(神無月廿五日) 東金女児殺害事件  社会

昨年12月、千葉県東金市の成田幸満(ゆきまろ)ちゃん(5歳)を殺害したとして勝木諒容疑者(21歳)が逮捕された。だが、勝木容疑者が知的障害者であったため、全国の特別支援学校などから「いわれなき偏見を生んでいる」と訴えが続くなど、やり切れない状況になっていたのをご存じだろうか。

この事件の物的証拠は被害者の靴が入っていたレジ袋に付いていた指紋1個が被疑者と一致していたことのみで後は自供である。そしてこの間、弁護士サイドの鑑定により氏の指紋が不一致との見解が出た。鑑定したのは元栃木県警で鑑識を30年間やっていた人の研究所である。警察の言い分は「被疑者は被害者を自宅の浴槽に服のまま沈め殺害」というものであるが、驚くべきことに被害者の遺体からは水を飲んだ形跡が発見されず、被害者の毛髪や指紋などの物証さえも犯行現場とされる場所からは見つかっていない。

東金女児殺害事件は警察の捜査が初動から狂い現場が混乱。聞込みで浮上した近所に住む軽度の知的障害者を逮捕。マスコミによる県警のリーク情報垂れ流しのお陰で彼が犯人というイメージが完成したが、犯行が行われたとされる彼の部屋から被害者がいた痕跡は全くなく髪の毛一本も見つかっていない という事実をどれだけの人が知っているだろうか。

当時私は東京で単身赴任生活をしていたが、この事件の報道の異様さには驚くばかりだった。この事件で障害者の保護者である愚妻は怒り心頭だった。(当然私も同様である。)知的障害者に対してのTBSの女性記者の取材は常識を疑うだけでなく、障害者に対する偏見そのものであると私は思っている。足利事件ではないが冤罪の疑いが極めて濃いこの事案は、裁判員制度の対象外の事件であり、制度が始まる直前に送検しているのである。この決定が幸か不幸かは判断できないが、検察および警察側が何かを隠したい意向はあるように見えた。

では、問題のTBS記者の行動とは何だったのか。事件発生から数日後、現場近くの聞き込みで「裸の女の子を肩に担いだ男が歩いていた」「女の子を追いかけ回す男がいる」という不審者情報をつかみ、挙動不審に見えた勝木容疑者にアタックを始める。それはとても取材とはいえない手法だった。まずカラオケ店に勝木容疑者と同行、彼がアニメソングなどを歌うシーンを撮影。屋外でインタビューするときもカメラを堂々と回し、事件のことを知っているかと繰り返し聞くと、にやついた勝木容疑者が「いやぁ、知らないです」と答える。勝木容疑者の、こうした尋常とは思われにくい表情ばかりを放映すれば、知的障害者への偏見が助長されたのも当然だろう。

問題はこればかりではない。逮捕目前の12月6日午前1時前、「重要参考人が浮上」と大手通信社が特ダネ記事を配信。同社では、参考人が自分のことであると気がつくと、逃亡や自殺することも考えられるので、勝木容疑者に取材はかけていなかった。だが、TBS記者は、この記事配信から約1時間後、つまり5時間後に任意同行されることになる勝木容疑者に直接電話をかけるという禁じ手を犯していた。取材という名のカラオケデートからすでに2カ月。TBS記者が「その後、あの事件もどうなったかなと思って」と切り出すと、「まだわからないみたいだね」と答える勝木容疑者。TBS記者は、配信記事の中にある匿名の「重要参考人」が勝木容疑者本人を指すのかどうか確かめようと、焦って「警察の人に話聞かれた?」と被疑者になっていることを感づかせる質問もしている。TBSは何も抗弁しないだろうが、こんな取材が許されるのか。

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