今から思えば、随分とずうずうしいOLだったかもしれません。
まだ新入社員のころ、
私は丸の内の北口の会社に通っておりました。
その当時、八重洲北口に
すばらしく巧みで痛みの少ない歯医者がありました。
同じ会社のほとんどの女子社員が
お互いに時間を遣り繰りしながら
1時間ほどプライベートの用事ですが
勤務中に歯医者に通いました。
私は小さい頃から歯医者が嫌いで
特に幼稚園の頃は「鬼塚さん」と言うその名前だけで
まるで歯医者の中に鬼がいるかのような恐怖感を持っていました。
というわけで、虫歯の数は、放置していたせいで
ひとの2倍か3倍くらいあったかもしれません。
長期にわたり、八重洲に通い
1年ほどでカンペキに治りました。
ブリッジも2箇所あります。
その当時のボーナスはすべて治療費になりました。
親戚に歯医者がいるので
そのおじさんに口を開けて看て貰いました。
「おう!ひと財産入っとるなあ・・」と感心していました。
八重洲の歯医者さんの名前も忘れたのですが
ひとつだけ、刷り込まれたように覚えていることがあります。
その歯医者さんは
「僕が治したところは55歳まで保証します」とおっしゃったのです。
その時は22歳くらいで
30年後の自分なんて想像も出来ませんでした。
ところがあと何ヶ月かで55歳になるのです。
なるほど、その歯医者さんが治療したところは
その後やり直したりせずに済んでいます。
しかし、最近疲れると、歯が浮いたような感じがします。
55歳になるといろいろガタが来るのでしょうか?
先生は何故55歳と言ったのでしょうか?
亡くなった父が、鏡の前で歯茎に針を刺したりしていたのは
たぶん55歳くらいからでしょう。
その後姿が、変に今、思い出されます。

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