(文月廿参日)  H2B打ち上げ  サイエンス

国際宇宙ステーション(ISS)へ補給物資を運ぶ日本初の無人宇宙船「HTV」を載せた国産ロケット「H2B」の1号機が、11日午前2時1分46秒、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。宇宙航空研究開発機構は約15分後、HTVが目的の軌道に入ったことを確認、打ち上げは成功した。積み荷のHTVは直径4.4メートル、全長約10メートルの円筒形で、荷物を含めた総重量は約16.5トン。宇宙機構が約480億円をかけて開発した。今回は、ISSに滞在している宇宙飛行士の食料や衣類などの日用品、飛行士あての手紙や写真のほか、日本の実験棟「きぼう」で使われる実験機器などが積み込まれている。

この打ち上げ成功が国際社会のパワーポリティクの上でどれほどの意味を持つか。今回NASAは局長が来たし自前のテレビでの中継までした。これは米スペースシャトルが2011年に退役すると、HTVはISSへ大型装置を運搬できる唯一の手段になるからだ。打ち上げの成否は国際的に注目されていたのである。

つまり、スペースシャトルの引退後に、あの宇宙ステーションへモノを運ぶ唯一の手段を持つのが日本であるということだ。道路や鉄道のことを考えてみるといい。「そこに行ける唯一の経路」を持つところがどれほど威張っているか。国際社会の中で、そのオンリーワンの方法を持っているということは、宇宙における発言力が高まるということだ。それはひいては外交の場における力にもつながっていくのである。

このHTVを上げるために日本はH2ロケットを大改造した。これまではH2「A」だったが今回はH2「B」だ。そのBの、今回はデビュー戦だった。AとBの違いはただのマイナーチェンジではない。エンジンの数を変えるという画期的な設計変更をやっている。H2Bロケットは国産主力機「H2A」を土台に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が共同開発した。最大の特徴は、第1段の主エンジンを2基に増やしたこと。これによりパワーを約4割増強し、普通の人工衛星の数倍の重さがあるHTVの打ち上げを可能にした。強力なエンジンを新たに開発するのではなく、すでに実用化したエンジンを2基搭載することでコストを抑え、設計から4年の短期間で完成にこぎつけた。エンジンはただ数を増やせばその数だけパワーが倍々になっていくというものではない。お互いの制御がいちばん難しい。

ご記憶にあると思うが、平成11年から日本のロケットは失敗を重ねてきた。思えば、あのころが日本の劣化の底ではなかったか。それ以降も辛い思いはしてきたが「なんとかしなくては」という気持ちが日本人の中に生まれてきて、今回の政権交代にもつながったように思う。H2ロケットも失敗から立ち上がって、そのあとは成功を重ねてきた。やはり現場にも雪辱の思いはあったようだ。

3代目のH2Bは、この2つの事故の防止策を取り入れており、国産大型機の集大成といえる。開発陣にとっては10年越しの雪辱戦だったのだ。そして今日見事に成功した。その感情を押し殺したような宇宙航空研究開発機構と三菱重工業の淡々としたプレスリリースがこれだ。

H-IIBロケット試験機による宇宙ステーション補給機(HTV)技術実証機の打上げ結果について

そして両者は発表の最後をこう結ぶ。
<今回のH-IIBロケット打上げ実施にご協力頂きました関係各方面に深甚の謝意を表します。なお、ロケット打上げ時の天候は曇り、西の風(1.3m/s)、気温24.5℃でした。>

<なお>以下を付け加える時の、担当者の心に満ちた誇りが覗えるのではないか。
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