(睦月壱拾弐日) あやし〜怪〜  

宮部みゆき著 角川書店

平成12年7月の初版時に購入したはずだが、積読リストの一番下にあったようでなんと4年半ぶりに読破。先日の上京時の新幹線の中で読み終えたのは、宮部得意の時代物短編であったためかも知れない。すでにどこかの出版社から文庫も出ていたような気もしたが、どうだっただろうか。

宮部というと直木賞を受賞した「理由」や出世作「火車」など社会性のあるサスペンスが注目されるが、私はそういった作品も好きであるが、もう一面の時代物に宮部の真髄があるようにも思える。元々下町生まれの宮部にとって、時代物の舞台が江戸時代の深川を中心としたのは当然の帰結だったのだろう。時代劇ホラー短編小説とあって、怪しき異形のもの、怨念、復讐、鬼、亡霊、妖怪などなど、不気味で怪しい物語ばかりを9編収録している。

しかし、異形のものも幽霊や妖怪たちも怖いことには違いないのだろうが、一番怖いのは人間の心の闇だということを痛切に感じる。そんな救いがたい人間たちの深い心の闇の中で、清らかな心根をもつ登場人物をさりげなく宮部が演出しているのが何ともいえない。鬼になりきれない人間の心をもった物寂しげな鬼など、その好例かもしれない。短編で疲れなく読みやすかったが、それで物足りないというものでもない。
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