(神無月壱拾日) 半落ち  

横山秀夫著 講談社文庫

本田美奈子が血液の癌である白血病で亡くなった。享年38歳、あまりにも若い死である。白血病に対して、骨髄バンクが創設されて何年になるのだろうか。しかし、この骨髄バンクのドナーに年齢制限があるのをご存知だろうか。今は55歳になっているが、以前は50歳まで、つまり51歳の誕生日前日までだった。

上記の小説の真相はこの年齢制限にあった。妻を殺し、自首するまでに2日間の空白を歌舞伎町に行ったらしいという疑惑の真相を決してしゃべらず、服役した元警部。取調べの志木指導官の彼に対する心遣いが最終章に溢れるこの作品は、警察小説というよりは、アルツハイマーや白血病という病気との戦いに揺れる人間心理をえがいたものでもある。

犯行を自供しながらも、「半落ち」という状態で裁判に臨み、警察と検察の妥協を絡んで、服役しながらもドナーとしての責務を全うしようとする男に対して、志木が移植を受けた少年を対面させたことで、自分の一人息子を白血病で失った悲しみとアルツハイマーの妻を求められたとはいえ殺してしまった悲しみを埋めてやりたいという心遣い。小説だからこそかもしれないが、ベストセラーになった所以かもしれない。
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