(長月弐日) This time is different.  金融

四つの単語でできた言葉のなかで、最も高価なものは「This time is different.」という言葉を残したのは、今年4月90歳で生涯を終えた大物投資家、ジョン・テンプルトン卿である。彼は最も有名な相場格言である「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成長し、陶酔のなかで消えていく」も残している。テンプルトン卿は1960年代に世界の投資家が全く見向きをしなかった日本株を大量に買い、バブル崩壊前の1980年代に売り抜けた手腕は世界的に知られている。一国で投資が完了していた米国でグローバルな投資を初めて実行した投資家でもあった。

テンプルトンが諫めた「今回は違う」という風潮は、このサブプライム問題が起こったときも同様だった。バーナンキ議長は3月のベア・スターンズ危機を乗り切った4月に議会で「銀行が損失を隠し続けた日本とは違う」と強調した。この油断が対応の遅れを招いたのではないか。また、シティグループのプリンズ前会長は昨年7月に「曲が流れている以上、踊らなければならない」と強気をぶったが、その一ヵ月後にBNPパリバショックが起こり、金融危機が本格化し始めたのである。「今回は違う」という罠の怖さを物語っている。

しかし、こうした中でバフェット氏はゴールドマン・サックスやGEの増資に応じ、飛び交う弾丸を避けつつ機会に狙っているし、米運用会社インベスコのフラナガン会長はテンプルトンの運用会社で直接薫陶を受けた人物であるが、傘下の投資会社で破綻企業への投資を始めている。格差社会というが、金持ちはますますそのチャンスを狙っているのである。

慌てるものは貰いは少ないというが、この世界だけはそれが分からないのである。
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(長月壱日 朔) 太陽活動  サイエンス

ちっぽけな地球という天体のなかで起こっている経済の混乱など、宇宙の神秘さから見れば大したことはない。米航空宇宙局(NASA)がこのほど発表したところによると、太陽活動が極端に静かな状態になっているとのことだ。あの黒点がほとんどない日が続いており、「約50年ぶりの静かさ」と表現した。ん?50年ぶり?今回の金融危機を引き起こした張本人?のグリーンスパンも50年に一度あるかどうかの危機と言っていなかったか。

太陽活動は約11〜12年周期で強弱を繰り返している。ホロスコープなどもこれが基準になっている。今は新たな活動期への移行期で、もともと静かな時期なのだが、次の活動期が本格的に立ち上がらないまま移行期が延びているのである。観測によると、ここ50日ほど太陽活動の目安となる黒点が全く現れなかった。太陽風(太陽が放出する高速の電気を帯びた粒子の流れ)が前回の極小期に比べ、約2割弱いともいう。

太陽活動が不活発な状態が続くと、地球の気温が下がるという見方がある。17世紀半ばから18世紀にかけて黒点が消滅した「マウンダー極小期」は、19世紀以前の数世紀のなかで特に寒い時期だったのだ。専門家によると、この活動期の遅れはまだ異常ではないという意見も多いが、あと1年2年続くと気温が下がる可能性があるという。あれあれ地球温暖化が世界の常識ではなかったのでしょうか。常識は常に疑ってみるものである。
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(葉月廿九日) We shall Return  スポーツ

今季限りで51年の歴史に幕を下ろす広島市民球場で今日公式戦最終試合・広島カープ対ヤクルトスワローズ戦が行われた。原爆の惨禍からの「復興の象徴」として市民に親しまれた球場。「市民球場」と呼ばれ、世界の王のホールラン記録では多大な寄与をした。確かに小さいし狭い。今年で終わりということもあり、外野のプラスティックの椅子は、試合前の打撃練習の打球で割れることも少なくない。そんな空席など一つもない真っ赤に染まったスタジアムの応援を受けて、先発した20歳の前田健太が8勝目をあげ、8回裏の攻撃では全盛期の主力だった前田智徳や緒方が代打で登場するなど、ブラウン監督も粋な采配だった。

1975年昭和50年の初優勝の平和通のパレードは、その後のGWのフラワー・フェスティバルの原型になった。あのとき細かった山本浩二の嬉し泣きを忘れられないし、一勝もできなかった初めての日本シリーズ。江夏の活躍した連続日本一、西武に世紀の大逆転を許したが、三冠王ブーマーを封じ、三度目の日本一に輝いた栄光など、51年の歴史を語ることは尽きない。

つめかけた大勢のファンは、試合終了後も途切れることのない歓声を送って名残を惜しみ、球場を訪れた観客は今季最多の30609人。中日との熾烈なCS争いに勝ってもセリーグチャンピオンにならない限り、市民球場での試合はない。だからこそファンは必ず帰ってくるというプラカードを掲げていたのだと思う。

阪神や読売のように金にあかして他球団の有力選手や実績のある外国人選手を獲得せずにリーグチャンピオンになれば、これほど痛快なことはない。可能性は低いが、日本一熱いファンがついている。頑張れ!カープ!
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(葉月廿八日) センスのなさ  スポーツ

読売の快進撃で風雲急を告げているセントラル・リーグであるが、今日の甲子園球場の阪神読売戦が東京地区では放映されず、朝日放送で中継しているにもかかわらずだ。別に美空ひばりをどうこう云うわけではないが、スポーツのLIVEであれば台本がない。そこにドラマがあり、スポーツの醍醐味がある。

プロ野球の人気が減少傾向とマスコミは嘆いているが、首位攻防の今日を中継しないというのは、試合放棄も甚だしい。甲子園は超満員だし、CSシリーズに最後の切符を争っている中日は4点を先行されながら、9回裏に押し出し四球でサヨナラ勝ち。対する広島はエース、ルイスが完封で明日の市民球場最終戦に勢いをつける。

結構面白いじゃないですか。番宣ばかりが目立つTBSの例の恒例番組も何か色あせているし、仕方がないから西村京太郎の十津川警部を見る初秋の夜である。
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(葉月廿七日) 世襲  社会

麻生内閣が組閣されその世襲率なる数字が紙面を踊っている。世襲とは広辞苑によれば、「その家の地位・財産・職業などを嫡系の子孫が代々受け継ぐこと」とある。しかし、地位や財産、職業を同列に論じてもいいものだろうかという疑問がまず湧いてくる。地位というのは身分であるから日本では皇室や一部の家元、教祖を除いて論じるに値しない。財産の世襲というのは厳密に言えば、単なる遺産贈与のことではなく、子孫といえどもその財産の処分が法的に禁止されている状態である。したがって、現代的な世襲問題というのは職業の世襲問題ということになる。

そもそも職業選択ということであれば、世襲批判というのは正鵠を得たものといえるのだろうか。言葉の本源から外れるが、母親の職業の世襲も同列に論じられるべきであろう。大分の教員採用の口利き汚職も、元はといえば、子の職業に親が介在する率が年々高まっているからであり、さらに子供を自分の所有物と思い込む親が増えてきているためである。しかし、この思い込みが少子化の原因であるという事実に対して誰も評論しないのだろうか。

職人や農業の後継者難を悲しんでみせる人が、政治家や経営者の世襲を批判するのは私から言わせて見れば、偽善そのものである。私なりの結論は「世襲は悪い面はあるが良い面もある。」という陳腐な意見である。だいたい、おじいちゃんが総理大臣だったというだけのミュージシャンを人気者にしている現実があるじゃないか。
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(葉月廿六日) 市場原理主義の終焉  金融

今回の金融恐慌の原因は何かと問われれば、ほとんどの人がサブプライム問題でありCDSであるというだろう。しかし、鳥の目で見てみれば、今回の原因は基本的にウォール街モデルの中核である、デリバティブといういわば大量破壊兵器の炸裂によるものである。しかし、震源の米国内ではそういう見方はWSJ紙などを見ていても全く見られない。グリーンスパンをはじめ、市場原理至上主義の立場をとる要人たちがデリバティブを擁護し、その発展を後押ししてきたからであろう。80年代からのノーベル経済学賞の受賞者の多くが、デリバティブ理論を評価されたものだ。

日本でも日経新聞がこの市場原理主義の論陣を張り、グリーンスパンを英雄視してきた。でもこの市場原理主義は死を迎えたのである。この深淵を理解しなくては今回の問題は解けないだろう。

共和党のマケイン大統領候補はレーガン革命以来の共和党保守派が進めてきた金融規制撤廃、市場原理至上主義が今回の危機をもたらしたと述べた。一匹狼のマケインらしいが、政府による金融機関救済についてはどう判断するのだろうか。オバマが市場介入に理解を示しているだけにこれは大統領選挙の分水嶺になるのではないか。
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(葉月廿五日) 投資銀行の死  金融

私が初めての転職を決意したのはたまたまブラックマンデーの前週だった。そのときもNYダウが500ドルぐらい急落して嫌な週末を迎えたのだが、まさか次の週にあんな大暴落が起こるとは思っても見なかった。山一證券の大阪店のフロアで株価ボードが緑一色だった光景を未だに忘れられない。しかもこれから転職しようとしたのが米国の証券会社だったのだから。あのときも歴史的な瞬間に自分の人生の分かれ目だったのである。

そしてこの週はウォール街の羨望の的だった投資銀行すなわちインベストメントバンクが単体業態としてはこの世から失せてしまったという激動期に身を委ねている。思えば大恐慌のあと、証券業務の影響を銀行業務の安定化を重視して隔離する規制が米国で発足したのだが、その壁は20世紀末になくなってしまった。ところが、今は逆に証券業務の安定的資金調達のために銀行業務に再び吸収されてしまったのである。

ここにきて米系インベストメントバンクの買収に日本勢が名乗り出しているが、それは「リベンジ」になるのだろうか。インベストメントバンクの収益起源は「人」である。日本の銀行経営者がそれを御するというのは難しいことではないだろうか。
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