(水無月参拾日) ワールド  

旧聞になるが、究極のM&A対策としてワールドが株式非公開に踏み切った。

ワールドを創業し、高収益を保ちながら成長し、上場までもっていった畑崎氏は1997年に社長を退任した。今回非公開を決めた現社長寺井氏にトップの座を譲る際は、畑崎氏は取締役にも残らず、あっさりと退陣し会社にも姿をあらわさなかった。(その後はVBに専念しているらしい?今回のTOBでも巨額のキャッシュを手にすることになる。)

寺井社長はそれまで中小の小売店にワールドの服を卸売りしていたビジネスモデルを大きく変え、この卸売り部門を縮小して、自社販売小売網を百貨店中心に増やし、製造小売業すなわちSPAに軸を移していった。昔からの従業員やワールドの親密小売先は悲鳴をあげ、中には畑崎氏に窮状を訴えるものもあったらしい。しかし、寺井社長はSPAを更に進め、多くのアパレルメーカーが往年の力を失っていく中で、唯一2000年代になっても最高益を更新する企業に成長させていった。この成功には前任者が残らずいなくなったという画期的な人事があったことは云うまでも無いだろう。

寺井社長は決算期ごとに株主からやいのやいの云われるのが嫌になったのだろう。短期的な株価変動に関心の高い株主が多くなり、そんな株主の相手なんかしちゃいられないというところだ。そもそも良い会社というものは、ちゃんと顧客を選んでいる。お客様は神様ですなどという言葉は本音ではないのだ。嫌な客がいなければ、上得意のお客さんをより満足させることができる。商売成功のコツは顧客の選別にあるといってもいいだろう。

実際、ワールドは自社製品の販売先を卸から直販に変え、客先を選択し直した。さらに従来年配の女性がターゲットだったのを、若い女性に乗り換えていった。このようにワールドは顧客コミュニケーションには大成功したわけだ。

だから、自社の株主も選別したかったのだろう。一般に良い会社は長期投資家が多い。でもワールドは資本市場の長期投資家づくりには失敗したようで、株主とのコミュニケーションは下手だったということだろう。天は二物を与えずということか。
0




AutoPage最新お知らせ