(睦月壱拾七日 啓蟄) 医師の苦悩  

昨年奈良県の妊婦が17の救急病院に断られて、最後に受け入れたのが国立循環器病センターである。国内の心臓移植の半数を実施してきた心臓血管外科は、国内屈指のICU勤務医の技術レベルを誇っているが、この3月で専属医師7名中5名が、この3月末で一斉退職するらしい。相当に高いレベルの医師の補充はなかなか出来ないし、補充できたとしても、引き抜かれた救急病院も機能不全になる可能性が強い。5人の医師は、心身ともに疲れきったと説明しているらしい。

7人で24時間体制でICU20床と救急搬送を受け入れるのは、想像を絶する過酷の労働条件というほかない。現に数年前不規則な勤務で、看護師が過労死で命を失っているのである。しかも最近は奈良の妊婦死亡事件ではないが、医療行為の訴訟リスクをかかえているわけだから、現場の医師の緊張感は並みのものではないはずである。医療ミスは患者からすれば許されるものではない。しかし、過酷な労働条件の中で完璧な仕事を強いられるストレスは常人では理解しがたいものである。

そうした医師の医療行為も100%満足できる結果を得られる保証はないし、病院経営者の医師軽視の態度が、病院勤務よりも通院外科が主体の開業医を選択させるのである。理不尽な労働条件と高いリスクを漫然と受け入れる医師が少なくなるのも当たり前である。こうして日本の医療水準が徐々に落ちていくことに対して、行政は見て見ぬふりをするばかりである。
0




AutoPage最新お知らせ