(卯月壱拾参日) 通貨燃ゆ  

谷口智彦著 日本経済新聞社
〜円・元・ユーロの同時代史〜

久しぶりに考えさせられた経済本。とかく経済本は一年も経つと古本屋で値段もつかなくなるが、この本の寿命は長そうに見える。英ポンドから米ドルへの覇権交代にまつわる20世紀の政治ドラマを回顧する箇所は新鮮であり、その他にも眼から鱗の話が満載で、この手の本の割には結構早く読み終えた次第だ。

1971年、前年に大阪万博を終え、高度経済成長の頂点を極めていた日本にとって、8月16日(米国時間では15日)のニクソン大統領の金ドル交換停止の発表は寝耳に水だった。当時私は中学3年生。夏休みの宿題で新聞のスクラップをしていたが、一面の見出しの大きさにびっくりしたが、コメントとして「さっぱりわからん」と書いたら、担当先生から「弱音をはくな」とのコメントが返されてたのを今でもはっきり覚えている。このコメントには少々腹が立って先生に説明を受けたが、納得のいくものではなかった。そのニクソンショックはアメリカの対日戦勝記念日である8月14日ではなく、15日であったことはこの発表が日本をターゲットにしたものであったが、日本では同時に発表された輸入課徴金問題に焦点があてられ、金ドル交換停止の本質を見失ってしまった。

また中国に関しても支配している共産党を「世界一の人事部」と称して、その正体を看破している箇所は引き込まれていく。注目の中国元切り上げ問題に関しても最後の切り札として温存し、そのタイミングを狙うのは通貨が経済問題というより政治問題というこの本の主旨を端的に表したものである。いろいろ歴史を勉強させてくれた本である。一読をお勧めします。
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