(神無月廿壱日 小雪) 挫折  

先週新規上場を目指していた会社の担当者に電話を入れたところ、何か様子がおかしい。携帯に電話を入れるとしばらくして折り返しかかってきた。嫌な予感はあったが、まさか今度辞めることにしましたと聞かされたときは呆然自失。

そんなことがあって、詳細について説明したいというので、午後7時過ぎに梅田に向かった。大阪駅ビルのホテルのフロントで待ち合わせていたが、休日前ということでフロント前は混雑しており、なかなか見つからない。しびれを切らして彼の携帯にかけようとすると、目の前に現れた。幾分穏やかな顔に見えたのは、それまでの苦悩から開放されたせいなのかもしれない。

神戸の奥に住んでいる彼なので10時までがタイムリミットということで、ホテルのスカイラウンジで夜景を楽しむには不向きな端っこの席で話は始まった。ウエイターがビールや料理を運んでくるが、味を楽しむ余裕などない、「何があったんですか」という言葉が何度となく出てくる。会社を経営するということの難しさを改めて認識する。金融機関との関係も冷え切っていて、綱渡り状態が続いていたという。なかなか連絡が取れなくなってのは忙しいせいだと誤認していた自分の考えの浅はかさを悔やむばかりだ。

今は知人の会社で臨時のコンサルタントとして籍をお貸させてもらっているという。とりあえずプータローは免れているが、年は私よりふたつほど上だったはずである。転職して新興会社を伸ばして上場させるという彼の夢は挫折したが、その表情は妙に明るい。もう次のチャンスをさがしているということだろうか。そんな彼の前向きの姿勢に思わず自分を重ねて見せる。ここがシニアのバックボーンたる所以だ。もう一度花を咲かそうとお互いの健闘を冬の到来を告げる木枯らしが吹くプラットホームで握手を交わす。つい力が入ってしまった。
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