言語や音楽(主にロシアのピアノ音楽)、大学での仕事などに関する雑文、読書日記などのBLOGです。
なお、当BLOGとは別に「高橋健一郎研究室HP」も開設しています。右下のリンク集からどうぞ。
2010/2/8
2月4日から6日まで、大学入試の地方会場の試験監督として北見に出張へ。
ちょうど強い寒波が北海道を襲っていた時期で、札幌も11年ぶりのマイナス12度以下を記録したりしていたが、北見は札幌よりもさらに寒く、最低気温は連日マイナス20度以下。夜などしばらく歩いていると、冬靴を履いているにもかかわらず、足の指先だけでなく、足首まで感覚が無くなってくる。
2日目の夜は、北見出身のピアニストの方に教えていただいた焼肉の「板門店」へ、同僚の方たちと行ってみた。
ここの名物は「目丼」(めどん)。

普通は「ご飯に目玉焼きがのっかっている」と説明され、それではあまりおいしそうに聞こえないが、実際には卵がふんわりとしていて、ソース(?)の味もついていて、なかなか美味。これで380円。
それと共に面白いのはお店の雰囲気。店自体は古く、けっして小奇麗な感じではないが、なぜか店内にはジャズが流れ、ご主人はクラシック音楽にもかなりお詳しい。リヒテルなどのほか、ロシアのピアニストのマリヤ・ユージナなどにも話がおよび、驚いた。

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2010/2/2
日曜日(1月31日)、某所でプッチーニのオペラ「ボエーム」の中の有名なアリア「私の名はミミ」の伴奏をする機会をいただいた。
テンポの揺れが激しい曲で、合わせがなかなか難しいにも関わらず、事前の合わせは1度きりだったので、イメージをつかむために事前にいろいろな人の歌を Youtube で聴いておいた。有名なアリアなので、Youtube ではカラス、テバルディをはじめとして、スコット、ネトレプコ、フレーニその他世界的な歌手たちの演奏が本当にたくさん聴ける。
その中で、一番気に入ったのはコトルバスの演奏。
自分にとっては、他の名手たちの歌い方がいろいろな面でやや過剰に感じるのに対して(特にテバルディやネトレプコ)、コトルバスのは抑制が効いて柔らかく、しかも情感がこもっていてとても美しい。
アリアのオケ伴奏をピアノで弾くのはなかなか難しいが、他の楽器の音色をピアノで出すためにいろいろとタッチの工夫をするようになるし、「呼吸」の大切さも改めて意識させられて、大変勉強にもなって楽しい機会だった。

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2010/1/30
昨年、札幌を本拠地に設立された「日本アレンスキー協会」の第1回例会が来たる3月7日(日)に札幌で開かれることになり、私もそこでお話させていただきます。
今回のテーマは「ロシア音楽史におけるアレンスキー」。
グリンカ前後から「五人組」、チャイコフスキー、ベリャーエフ・サークル、ラフマニノフ、スクリャービンくらいまであたりのロシア音楽をざっと概観し、その中のアレンスキーの位置を考えてみます。
アレンスキーの師であった、チャイコフスキーとリムスキー=コルサコフの相互の関係や、アレンスキーを称賛していた文豪トルストイとアレンスキーの関係、タネーエフやグラズノフといったあたりにも話が及ぶことと思います。
具体的な内容、時間、場所などについては日本アレンスキー協会のブログにアップされていますので、そちらをご覧ください。
今回の面白い企画としては、「メロデクラメーション」という20世紀初頭にロシアで流行した、ピアノ曲に詩の朗読をかぶせる、というジャンルの作品の実演があります。このジャンルの代表的作曲家がほかならぬアレンスキーで、3曲ほど残っているのですが、その中の1曲をピアニストの川染先生のピアノと私のロシア詩の朗読とで演奏します。どんな感じになるでしょう?
全体的に大変マニアックな内容ではありますが、演奏も織り交ぜ、肩の凝らない会にしたいと思いますので、お気軽においでください。どれだけの方においでいただけるか分かりませんが、100名ほどの小さめの会場ですので、お早めにお申し込みいただいたほうがいいかもしれません(お問い合わせ、お申込みは私まで)。

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2010/1/12
札幌大学のロシア語学科では、このところ年に1回ロシアの学生(日本語学習者)とうちの学生とのクリスマスカード交換を行っていて、最近向こうから届いたクリスマスカードを学内で展示している(こちらにその記事)。
両方の学生とも日本語とロシア語の両方で文章を書くのだが、外国語の方は当然まだ間違いが多く、見ていると微笑ましくなる。
3年前には、ロシア人学生が書いた日本語の中に「へ高橋・・・よりサーシャ」というようなインパクトのある表現があったが(「へ」と「より」が前置詞のように名詞の前に置かれている)、今回衝撃的だったのは「お正月は!!」という挨拶言葉。
「こんにちは」とか「こんばんは」とかと同様に「お正月は」という表現もあるのだと思ったのだろう。日本語ネイティヴには思いもよらない表現で、微笑ましいのと同時に少し感心してしまった。

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2009/12/20
昨日(19日)は札幌大学ロシア語学科の最も大きなイベントの一つ「ヨールカ祭」(ロシアのクリスマスのお祭り)。今年で26回目を迎え、学生以外にも教職員の方や卒業生、ご近所の方、札幌在住のロシア人の方などいろいろと集まる名物行事である。
元来面倒くさがり屋な私は、5年ほど前にゼミ生がヨールカ祭で歌を歌いたいと言い出した時に一緒にロシア語で練習して歌ったことが一度ある以外は、出し物に参加したことがなかったのだが、今年はまた3年生のゼミ生が夏ごろに突然、ディズニー映画の『美女と野獣』のロシア語版をもとにした劇をやりたい、と言いだしたため、後期のゼミの内容を変更して、その準備にあて、『美女と野獣』をやることに。
高校時代演劇部で活躍した学生が台本を担当し、ダンスが得意な学生が振付をし、パソコンでの音声編集が得意な学生がバックの音楽を編集し、ほかにも日程表や台本の作成、台本のロシア語訳とその訳のネイティヴチェックの依頼、舞台装置や衣装の準備、歌の練習その他ほとんどすべて学生たちが自分たちだけで行った。
こういうことは、教員の方からあれこれと指示を出されるより、学生が自分たちですべて考え、作り上げていくからこそ楽しいのだろう。だから、ロシア語に関する説明や作業場所の提供など、必要なことは私の方でやったものの、(1曲だけピアノ伴奏もしたが)それ以外の面ではあえて口出しをしないで、基本的にすべてを学生に任せ、見守ることにした。
通して観たのは本番が初めてだったのだが、なかなかの出来で、小気味の良い振付とセリフ回し、美しい歌が全体的にテンポよく流れ、えてして「子どもの学芸会」風になりがちな学生の外国語劇が、かなり本格的なものとなっていた。二日前に偶然仕事で札大にいらっしゃった声楽家の方にお願いして、歌唱指導をしていただいたのも良かったか。長年ヨールカ祭を見続けていらっしゃる他学部の先生も、今までで一番良かった、と褒めてくださり、学生たちも満足していたよう。
学生というのは、日頃、勉強面でこちらの思った通りにはなかなか反応してくれないことが多いが、こういうことをやらせると、今まで見たことのないほどの熱意と積極性を見せてくれる。準備から本番に至る過程で久々に学生に感心させられ、自分にとっても貴重な経験だった。
(そのうち写真が手に入ったら掲載します)

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2009/11/16
現在浜松で行われている「浜松国際ピアノコンクール」では、1次予選からすべての演奏の動画がインターネット配信されている。
1次予選のときから、机に向かっている間、仕事をしながら少しずつ聴いていたのだが、何せ量が多いので(1次予選は1人20分で80人以上)、1次予選は半分くらいで切り上げ、2次予選はほぼ全部流してみた。
仕事をしながらなのでほとんど注意して聞いていないし、途中で電話がかかってきたり、トイレに立ったりしても、そのまま流しっぱなしにしていたので、そもそも聴いていない時間も多いけれど、その中でつい「おっ!」と聴き入ってしまう演奏がいくつかあった。
PCでは音が立体的に聞こえてこないし、微妙なニュアンスもおそらくかなりそぎ落とされて伝わってくるはずで、生で聴くのとはおそらくかなり違うとは思うけれど、その中で1次予選で「はっ!」としたのは16番のフランソワ・デュモン。他の人の多くがすごい音圧で力が余分に入った演奏になりがちなのに対し、この人のものすごく繊細でコントロールされた音に驚かされた。
2次予選はどれもとても高度で、すでに一流のコンサートピアニストとしてどこにでも出て行けそうな人ばかりなのだけれど、その中で特に驚いたのは、10番のチョ・ソンジンのショパンのエチュードOp.10-1。この曲はみなとても達者に弾きつつも、ごまかしがきかず、やっぱりどこかで最低何か所かは音がひっかかったりする曲なのに、この人の演奏はほぼ完璧なデキで、歌心すらみせる余裕もあり、まさに熟練の極み。思わず仕事の手を止めて、3回も聴き直してしまった。続くリストは多少ミスもあったし、その後のシューマンはやや気持ちが前に出すぎのような感じもしたけれど、人を惹きつける力はとても大きい。しかも、まだ15歳というから末恐ろしい。ぜひ生で聴いてみたいと思った。
もちろん全部の人のを聴いたわけではないので、もっと良い人もたくさんいるのかもしれないが、特に気になった2人が共に3次予選に進めたようで、楽しみである。
明日(17日)からいよいよ3次予選。どんな名演が聴けるだろう?

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2009/11/15
世界的に評価が高い編集・校訂で、シマノフスキの楽譜の「決定版」と言われながら、しばらく「品切れ」が続いて、なかなか入手できなかった春秋社の「シマノフスキ全集」全4巻(編集・校訂:森安芳樹、田村進)がついに10月に再版された。
昨年シマノフスキの初期の「変奏曲」(Op. 3)を弾こうとした時には、春秋社版がなく、仕方なくポーランドのナショナルエディションを購入したのだが、途中で札幌の大谷音大の図書館に春秋社版が所蔵されているのを知って、閲覧しに行ったところ、校訂報告が非常にしっかりしていて、大変参考になった。
ヤマハの札幌店の方が私が春秋社版を欲しがっているのを覚えていて下さり、保管しておいてくださったので、それを取りにさっそく先週ヤマハへ。
アマゾンでも残り少ないようなので、ご購入希望の方はお早めに。

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2009/11/1
今年は毎日の研究時間を確保するために演奏会に行くのをかなり制限していてほとんど行っていないのだが、10月29日に札幌(キタラ小ホール)で行われたケマル・ゲキチのピアノリサイタルは外せないと思い、聴きに行ってきた。(現在、突然降ってわいた大量の仕事にかかりっきりのため)以下ごくごく簡単な感想を。。。
前半はショパンの舟歌とバラード4曲、後半はリストのコンソレーション3曲とソナタロ短調、というプログラム。
噂には聞いていたが、実に個性的な演奏。1985年のショパンコンクールで「正統なショパン」ではないと評価した審査員が多く、評価が割れてファイナルに進めなかったというのも頷ける。弱音のコントロールが尋常ではなく、内声部の強調の仕方もおもしろい。曲によっては音がややきつかったり、舟歌では流れが犠牲にされているように感じて、個人的には楽しめない部分もあったのだが、それでも高度に安定した技巧と聴く者を圧倒するメッセージ性。只者ではないことはよくわかった。
後半のリストはただただ「凄い」の一言。ソナタの一部で若干指がもつれたような場面があり、一瞬集中力が途切れたような表情を浮かべたのが印象的だったが、全体的にはダイナミズムと表現の幅がおそろしいほど広く、ライヴで聴けたことの喜びを感じさせてくれる名演。最近ピアノソロを聞いて圧倒されるという経験がほとんどなかったのだが、6曲のアンコールも含めて、久しぶりに文字通り「圧倒」された演奏会だった。

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