは、県と各務原市との関係になりますが、これまでによくあったような上意下達的な県-市町村関係を超えた、互いの弱点を相補うような連携関係、新たな地域づくり支援システムを構築していく必要もあるように思いました。さらに、このような地域づくりの事業をどのように評価するのか、これも難しい問題ですね。現場が見えないと、事業への参加者といった単純な指標だけで評価してしまいがちですが、それはとても危険です。検討すべき様々な課題が見えてきますが、ここで踏ん張らないと、頑張らないといけません。
■「岐阜県生涯学習マスター養成講座」には、あと2〜3回お邪魔することになっています。このモデル事業のなかから、次の創造的なステップにむかうための「発見」や「手がかり」が参加者と職員の皆さんに共有できるようになればと思っています。そのためにも、微力ながら応援させていただきます。現場の職員の皆さん、頑張りましょう。

■各務原での見学を終えたあと、名古屋に向かいました。名古屋では、一昨年度、そして昨年度、私が担当していた大学院の授業を履修していた大学院のOB・OGと再開することになりました。Sさんと、M君です。Sさんは法学研究科の院生でしたが、私の所属する社会学研究科で私の「地域社会論研究T・U」を履修して、現在は、名古屋にあるNPOで活躍しています。大変辛い時期もあったようですが、精神的にさらに成長した様子でした。M君は、大手航空測量会社の営業職に就職し、がんばっています。ひさしぶりにあった2人と、名古屋の夜を楽しく過ごすことができました。名古屋には、私の学部ゼミ出身者があと2名働いています。こんどは、全員で同窓会です。
【追記】10月上旬には、岐阜県教育文化財団・生涯学習センターで講演をすることになりました。岐阜の皆さんとお会いできること、楽しみにしています。

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