
■ひっ…さしぶりに、「環境/まち・滋賀」のエントリーです。
■ここは、滋賀県高島市マキノ町海津の湖岸です。じつは、この写真、私のゼミの4回生(4年生)の学生、Tくんが、卒論の調査で撮影したものです(昨年の夏)。この海津には、洗い場と井戸がひとつのセットになった「イケ」や、琵琶湖で洗物をするための「橋板」があることで知られています。昨年の11月、国の文化審議会は、「高島市海津・西浜・知内の水辺景観」を重要文化的景観に選定するよう文部科学相に答申しました。選定されると、滋賀県では「近江八幡の水郷」に次いで2番目、全国で7件になります。「伝統漁法と多様な水文化が残り、湖上交通に携わった人々の流通、往来が生み出した水辺景観が評価された」とのことです(京都新聞「
湖国2件目の重要文化的景観に高島の海津・西浜・知内の水辺 」2007年11月17日(土)参照)。
■トップの写真は、代表的な水辺景観のひとつでもある海津の「橋板」です。湖岸に暮らす人びとは、昔から、この「橋板」に乗って洗物をしてきました(
今昔写真の比較)。もっとも、T君の関心は、この「橋板」よりも、「イケ」のほうにあります。T君は、水道が入り、「イケ」があまり使われなくなったにもかかわらず、なぜ人びとはこの「イケ」を守っていこうとするのか、そのことを、人びとの伝統的な水辺環境の利用とその変容、さらには人びとの意識等を、丁寧な聞き取り調査から明らかにしてきました。筑摩くんの研究もぜひ紹介したいところですが、今日のエントリーでは、この「橋板」に注目しようと思います(Tくん、ごめんネ〜)。

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Google Mapの地図をみると、トップの写真のような浜がずっと続いていることがわかります。写真では、3つしか見えませんが、この海津には7つの「橋板」があります。この「橋板」の構造は、左の写真からもわかるようにいたってシンプルです。トップ写真では、流されないように紐がついていますね。ところが、この「橋板」、ずっと法律違反として扱われてきました。以下は、
2007年12月27日「毎日新聞」の記事です。
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琵琶湖:原風景守られる 高島・マキノ町海津の「橋板」、県審査会が了承/滋賀
◇文化的価値認め、市に許可伝達へ
高島市マキノ町海津地域の琵琶湖岸に住民らが設けた桟橋状の「橋板」の設置許可を検討する県の「琵琶湖占用審査会」が26日、県庁で開かれ、七つの橋板が了承された。河川法の占用許可がなく、撤去が求められてきたが、琵琶湖と一体の昔ながらの暮らしを象徴する文化的価値が認められた。県は近く、市に許可を伝える。
橋板は長さ約3メートル、幅約30センチの木製の板で、住民らが野菜や衣類などをすすぐために設置。戦前からあるが、河川法の占用許可がないため、県と市が昨秋から協議。市が住民に代行して占用許可を県に申請していた。
この日は、座長の県土木交通部の吉田敏雄次長ら約10人が出席。県が86年に定めた「琵琶湖敷地の占用許可基準」にはないが、橋板は小型で河川法施行(64年)前からあるため、占用が了承された。反対意見はなかった。
担当の県河港課は「河川法の想定外の施設だったが、これで法的な位置付けができた」と話す。地元で橋板を掛けている小多明さん(66)は「法的に認められ安心した。これからも琵琶湖の原風景を守っていきたい」と歓迎した。【近藤修史】
毎日新聞 2007年12月27日
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■記事のなかで、河港課のコメント「河川法の想定外の施設だったが、これで法的な位置付けができた」に注目しました。というのも、「実態として、伝統的に使用されてきたけれど、法的な位置づけがはっきりしないから、これまでは、役所としては撤去するようにとしか言えなかった。だけど、『琵琶湖占用審査会』の判断が出たので、やっとホッとできる」、そういう気持がとてもよく伝わってくるからです。おそらくは、背景には、嘉田滋賀県知事の意向があるように思います。「もったいない」で有名な嘉田知事ですが、彼女は、長いあいだ環境社会学の研究者として、琵琶湖水系の水利用に関する研究を行ってきた人です(以前、勤務していた琵琶湖博物館では上司でした…ということで、以下は嘉田さん)。嘉田さんの日々の行動がわかる
「かだ便り」(2007年7月1日、ページの一番下)を見ると、そこには「この清掃にあわせて、湖岸に、なつかしい『橋板』が再現されました。かつて、水道が入るまでは、飲み水をとり、洗濯をし、人と湖のつながりのかけ橋でもあった、浜辺の橋板です。板の陰には、小魚もかくれ、人と魚をつなぐかけ橋でもありました。これまでは位置づけが曖昧だった橋板を、『生活文化を活かす環境学習用』として、活用いただけるめども立ちました。子どもたちも近づいてきて、自然と人が湖にはいっていく、その場面は何ともうれしい光景でした」と書かれています。そして、年末の文部科学相への「重要文化的景観」の答申です。河港課としても、法的な位置づけを明確にしなければならなかったわけですね。
■さて、この「重要文化的景観」の答申が年末に出たあと、新年になり、嘉田さんは「琵琶湖の世界遺産登録目指す意向表明」を行います。以下が、
2008年1月5日「毎日新聞」の記事です。
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嘉田由紀子・滋賀県知事は4日の年頭記者会見で、琵琶湖の世界遺産登録を目指す意向を表明した。庁内にプロジェクトチームを設ける方針。「ハードルは高いが、活動を通じて琵琶湖の価値を発信する機会にしていきたい」と話している。
世界遺産には自然遺産、文化遺産と、双方の価値を備えた複合遺産の3種類がある。嘉田知事は琵琶湖について「伝統的な水辺の文化が維持されている地域は、世界的に見てもまれ」と評価。「文化的、自然的な価値を持っており、今後の議論で登録種類など方向性を決めたい」とした。
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■そうですか〜、世界遺産ですか…。丁寧に読むと、嘉田さんの真意は、世界遺産そのものよりも、「琵琶湖の価値を発信する機会にしていきたい」という部分にあるような気がします。琵琶湖がもっている「価値」を、県民で再評価し共有できるような取り組み(新たな県民運動)を展開していきたいということなのでしょうか。ただし、別に新聞記事を読むと(
2008年1月4日「京都新聞」)、「しかし、琵琶湖岸はコンクリート護岸や高層マンションが建つなど、人の活動で自然に大きく手が入っている。環境省は『一般論でいえば、世界唯一で、保存も良好でないと難しい』と話す。『流域に多くの人たちが住んでいる現状で、開発や自由な土地利用に対する規制をかけられるのか』(県幹部)との指摘も出ており、嘉田知事の年初の決意も、はや難航気味だ 」とも書かれています。さてさて、嘉田さんの「琵琶湖を世界遺産に」という意向表明、今後どのように展開していくのか注目ですね。
■ところで、このブログのタイトルは、Blog版「環境社会学/地域社会論 琵琶湖畔発」なんですが、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、いろんな事情があって((^^;;;)「環境/まち・滋賀」関連のエントリー、これまで少なかったわけです。が、今後は、もう少しアップできるように努力していきたいと思います。最後になりますが、トップの写真を提供してくれたTくん、嘉田知事とといいますか、研究者としての嘉田さんの大ファンです。卒論を執筆するにあたっても、嘉田さんの著作からいろいろ勉強してきました。いつか嘉田さんに、卒論を読んでもらえたらいいね、Tくん!!
○「
滋賀知事選に嘉田さんが立候補(その1)」そういえば、選挙運動中の嘉田さんからはコメントをもらっていました。

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