(神無月壱拾四日) バーナンキの裏技  金融

FRBのバーナンキ議長が先週末行った講演で議長は「インフレ率は、長期的なFRBの2つの責務に最も整合性があると連邦公開市場委員会(FOMC)が判断している水準に比べ、低過ぎる」と指摘。「2つの責務」とは物価安定と低失業率の達成である。米国の失業率を引き下げることがFRBで第一の仕事になっている、というバーナンキのメッセージは、これ以上ないほど明確だ。バーナンキ議長が言わなかったことに、さらに強い印象を受けた。4000語近くインフレについて語った部分で、議長は一度もドルの価値について言及しなかった、とWSJが伝えた。

バーナンキ議長のこのスピーチを受け、「FRBは追加緩和をする」と市場が受取り、債券、株式市場が好感して上昇。為替も悪材料出尽しと見てドルが買い戻された。発言の中でFRBが重視するインフレ率については、ここ数ヶ月アメリカの消費者物価が下落したため、名目金利からインフレ率を差し引いて求められる実質金利が急上昇してマイナス2%弱から0.8%になった。このため、アメリカと欧州間の実質短期金利が同じ水準になった。ちなみに、実質短期金利が最も高いのは日本で2%近くもある。これを、短期金利はゼロなので下げられないが、量的緩和でデフレからインフレに戻すことで、実質金利を下げようというわけだ。

講演や記者会見の際に、メディアは「何を語ったか」を主にニュースにされる。しかし、「事実」は語られた内容だけでない。語られなかったことがあることも「事実」なのである。語られなかったこととは、言いたくないことか、考えていないことだ。語ったことと、語らなかった事を両方考えれば、その人がどんな考えか見えることがある。

WSJの記事はは話したことの他に、話さなかった事として米ドルについて語らなかったと着目した。FRBは財務省と並んでドルの貨幣としての価値に責任があるにもかかわらず!ドル安は通貨の価値を下げ、輸入インフレを招くので、その経済成長への影響もFRBは考えなくてはいけない。そしてデフレからインフレ変える容易な手は、通貨価値を下げて輸入インフレを起こせばよい。しかしあえて書かないのは、ドル安が望ましいと考えても、話せば急速な為替の動きに繋がるからに過ぎない。

よって、講演の結果の一時的ドル高は作戦成功といったところだろう。
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