ボヘミやんの遺産シリーズ(笑)
その9
岩手県花巻市小船渡の通称「イギリス海岸」
新生代第三紀
ジープで旅してた頃、網走の牧場での一年余りのバイトを終え
気仙沼に帰る途中に初めて花巻のイギリス海岸に立ち寄った。
今でこそ有名観光地化して整備されているが
当時は、ここがイギリス海岸であることを示す看板くらいしか無かった。
賢治が命名する所以となった青白い泥岩も比較的よく露出していて
私はその上に立ち、そしてこのバタグルミを見つけた。
表面が少し出ているだけで、泥岩が柔らかいとはいえ
手で掘り出すのは骨が折れそうだった。
そこでジープに積まれたまま決して使われることの無かった
チゼルハンマーの登場となった。
思えば「化石」の長いブランクの中で
ハンマーを使い採集して標本を持ち帰ったのは
これが最初で最後だったと言えるだろう。
図書館に勤めていた頃の3回の化石採集会でも
見つけた標本は全て開催側のスタッフや子供たちにあげた。
再び自らの標本を持ち帰るようになったのは
HPを立ち上げてからのことだった。
この後私はジープを手放し、旅は徒歩と鉄道等を利用するものとなる。
使途の無いハンマーは、ザックの中で文字通り重荷になりながらも
私の大切な旅の道連れになった。ジムニーを手に入れてからも然りである。
イギリス海岸は、その後も何度か訪れたが
この時のような完全なバタグルミを見出すことは出来なかった。
私はこの化石を宮沢賢治からの贈り物だと信じた。
それは何時の日か「化石」に戻っていくことを
漠然と感じていたということかも知れない・・