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現在、支援教育専門士の資格取得のために、星槎大学で勉強しています。
明日8/17〜18は、取得最後の科目の「言語発達学」が立川でスクリーング(授業)があります。
立川駅から会場まで徒歩20分程度あるため、猛暑の中とても辛いです。
水分補給しながら行く予定です。
●下記科目を2006年に星槎大学で単位を取得しましたが、
今回の支援教育専門士の必須科目の単位にできないか、大学に相談・確認しましたが・・
2009年以前の取得単位は無効になるとのことです。
とても残念です。
星槎大学のパンフレットでは取得に制限年数なし(生涯学習)と書かれている
のに・・・なぜ?
教科書も全く同じで担当講師も同じ先生なんですが・・・WISC‐Wの実習に
変わっていれば、まだいいのですが・・・
●星槎大学で支援教育専門士の資格を取得される方は、2年程度以内に一気に取られた方がよいです。
約5年に一度(2008年、2013年)、単位取得科目が大幅に変わりこれまで取得した科目が無駄?になるかもしれません。
約4年以上経過すると同様な内容の科目も自動転用取得できません。
ご注意を!!
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★星槎大学 支援教育専門士コース
科目名:「学習障害・学習困難への教育対応」
日程:2006年8月5日〜8日:4日間 10:00〜17:00
場所:星さ大学 横浜会場(星さ学園青葉校)
講師:西永堅先生、山口薫学長
・受講者数:約40名で、うち男性4名。
北海道、長野県から来られた方も数多く、沖縄からの受講者もいました。
・受講者の職業:教育長、小学校の教師、通級学級の先生、介助の先生、保育士、障害のある子供をもつ保護者、養護教員OG、養護教員志望の学生など
● 授業メモ(1日目):猛暑の中授業が行われました。
・受講生の自己紹介:一人30秒程度で約40分
◎文部省に設置された「学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議」の最終報告(H11.7.2)について
→ 現代の学級崩壊、学校教育の荒廃との強い関わりがある。
→ 学習障害・学習困難の子供への適切な対応は、教育荒廃から救い出し、学校教育を抜本的に改革への道につながる。
・中間報告(H7.3.27)では「学習障害等に対する指導について」だったが、最終報告では、「学習障害に対する指導について」と、後退した考え方になっている。
1. LD・学習困難への教育対応によって日本の学校教育はどう変わるか。
@ 学校教育の荒廃
・ 不登校:S63 42,524名 → H9 87,629名 増加(小中学校 生徒数)
・ 不登校は学校を楽しくして、行きたくてたまらない学校にすれば解決するはず。
・ 一方で、教員の給料を下げるという話あり。
・ 「七五三教育」:小学校で3割、中学校で5割、高校で7割が学習についていけない。
・ 学級崩壊の要因:
「学校経営に柔軟性を書いている」が一番多い。その次に「授業の内容と方法に不満を持つ子供がいる。」が多い。3番目に「いじめなどへの対応が遅れた」である。
A わが国の特殊教育とLD・学習困難
・ 特殊教育の現状
・視覚、聴覚障害、知的障害、自閉症、LD・ADHDの子供と 対象学級(通級、特殊学級など)
・知能の優れた子供と遅れた子供は、英語では、Exceptional(例外的な)という意味。ある程度の「飛び級」は必要かも。
・ 特別支援教育の定義
通級による指導、通常学級における支援教育 を新たに追加
・ 障害のある子供の生徒数 H15 171,540名 1.6%
・ 欧米との比較
◎特殊教育就学率
米国:10.6%(1995)、英国20.0%(1993)、カナダ15.5%(1982)、
日本1.17%(1998)→1.65%(H5)
米国では、10.6%のうち4.7%が通常学級での特殊教育が実施(日本は現在0%)。
・ 障害児教育から特別なニーズ教育へ
*欧米では「特別なニーズ教育(Special needs education)SNE」としてすでに一般的に使用され始めているが、日本では、「ニーズ」という外来語が適切でないという理由で「特別支援教育」と名づけた。
・ 「障害児教育」は不適切な用語
→ 障害の有無にかかわらず、特別な教育的ニーズがあるから特殊教育が行われるという考え方。
2. 学習障害(LD)とは
@ 文部省協力者会議報告の「定義」策定までの経緯
・ 1963 米国心理学者 カーク氏が、知的障害と自閉症と異なる軽度発達障害に対する名称として提唱。1973に来日し講演。
・ 1966 「微細脳機能障害(MBD)の用語が使用されるが、「脳」という語に対する教育者や親の不安を考慮して カリフォルニア州では「教育的ハンディキャップ」を採択して定義した。
・ 1975 全米諮問委員会(PL94-142)で初めてLDが特殊教育の対象に追加された。
「話しことばや 書き言葉の理解や使用に関する基礎的心理的過程において、1つないしそれ以上の障害のある子供を意味し、これらの障害は、聞く、考える、話す、読む、書く、綴る、または計算する能力の不完全として現れる。(これ以降省略)」
・上記定義について激しく論争され、1981 LDに関する全米合同委員会(NJCLD)」が連邦政府の定義の欠陥を補う定義を提案。一部団体が反対、保留。
◎ 日本 文部省協力者会議の最終報告の「定義」:H11.7.2
「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」
・ 中間報告と異なる定義。
・ 現時点では、中枢神経系について明らかにされていないが、モデリングの実験など(サルにアイスクリームを与えると、脳のある部分が活性することが判明されている。)により、解明されるのもそう遠くはないと思われる。
・ ・サントリーはこれについて研究したが、薬品1つが50万以上の商品になり断念。
・ 昔、味の素が知的障害を改善するというデマ?もあった。
・ 現在の考え方:定義の意味だけにとどまらず、社会とのかかわりあいでLD、障害についての教育を考えなければならない。
・ 有名なLD(高機能自閉)のタレント:黒柳徹子、長島茂男、淀川長治
(私は、映画俳優のトム・クルーズや エジソン、アインシュタインしか知らなかったです)
A 定義をめぐる若干の問題
・ 著しい困難とはどの程度か?複数とはいくつまでか?
・ 知的発達の水準に比べて学力が低い(例IQ100の子供が1Q70の子供に比べて低くなる現象:学業不振など)子供が増えている。
・ 中枢神経系の機能障害は、推定原因ゆえ、米国での定義から除外されている。
・ 脳損傷の研究:ゴールドシュタイン(1942)→図形の再現
イメージできるもの(山など)は再現できるが、抽象的なものの再現ができない。
といった研究結果により、定義に入れてもよいという考え方もある。
・「基礎的心理的過程」ということばが 最終報告の定義からなくなっている(米国の定義にはある)。→これがなくなると心理検査(K-ABC、WISC−Vなど)の存在意義がなくなってしまうのではないか?
・ 「行動の自己調整、対人関係などにおける問題が学習障害に伴う形であらわれることもある。」といった行動の部分も中間報告の定義からなくなっている。
・ ADHDに対する指導法を体系化(余計な刺激を人工的に遮断する特別な学習環境を実現)→ クルックシャンク氏
3. LDの判断・実態把握基準
@ 校内委員会について
・ 保護者も平等に参加させるべき
・ インクルージョン教育がうまくいくか否かは、学校長が本気に取り組むかどうか(目覚める)が鍵である。
A 専門家チームについて
・専門性を超えて勉強することが重要。
B 専門家チーム内での医師の役割
・医者がLDと判断すべきではない。
4. LDなどに対する指導の形態と場
@ 通常の学級における指導の意義
A テイーム・テイーチング(複数担任制)による指導
B オープン教室の設置:障害の有無関係なしの教室 理想的なLD教育現場!
・ 神戸市立星和台小学校:分かった分かった教室、加配教員、僕も行きたいなあ
→生徒数の増加により現在はなくなっている。
C 通級による指導
D 中学におけるLDなどへの教育的対応と課題
E 専門家による巡回指導
5. 今後の課題
@ 個別指導計画の作成
A 学齢前、高校、大学でのLDなどへの教育的対応
・星さ国際高校の取り組みの紹介:小中高一貫教育 最初は通信制。
B 英国の「学習困難」とロシアの「心理発達遅滞」
・ロシアのモスクワ国立大のアフーチナ氏による「学習障害を持つ子供たちの実行機能とその未発達の図式化」が興味深い。
6. 特殊教育の改革の方向
・ 統合教育からインクルージョン教育へ
・ 統合教育は、子供を学校に合わせる。インクルージョン教育は学校を子供に合わせる。
・ 差別のない教育が切なる願い、地球環境問題もそれが原因ではないか。
(金子みすず 童謡詩人)作品の紹介 ・これこそインクルージョン教育の原点
わたしが両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥は私のように、
地べたをはやくは走れない。
わたしがからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴るすずはわたしのように
たくさんなうたは知らないよ。
すずと、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。
(金子みすず童謡集 「わたしと小鳥とすずと」JULA出版 1999)
7. 特別支援教育をどう進めるか
・ 特別支援コーデイネータを現役の教師でまかなうのは論外(経費の問題があっても)。→これでは、真の特別支援教育はできない。
8. その他
・ 山口学長は、ダウン症の話にもふれました。
・ ダウン症の子供も昔は、絶望視されていたが、最近では寿命も延び、また米国では指揮者で活躍している子供がいたり、大学へ進学した子供もいる。ダウン症の40%くらいは知的障害とは思えない成長をしている。との明るいお話をされました。
● 授業メモ(2〜3日目/8月6日・7日)
〜2日目〜
*私見は、私が感じたことも含みます。
1. 知能検査とは、知能を科学的・客観的に測定するために考案された心理学的測定用具(尺度)であり、結果は標準化の手続きを経て作成された基準に基づき数量的に表示される。
2. 標準化とは、心理検査に関して厳密な規格(つまり、教示のやり方、問題項目の提示法、解答法の指示、検査時間、検査実施法)を設定する手続きをいう。
3. 心理検査は両刃の剣であり、適切な教育支援ができる一方、使い方を誤ると、人を傷つけたりすることもあるため、慎重に扱うべきである。
4. 心理テストでは、信頼性と具体性が要求される。
5. 信頼性には、再検査法と内的整合性(個人的嗜好度で判断しない)がある。
6. 知能(intelligence)は、19世紀後半、英国の哲学者スペンサーが最初に用いた表現である。そして、知能を科学的に研究を始めたのは、英国のゴードンである。
7. 知能測定のための方法論を最初に確立したのは、フランスの心理学者ビネーであり、フランスが1881年に義務教育を始めたが普通教育についていけない子供たちを見分けるために使われた(悪用された?ビネー自身は悪い人でなく行政の問題)。
8. ビネーの知能尺度を発展させたのは米国の心理学者ターマンであり、知能指数(IQ)の概念を導入した。
9. ウエックスラーは、知能を「目的的に行動し、合理的に思考し、能率的に環境を処理する個人の総合的・全体的能力」と定義し、全検査IQを言語性IQと動作性IQとに分けた。
10. 米国のキャッテルは、知能を流動性知能(短期記憶など)と結晶性知能(長期的記憶など)に分けた。
11. K−ABC(kaufman Assessment Battery for Children)は、神経心理学、認知心理学の研究成果に基づいて開発された小児認知アセスメントバッテリーであり、心理検査といわない。
12. K−ABCは、継次処理尺度、同時処理尺度、認知処理尺度、習熟度尺度の4つの尺度から構成されている。継次処理は左脳系や言語性優位であり、同時処理は右脳系やグラフィカルである。
13. これらの心理検査による結果に基づいた成功事例はまだ少ない。子供の状況によってケース・バイ・ケースであるため、マニュアル化は困難であるが、今後、成功事例が集まっていくことを期待したい(私見)。
14. これら検査の結果(スコア)を指導者が見ても、適切な支援は難しい面がある。検査の過程で、@どこでつまずいたか、Aどのように間違えたか、Bどれだけ援助すればその課題ができたのか 等が知りたい。
→検査テスターが上記@〜Bについて詳細にコメントしてくれたらいいが・・・・・、指導者自信がテストできればベストである。
15. 漢字支援について
@ 自閉症児などは、マーク的な文字の理解が得意なので、意味を持たないひらがな よりもむしろ漢字のほうが覚えやすいようだ。
A LD、自閉症児は、書き順にこだわらず、単なるパーツとして覚えていけば書きやすいかもしれない(私見)。
B 画数の少ない漢字から学習しているが、意味のある漢字(イメージできる)から先に学習した方が有効であると思う。
C 外国人は カタカナの「リ」と ひらがなの「り」の区別ができない。
16. ITPA(言語学習能力診断検査)は最近あまり使われなくなった。
17. 知能指数(IQ):(精神年齢/生活年齢)*100
@昔、行政が予算の関係上、子供を弁別するための手段として使用。
そういう問題もあり、最近、田中・ビネー式検査は下火。
A 最近では、子供を適切に支援するための手段として使われる。個人内差を見るWISC、K-ABCがよく使われる。
18. 心理検査を理解するのには、統計学の理解が必要である。
・ 標準偏差 ・標準正規分布
偏差値 分布率 IQ
〜30 2.2% 〜70
30〜40 13.5% 70〜85
40〜50 34% 85〜100
50〜60 34% 100〜115
60〜70 13.5% 115〜130
70〜 2.2% 130〜
・ 日本では、IQ70以下の2.2%の子供に対し、1.5%だけ特別支援にお金をかけている。過去、予算の変動により?境界線が70→ 75 →70%と変動した。
19. 検査をするにあたり、非検査者の取り巻く様々な状況(検査目的、生育歴、家族構成、家族関係、友人関係、など)も収集しておく。もちろん非検査者との信頼関係が重要である。
20. 他の検査も実施するなどテスト・バッテリー(組み合わせ)を組む。
〜 山下清(放浪画家)のエピソード 山口学長のお話 〜
21. K−ABCのテスト実践方法についてビデオ学習(つくばK-ABC研究グループ?)
22. WISC−Vの検査器具の実物説明とその使い方
23. 両検査の記録用紙の見方、書き方
〜3日目〜
●K−ABC検査、WISC−V検査の実技。
1.K−ABC検査
・ 認知処理過程尺度、習得度尺度、総合尺度の作成
2.WISC−V検査の プロフィール作成
・下位検査評価点の作成
言語性検査(知識、類似、算数、単語、理解、数唱)と
動作性検査(完成、符号、配列、積木、組合、記号、迷路)の
折れ線グラフ作成。
・ IQ:言語性VIQ、動作性PIQ、全検査FIQ と
・ 郡指数:言語理解VC、知覚統合PO、注意記憶FD、処理速度PSの
折れ線グラフ作成。
〜4日目〜
☆K−ABC検査の結果の見方
・継時処理が同時処理より得意:聴覚指示、系統立てた説明による支援
段階的、部分から全体への指導
・同時処理が継時処理より得意:視覚的指示による支援
全体を踏まえた指導
★WISC−V検査の結果の見方
・言語性IQと動作性IQ に15ぐらいの差(一標準偏差):有意な差がある
と言える。
・郡指数
言語理解VC:言語能力、聴覚情報 →知識+類似+単語+理解
知覚統合PO:非言語能力、視覚情報処理 →完成+配列+積木+組合
注意記憶FD:聴覚的短期記憶、注意力 →算数+数唱・・・LD
処理速度PS:視覚的短期記憶、手先の器用さ →符号、記号
・自閉症タイプ:積木模様>組合せ、絵画完成>絵画配列、知識>理解
・ADHDタイプ:算数、数唱、符号が弱い
・算数障害 :算数、符号、記号探しが弱い
・読み書き障害(ひらがな):符号、記号探しが弱い
・読み書き障害(漢字):積木模様、符号、記号探し、組合が弱い
◎小テスト(LDの定義や、なぜ心理検査が必要か?などの記述式問題)
*台風が接近し、遠方から来られている方もおられるので、早く授業が終わった。
*なかなか中身の濃い授業であり、今後の実践教育・指導に生かしたいと思いま す。

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