「わっ!近(ちか)!近すぎる」

「レンズからはみ出してもうてるやん」

「そんな目で見てもなんにも持ってないんやから」
「きょうは港から上がってくるの早いやん」

「あれ?きれいな足環。人間につけられたのに人間に寄って来るの?」
「また掴まんで」
「学習能力ゼロやで」

「前の子を跳び越してこっちに来るつもりなん?」

「うんうんわかった。Yの5番さん。明日も来たらなんかあげよ」
Yの5、調べたらどこから飛んできたかわかるんやろな。
「伊勢物語」でみやこどり(都鳥)と呼ばれているのがこのユリカモメではないかと言われています。そのころの京都にはユリカモメがおらず、在原業平が珍しい鳥が居るので「あの鳥はなんというの?」と聞いたところ、たまたまその指の先に本来のミヤコドリも居たので、渡し守は『ミヤコドリです』と答え、あの有名な「名にしあればいざ言問わむみやこどりわが思ふ人はありやなしやと」という歌ができたとか。隅田川の業平橋辺りでの出来事。電話もネットもなかった時代。手紙もいつ着くかわからいし、「あの人はどうしているんだろう」と鳥に聞く業平さん。結構遊び人だったらしいけど、ロマンチストでもあったのね。

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