畏くも・・・  邦画

私の田舎の中学時代には、まだ戦争の傷跡らしきものがかすかに残っていた。
教師の中に、シベリア帰りと元将校だったと噂された人物がいた。
とりわけ、元将校だったと言われたS英語教師は子供の目にも異常に映った。
ともかく、手が早いと言うか、気に入らないとすぐビンタが飛んできた。女の子にも暴力を振るったときには心から憎んだものである。

もう、亡くなっているが晩年は決して幸福ではなかったようだ。「罰が当たった」とまでは言わないが軍隊の亡霊が乗り移ったのだろう。
S教諭の名誉のために言うと、彼の英語の授業は基礎をしっかり教えてくれたこと、それには大いに感謝している。
さらに、彼はチャップリンのファンだったらしく「モダンタイムス」「街の灯」等々盛んに話をしてくれた。
後年、この映画を映画館で見たときには、ふとこの暴力教師の一面を見た気がした。

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前置きが長くなった。
映画「異母兄弟」1957年、家城巳代治監督作品
軍国一家の長を三國連太郎、お手伝いさんを田中絹代が演じる。
ファーストシーン、馬から下りた三國が手伝いの男をいきなり、腰の入ったビンダが襲う。
実に嫌な予感がする場面であるが、後に続く画面は、それこそ軍国主義の、軍人の横暴さを次々に映像化していく。

お手伝いの田中を手篭めにし孕ませ、仕方なく後妻とするものの、異母兄弟の相克がなんともいえない軋轢を生む。
これだけ、徹底的に軍人を憎んだ映画は私は初めてである。
「人間条件」も徹底的に軍部の横暴さを暴きはしたが、家庭内の出来事、とりわけ実質「妾」という形のいびりいや暴力は強烈そのものである。

この映画のすごいところは、ラスト近く田中が「妾」から女性に自立を暗示させる所で終わっていること。背筋がすっと伸び、顔をぐっと持ち上げる。
女性映画として見る事もできるところなのである。

私たちは、男の論理で戦争を始めるけれども、後始末は女性がしているのだと。

田中絹代がすばらしい。
あの大傑作「サンダカン八番娼館・望郷」に匹敵する。


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