(師走廿参日) プリオン説はほんとうか?  

福岡伸一著 講談社ブルーバックス

昨日の日記のなかのプリオンについて詳しく書かれている本である。福岡氏は京大卒、アメリカのロックフェラー大学及びハーバード大学医学部で研究員、京大助教授を経て、青学理工学部に新設された化学・生命科学科教授で、分子生物学の専門家である。福岡氏については詳しくないので彼が今までどのような研究の実績を残しているのかは知らない。たまたま、文春新書の「もう牛を食べても安心か」を読んだことがあるので記憶しているだけである。

彼はプリオンという遺伝子をもたない蛋白質が感染・増殖して新しい病気を発症するというノーベル賞まで取っている説に対して、ウイルスが原因ではないかと疑っている研究者である。しかし、その実証は今だ未完成で、本来は科学者は研究論文で勝負するのが本筋で、本書のように問題点の提示と仮説だけを示唆する一般書を書くのは邪道という向きもあろう。しかし、小泉政権がアメリカとの関係だけで決定したような牛肉輸入が一ヶ月余りで破綻してしまう有様を見れば、もう少しこの問題に関心をもってもいいのではないかと紹介する。

福岡氏に依れば、プリオン説は「too good to be true」(出来すぎた)な仮説だと大学院生の時に感じたらしい。プリオン説にとって強力に支持する証拠が、この病気のあるところに異常型プリオン蛋白質が存在するという点である。しかし、それが病原体であると断定されたわけではなく、わかっていないところが多いくらいだ。そこでプリオン説は説明できない現象が現れるたびに新たなメカニズムや因子を想定しようとしている。そもそも、ある少数の原理から多数の現象を説明しうることが科学的仮説の特性ではないか。

先日のES細胞の韓国の有名教授の捏造事件も嘘で固められたものだった。科学による解明というものは時間のかかるものである。拙速な科学者の暴走は人々を不幸にするばかりだ。C型肝炎ウイルスもその発見までには紆余曲折があったことを思い出してほしい。迅速に結論を出さなければならない問題と時間をかけなければならない問題の峻別を当局は厳しく判断すべきである。
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