(師走壱拾六日 望) 大和撫子  社会

エチオピアで誘拐され、今月7日に3カ月半ぶりで解放された国際救援団体「世界の医療団」の医師、赤羽桂子さんが10日、パリで記者会見した。彼女は「生きてこの日を迎えることができてうれしい」と喜びを語るとともに、交渉に当たった関係者に謝意を表していた。テレビで会見の模様を見たが、世界の注目を集める場で、民間外交官としての振舞いをこれほどきちんとこなした人は久しぶりだと思う。と同時に彼女のこの言葉に心が痛んだ。

<最初の1週間から1カ月は殺される恐怖感が離れず、銃を触る音が聞こえるたびに「もう終わりか」と思ったという。>

あのカチカチという音の恐怖心は実際に体験した者にしかわからない。それでも彼女は本当に勇気のある医師である。このようなことがあっても彼女の志はくじけてはいない。

<今後については「解放されたばかりなので将来のことは考えられない。医師として患者を診る活動は早く再開したいが、心と体の健康を取り戻すため休養をいただきたい」と話したものの「また、このようなところで活動できたら」とも漏らした。>

彼女は現場のリスクをきちんと把握して活動していた。その上で起きてしまったことは、これはもう不幸としか言いようがない。彼女を派遣した「世界の医療団」の対応もプロフェッショナルである。身代金取引については一切認めていないし、交渉の経過さえも拘束されている他の団体の人質を危険に陥れたくないとのことで明らかにしなかった。

あるいは払ったかもしれない。もちろん払っていないかもしれない。しかし、それを言わないというのが戦地で今後も活動を続けていくプロなのだ。自分たちだけではない。他の団体の人質までも視野に入れた見事な振舞いである。おそらく対価はカネだけではないだろうし、物資や活動内容までも含めた複雑な交渉があったのではないだろうか。

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