(弥生四日 夕月) 農協の大罪  読書

芸能人やスポーツ選手の新書が流行っているが、3月にして今年の新書ベスト1決定とも云うべき本である。著者の山下氏は東大卒、海外留学で博士号をもち、農水省の局次長まで務めたエリートである。私のような幼稚なものから見ると、頭のいい人と言うのはこういう人のことだと思ってしまう。

タイトルは農協についてであるし、切り口を農協においたのは間違いではない。しかし農協はあくまでもひとつの例であって、いかに「政治屋」「官僚」「業界」がグルになって良民常民を食い物にしてきたかが農協という窓を通じてよくわかる。いや、農協だけではない。農政そのものものである。農水省ばかりでなく、厚労省による医療行政や、国交省による土建行政でどういうことがまかり通っていたかがよくわかる。

私たちの印象としては、日本のお百姓さんはとても作物に手をかけていて、飛行機から種をまくようなアメリカよりもはるかに作物を作る効率がいいように思う。しかしそれは嘘だと、山下氏は言う。反収の効率はアメリカの方がいいのである。目から鱗である。なぜならば、日本では反収あたりの収穫があがるような作物を開発するのはタブーだったというのである。減反政策もあるが、農地の面積に従ってさまざまな利権があるからなのである。

戦後の農地改革は確かに必要だっただろうが、それで得た土地を小作人たちがいかに手前勝手なルールで売り飛ばし、そのカネが農協を太らせていたかを、山下氏は喝破する。さらに、なぜ日本の農家が「合理化」されないかもよくわかった。小学生の時からアメリカなどの農家の写真を見させられ、大規模農業こそ理想だと教えられた。しかし半世紀たってもそれは実現しない。山下氏によるとそれは「当たり前」らしい。農地を統合ししていくと、農家の数は減る。すると農業機械や肥料を売りつける先が減少して、農協としては損なのだ。もっといえば農家の戸数が減るということは、農村票の減少につながる。そこを基盤していてきた政府与党、つまりは自民党にとってマイナスなことをするはずがないじゃないかと言われればその通りだ。

農協の組合員というのは実際の農家の戸数の倍以上いる。「農家のフリ」をさせている連中がそれだけいるということだ。農家そして農協の力というのは実は「虚像」である。その農協の親玉である農林中金がサブプライムローン問題で債務超過になっている可能性があることも必然のようである。

(山下一仁著 宝島新書)
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