2010/12/29
お父さまが
おかくれになったのは
おまえを歩ませるため
おまえの蹠が踏むところに
わたしはいます
母が
一歩を
いざなうので
わたしは母を
踏んでいく
身につけた
衣裳をぬぐ
ほんとうの自分
身ひとつに
なる
わたしをつくっている
すべての細胞が
なすべきことを
しっていた
しらなかったのは わたし
地の胎とわたしをつないで
めぐる血
母の胎/地の胎の
血のなかの炎える火と水が
わたしの体をめぐっている

1
2010/12/29
ふりかえれば
日々せわしなくあくせく
初々しさをなくした
わたくしがいて
初めにかえれ という

0
2010/12/26
一木一草にも
神やどる 仏やどるという
が、いつのまにか
いすわっている天皇
どきなさい
神ならぬ上一人の号となるべき
元号という装置で
わたしの/あなたの 時を
われらの 時代を
はからせてはならぬ

0
2010/12/26
核兵器を
もった
ときから
ヒトは
絶滅危惧種
黒い霧に 黒い雲
黒い土に 黒い森
ニンゲンの
棲む
黒い市に 黒い雨

1
2010/12/17
母へかえる
父へかえる
いのちの
根っこへ
かえる旅

2
2010/12/17
彼の全身から
いのちがわきだし
呼吸
(いき)が声となってあふれ
生
(いのち)の歌を
うたいだした
彼のまわりの気がふるえた
空の火と水が
生
(いのち)の息吹の
響きに応えて
うたいだした
共振するもの
生あるものみなが振動しはじめた
声あるものは声とことばで
声なきものはその固有の原言語で
うたいだした
マンデルブロ集合イメージのように
無限に変化しながら
どこまでもつながって
ひとつのうたをうたいつづけている
いのち

0
2010/12/15
全く未熟でありながら
発生史の諸階梯を経て
完成された
新生の生きものの
初々しさ
光と闇は分かたれてなかった
畏れも慄きもなかった
まわりのすべてが
戯れのように
ただ 在った

0
2010/12/14
お母さま
お父さまは
いつおかえりになるの?
お父さまが ではなくって
おまえが かえるのですよ

1
2010/12/12
このさびしさは
往きて久しい
神乞う
神招ぎの
想いゆえか
恋などした覚えはない
と思っていたが
そうとはしらずに
神恋うていた
のかもしれぬ
逝きしものをも
出でまさしめる
恋う
という不思議な力
吾にはついに無縁の
決して
成就せぬことをも
冀うことはできる
これも〈恩寵〉と
思い定めることにする

1
2010/12/12
緩徐に
失われていくもの
手放し 手放して
今
あるものはしらぬ

1
2010/12/12
吾は
鳥舟の送り人
片脚つねに
雲垣に
置いている
水辺にたたずめば
耳にひた充ちてくる
妣の国 根の国 常夜の国の
漣の
ささめき

0
2010/12/9
〈零〉に
なれない―ならば
一
(はじめ)にもどろう
いまより彼を
一歳と名のらしむ

0
2010/12/9
非人浄土あるごとく
人外浄土もあるだろう
行方なききそ
此の世のほかの
水脈
(みお)わたる鳥
たおやかに撓う
曲線のなかに
かくされた玉
弥勒の眦の古代微笑
(みしょう)は
未来微笑

0
2010/12/9
抱き/抱かれれば
解ける
わたくし/あなた
という
かそけきもの
わたくしなんて
はじめから
なかったんだ
「不生」
と つぶやいてみる
すると必ず
そういうおまえは誰 と
問うものがいて
ここからはじまる
無限ループ

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