(長月壱拾弐日) 楊枝  

最近歯茎が気になり、食事の後に楊枝を使うことが多い。楊枝という道具と歯を磨く習慣は日本では奈良朝に成立している。その言葉が千数百年いきつづけていることは奇異といえなくもない。しかし、古代の中国にこの習慣はない。ルーツを探ると古代インドにたどり着く。原始仏教の修行者集団の日常規範のなかに入っていたらしい。中国を通り越して仏教とともに日本に普及した楊枝は、平安朝になると貴族や僧侶が大いに使い、庶民にも及んでいった。

さらに江戸時代になると楊枝は手製から商品になっていった。楊枝は一度使えば捨ててしまう。それを金で買うというのは、たかが楊枝とはいえ、江戸の都市生活者は田舎に比べると贅沢なものだったわけだ。楊枝削りなど小さい子供でもできるため、内職としては最下級ともいってもいい。ただ、愚直に楊枝削りに勤しむ幕臣もいたわけで、たかが楊枝といえども歴史の証人ともいえるのだ。
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