(弥生壱拾九日) あきんどー絹屋半兵衛  

新潮文庫 幸田真音著

入院生活で上巻と下巻の半分くらいを読んでいたが、帰りの新幹線のなかで読破する。もともとは「藍色のベンチャー」として単行本は出版されたが、今回は「あきんど」と改題されている。2003年当時はベンチャー花盛りということでこの題がついたのかもしれないし、最近のライブドア事件等をうけての反省ムードからか改題されたのかもしれない。

もともと著者は経済小説が専門で代表作は「日本国債」である。もう何年前になるか忘れたが、縁あって一度仲間でお会いさせていただいた。「日本国債」の発刊後だっただろうか。その後何作か出されておるが、イマイチ印象に残る作品はない。今回の作品はたまたま文庫本になったということで手にしたわけである。

彼女が滋賀県出身でその思い入れもあるのだろうし、近江商人という江戸時代の有力豪商を輩出してきた郷土の誇りを感じさせた。彦根藩の井伊直弼と伝説の磁器の創設者の絹屋半兵衛との交流をメインに激動の幕末の中で、消えていった湖東焼に日の光を当てた作品である。作者が経済というテーマをもっているだけに、時代物とはいえ内容は現代を想起させるストーリーで、ややくどいところもあるのが難点である。

しかし一本の小説を書くには相当量の参考文献が巻末に紹介されているが、小説を書くのは大変な作業であることを実感する。何本か書くうちに洗練されていくのだろうが、あまり経歴を気にしない作品にも挑戦してほしいものである。

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