2009/7/30
つなごうとして
つないでもらえない
掌のむなしさ
指さきから体温が
うしなわれていく
耐えることに
馴れたもの
まずしいもののいやらしさ
みずから与えないものが
求めるということ
人形(ひとがた)の皮袋被った
人間皮袋
その皮袋
ぬぎませんか
ぬげませんか
それは
糞袋です
それでも
ぬいだら
人間紛失しますか

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2009/7/22
阿呆船は何で漕ぐ
お玉杓子の櫂で漕ぐ
たっぷん波間にゆりゆられ
浮沈のほどは知れたもの
ここはすでにナラゴニア

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2009/7/22
黒い森の創口から滴る血は
川となり
町を貫流し
人々の垂れ流す汚穢で一層汚され
海にそそぐ
かつて吾らが
原始母神(おおはは)とともにあったとき
海は青く水族に溢れ
森は樹々と花々に溢れ
空は紺碧に耀いていた
いま吾らを囲繞する自然は
本来の力を根こぎにされ
森は死に瀕し
水は命の源であることを
やめようとしている
原始パラダイスを追われ
阿呆船を
漕ぎだしてしまった吾ら
デラシネの行く先は
ナラゴニア

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2009/7/22
農民戦争と宗教改革
悪疫と死の舞踏が氾濫する
中世の黄昏
黒い森の創口に花ひらいた魂の名
グリューネヴァルト
*グリューネヴァルト:緑の森

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2009/7/1
〈アウシュヴィッツ〉と〈ヒロシマ〉
というアポリア
二十世紀の負の遺産を
どう受け継ぐか
答えはまだない

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