(皐月廿日) 京都版シリコンバレー  経済

ITに詳しくない人でも聞いたことがあるだろう「はてな」という会社を。ブログサービスのあの会社である。社長は近藤淳也、32歳、京大出身で京都で立ち上げた「はてな」だが、事業拡大で東京進出を図った。しかし、そこは安住の地でなく、米シリコンバレーに進出したことは良く知られていた。ところが、一段落したと思ったら、京都に本社を戻したのである。開発チームも京都に移籍したのである。

突然市街地に現れた京都版シリコンバレーだが、業務プロセス改善ソフト開発会社の「クエステトラ」も同じビルに本社も構えているし、他にも有力ベンチャー企業が誘蛾灯に吸い寄せられているようだ。ひたすらイノベーションにこだわる京都ならではらしい。東京の満員電車ではなく、自転車通勤となれば、柔軟な発想が生まれやすいということか。

今日は雨上がりの京都で仕事をしているが、この町は実に懐の深い町だというのが良くわかる。かれらベンチャーが舞い戻ってくるのも、その居心地のよさなのだろう。

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(皐月壱拾九日) クラシック  音楽

先日娘の養護学校の先生に誘われて、伊丹でクラシックのコンサートに行ったのを機会に、車でもクラシックを聞くようになった。最近聞いているのは、「The legendary Berlin Concert」である。録音日時は1957年5月26日、今から51年前、というかほぼ私が生まれた頃であり、20世紀を代表するグールドとカラヤンの競演である。グールドは前年にバッハの「ゴルドベルク協奏曲」のレコード・デビューで世界を驚愕させたばかりで、この年、北米出身のピアニストとして世界大戦後初めて旧ソ連で演奏旅行した後、欧州に帰ってベルリンでカラヤンと組んでベートーベンを弾いたのである。

しかし、ジャケットを見ると二人とも若い。特にグールドはまるで少年である。この鮮烈な欧州デビューだったのにいくら探しても録音されたレコードはなかった。その幻の演奏がとうとう世に出たのである。ホールでライブ録音したものでモノラルなのだが、残響がこもってオーケストラが時代がかって聞こえてくる。

ベートーベンのピアノ・コンチェルトはオケの前奏が恐ろしく長い。ベルリンフィルがなにか違うなあ、つまりちょっと古めかしくて、グールドと合わないと思っていたら、ピアノが始まった途端、曲が一変するのである。やはりグレン・グールド、只者ではない。あのカラヤンから完全に主役の座を奪ってしまったのである。第二楽章はピアノのソロで始まり、独壇場であり、第三楽章が終わると万雷の拍手である。これほどの嵐の拍手はクラシックではなかなかお目にかかれないだろう。51年前にベルリンでは奇跡があったのである。そしてその場にある日本人がいた。ソニーの元社長、大賀典雄である。留学中だったらしいが、この演奏をライブで聴けたというのは何とも羨ましい限りである。
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(皐月壱拾八日 夏至) ネット選挙  政治

週末とあって少し前の新聞を読み直す。ネットの時代なので、新聞というのは時間を追うよりも、こうした整理術の一つとなるのではないだろうか。今日読んでいたのは、米大統領予備選挙についてである。民主党の大統領候補となったオバマであるが、2月一月で55億円の寄付を集めている。これは73万人にも及び、そのうち100ドル以下が90%で、20ドル以下がその半分を占めている。5月の記事なので現在はわからないが、オバマは150万人以上から寄付を集めており、ヒラリーはその半分くらいのようだ。オバマはこれまでの利益団体とか労働組合とか大企業の寄付だけでなく、貧しいおばあちゃんが封筒にいれて送ったり、学生がVISAカードで送ったりする例が増えていることである。

まさに政治参加である。少しの金額ではあるが、有権者の関与度が高い証拠でもある。日本では選挙の公示になると、ネット献金だけでなく、候補者がメールで有権者とコミュニケーションをはかることさえ禁止されている。このネットの影響力を一番わかっているのはオバマなのだろう。つまり彼は21世紀の候補者であり、ヒラリーは20世紀の候補者、そして共和党のマケインはどちらかというと19世紀という按配みたいだ。

オバマは日本では黒人候補と称されているが、アメリカではアフリカンアメリカンで統一されている。実際父がケニア人で母は白人なのだから、黒人というのもちょっとおかしいかも。しかし、ヒラリーも禁断の木の実である人種問題に触れ、「恥を知れ」と罵ったことが結局敗れた最大の原因のように思える。もともとアフリカンアメリカンだってオバマが勝つとはあまり思っていなかったし、それよりもヒラリーを応援して民主党政権にすることが大事と思っていたようだし、こうした変化を起こしたオバマはやはり何かを持っているのだろう。
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(皐月壱拾七日) ETF  金融

米金融サービス大手のステート・ストリートは、日本でETF事業を強化するようだ。ロイターが伝えたところ、今月末に金現物連動型ETFに加え、複数のETFを年内に国内の証券取引所に上場させ、日本の投資資金を呼び込む考えのようだ。ライバルのバークレイズ・グローバルも昨年から外国籍のETFの品揃えを急拡大しているし、国内勢でも野村アセットなどがETFの上場を加速させている。

2007年末の世界のETFの残高は約86兆円にも達しており、市場でも大きなシェアを持つようになっている。ETFが人気化するのは投資家にメリットが大きいためである。個別株投資に比べると低リスク・高リターンであるからだ。ETFは指数に連動させるために多くの株式等を組み入れる。このため、投資分散効果が生まれ、個別株投資に比べて投資リスクが大幅に減少する。

ところが、投資家にとってコストが低いということは業者にとっては儲けになりにくいということになるわけだ。したがって積極的にETFを販売する証券会社は稀有なのである。

以前はこうした様々なETFは海外口座でしか購入できなかった。日本の投資家にメリットが多いのに日本の大新聞は業者にはばかってか、ほとんど報道しないのは猛省を促したい。
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(皐月壱拾六日 望) 解放  社会

横浜国立大学生が中東で誘拐され、8ヶ月ぶりに解放された。時として、こうした地域を旅する危険性を考えていないのかという暴論を聞く。しかし、旅する者は誰だって、危険を避ける努力を続けながらも、そのリスクを覚悟して余りある見聞が得られるからこそ、その一歩を踏み出すのである。危険には身の危険ばかりではなく、世間に迷惑をかけてしまうという可能性もあるが、23歳の自分のために、外務省の副大臣一行がテヘランまで迎えに来るということを、出発前から想像しろというのは酷な話である。

誘拐されたり拉致されたりするほうも脇が甘いと安易に言う人も多いが、その方々に、北朝鮮に拉致された被害者に同じ言葉を言えますかと問いたい。誘拐や拉致はそういう犯罪を犯すほうが100%悪いはずである。

しかしマスコミに騒がれ、副大臣まで出てくるとやはり当人にとってはかなりのプレッシャーになったことは言うまでもないだろう。本人も家族も申し訳ないという気持ちで一杯だったことだろう。自分の息子が同じ立場になれば、この中村さんのように笑顔で感謝と謝罪を言えるだろうか。それに彼は父親と再会したときに「顔向けができないと思っていたが、僕の知っている父が温かく迎えてくれて安心した。」とコメントしている。日本人として、立派な親子を久々に見て、誇りに思う。
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(皐月壱拾五日) 死刑  社会

宮崎勤の死刑が執行されたことで、朝日新聞では「死に神」騒動がおき、各メディアをにぎわしている。これと反対に目立たなかったが、産経新聞は死刑賛成から論陣を張っているが、今日の紙面での最後の文章は気になる。

《2年前に刑が確定した麻原彰晃死刑囚も宮崎死刑囚同様、自ら罪を悔い、遺族に謝罪する可能性はゼロに近い。欧州連合(EU)では、死刑を廃止しているので日本も、という出羽守は、さっさと文明の都、パリあたりに移住されてはいかがか》

死刑制度に反対するという偽善に対しては、反撃をおこなうのはやぶさかではないが、この産経新聞のいわば「排除の論理」というのもいかがなものか。異論に反論することと、異論を排除するというのは似ていそうで全く違う。異論を排除するというのは、あのスターリンや毛沢東が行った粛清と同じ論理である。天下の公器である新聞社がいう言葉ではない。
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(皐月壱拾四日) 楽をして  読書

「ラクをしないと成果は出ない」という本がヒットしている。ただ、楽ばかりしていては当然成果を得られないと思うし、この本の著者も、最初から努力も工夫もしないで済むようにと考えて上梓したわけでもないだろう。そんなことは当たり前だと思うが、それは普段は努力や工夫をしている人たちに言えることであり、勘違いをしている人も多いだろう。

先日の朝日新聞に、作家の桜庭一樹(「私の男」で直木賞を受賞している、この名前で誤解されているが、女性だよ)がこう書いていた。

《たまたま見たテレビの深夜番組で、30歳のニート男性が、「楽をしてクリエーターになりたい」と話したのに対し、同席していた人気漫画家が、「不本意な状況に身を置いて、もがき苦しみ、適度にストレスを感じたほうが描くべきテーマを見つけやすくなるのでは?」と意見していた。私自身、来年はどんなものを書いているかわからないし、この男性の言った『楽をして』という言葉が気になって、寝付かれなかった》

苦労して小説を書き続け、直木賞を受賞しただけに、「楽をして」という言葉が違和感を抱いたのだろうが、これが普通の感覚である。

しかし、全てを自分でやろうというのは、間違いであり、傲慢でさえあると思う。もちろん、それは既に頑張っていることが前提であり、その上でラクをして成果を出すということではないか。
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