(霜月壱拾日) 注目されなかったFOMC  金融

今回ほど注目されなかったFOMCはなかったのではないか。政策金利に変更は考えにくく、さらに直前で現行方針の推進が伝えられていたせいでもあろう。前回決定した6,000億ドルの国債買い入れに伴う資金供給の影響は大きかった。昨今の世界の株価や商品市場の堅調の大きな要因は、このFRBによる大量の投機資金の注入でもある。

FRBの意図は、金融機関に流動性を注入して、その波及で民間に資金が供給されて経済を浮揚させようというものであるし、効果が十分でないからこの政策を維持しようとするのがFRBの考え方である。しかし議会主流の共和党は「小さな政府」を唱えており、共和党の解釈だと、FRBが借金してバランスシートを急拡大させ、悪事の限りをつくした金融機関に儲けさせようとする政策となるから、絶対反対という姿勢である。どこかでみたデジャブでもある。

FRBと議会のせめぎあいによっては、FRBの現政策が否定され市場が逆方向に向かう可能性を秘めている。このFRBと議会の対立の帰趨は大きな変化をもたらすので投資や為替や経済に関心にある人には目が離せないことになる。問題はこの対立が金融政策の実効性を巡ってのものではなく、FRBが必要か否か、どこまで権限を与えるかという純粋な政治問題と化していることである。これでドル円も株価も動くのだから、ファンダメンタルどうこういう問題なのである。

しかしFRBの金融政策はある前提がないと機能しないということに注目すべきだろう。
それは、「景気が悪いのは金融機関が貸し渋りしている」との前提である。お金が市中に回らないから景気が悪いというわけである。(この議論もバブル崩壊の極東の島国で過去しきりに問い続けられたことである。)

もし「金融機関の貸し出しが伸び悩むのは、過剰に借金した企業や家計が返済を急いで身軽になろうとしている」ためだったら、FRBの金融政策は「為替をドル安にする」以外、何の役にも立たなく、単純に世界にバブル生成の資金を提供するだけであり、異常に膨らむFRBのバランスシートが米ドルへの信任を失わせるという負のスパイラルをおこすだけである。

かといって、共和党の言うように異常金融緩和を止めれば、市場に入っていた資金を失うから、世界の市場は混乱に陥ることはいうまでもないだろう。行くも退くも茨の道を歩いているのがFRBである。
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(霜月四日) 債券市場の反乱  金融

日銀が大量の資金供給を含めた追加金融緩和をしたのは2ヶ月前である。その目的は建前上デフレの脱却と景気の浮揚だったが、本音は8月から9月にかけて上昇していた長期国債利回りを下げるためであった。現在のバランスシート不況の最中では、金利政策によって景気浮揚もデフレ脱却も効果がないことは日銀も百も承知のはずである。金融緩和を発表してしばらくは意図どおりに長期債金利が下がったものの10月半ばには反転して金利が再上昇し、今では緩和前の水準に戻っている。日銀が銀行にお金を上げるから国債買ってよ!といったけど銀行はそっぽを向いてしまったのである。

今の債券相場の下落はただの下落でなく、日銀の努力があっても下がっているという事実である。

政府の来年度予算は大幅緊縮財政であり、あちこちで家計の負担増を求めるものになっている。しかしゼロ金利のおかげ?で国債費は900兆円の残高がありながら20兆円で済んでいる。政府債務がGDP比で100%程度と、日本の半分の借金しかしていないギリシャやアイルランドのように10%を越える債券利回りになれば国債費のなかの利払費だけで100兆円になる。税収の倍以上になる。これでは政府支出の全てが国債費となり、公共投資、公務員給与、年金、健康保険支払いに回す余地がなくなるはずである。

これまで、世界一の巨額の借金を積み上げてきたのに、日本が維持できたのは発行される国債を公的年金、簡保、郵貯、そして民間金融機関が一手に引き受けてきたからに他ならない。この構図が崩れるかもしれない。そんな予感をさせる金利上昇である。
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(神無月廿六日) 銀行の国債保有の変化  金融

日銀が1日に発表した10月分の「民間金融機関の資産・負債」によると、都市銀行の国債保有残高は10月末現在、前月比0.4%減の91兆8394億円と2009年10月以来1年ぶりに減少に転じた。日本の都市銀行は保有する資産の配分を大きく変えてきている。2000年まで、預金で獲得した金額とほぼ同じ金額(約220兆円)が貸付に回されていた。その後も預金額は増えて直近では約260兆円にまで増えたが、貸付は約180兆円にまで減った。貸付減少額は約40兆円。代わりに大きく増えたのが国債。約40兆円の保有だったものがこの10年で約50兆円増えて、91.8兆円になった。

この10年ほど預金金利はゼロだったのに対し、国債利回りは10年もので1〜2%だったので、貸付のような貸し倒れリスクがあり、手間もかかる投資先よりも、安全で、黙っていても1〜2%の利鞘が確保される国債を買うほうが合理的だった。

国債を売るほうにしてみれば、これまでのお得意さんだった郵貯や簡保は資産が趨勢的に減っている一方で、その資産の過半以上で国債を買っているため減らす事はあっても増やすことはできない。公的年金もお得意さんだったのだが、今は積立金を取り崩して年金の支払をしなければいけない状況に変わったので、これもまた減らす方向だ。よって、毎年着実に国債残高を大きく増やしてくれる銀行、特に都市銀行はここ数年、最大のお得意さんだったのだ。

しかし、9月あたりから国債の利回りが反転して上昇しだした。30年もの国債にいたっては0.6%も金利が上昇し、債券価格は大きく下落している。日銀が追加緩和をしたが、国債にその影響は無く、利回りは上昇傾向のままだ。国債価格は下落している。

そこで、銀行は国債からの評価損を避けるため、長期国債から価格変動幅の少ない短期国債へとスイッチする一方で、国債保有残高も減らし始めたというわけ。「誰が国債を買うのか」を考えた場合、都市銀行が国債を減らし始めたという事実の影響は大きい。
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(神無月廿四日 下弦) 毎月分配型投信  金融

朝日新聞に「海外に投資とは…毎月分配型の投信購入者の6割知らず」という記事が出ている。ほんまかいなと疑いたくなるし、どういうサンプル調査だと思う。これでは販売した証券や銀行は即時法令違反で逮捕状態である。新聞社の記者は自分が書いたことの重要度を認識していないのではないかと思うぐらいだ。

そもそも投資の数少ない鉄則の1つは「知らないものに投資するな」である。最近の為替予約の損失で倒産という話も多いが、この原則を本当に守ったのだろうか。でもこの事態をデリバティブが悪いという話にすり替えるメディアが多いのにも閉口するが。知らないものは仕方がない、当たり前の話だ。万能な人間なんていないのだから。ただ、その後の対応で人の真価が決まるというものだ。知らないからと諦めて投資しないか、そのまま投資し続けるのが駄目な人であり、知らないなら、学んで良く知れば、楽しいし未来を良い方に変えられる。そう考える人に福は来るはずである。
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(神無月廿参日 下弦) 欧州危機  金融

スペイン、ポルトガルなどユーロ圏の金融市場が再び動揺している。アイルランド向け国際金融支援の動きを受け、ユーロ圏の他の国への不安の波及が食い止められるのではとの期待が打ち砕かれた格好だ。メルケル独首相はドイツ経済界の会合で演説、アイルランドの危機はユーロ圏にとって「極めて深刻」なものであると厳しい見方を示した。アイルランドへの支援にもかかわらず、信用危機が他のユーロ圏諸国に広がる兆候をみせていることを示したこの発言で、欧州の債務危機への悲観的な見方が強まった。北朝鮮が韓国に砲撃を加えたことも、「安全への逃避」を誘いユーロ相場を圧迫した。

アガサ・クリスティの有名な小説の「そして誰もいなくなった」を思い起こす。

ユーロ圏内の金融危機は、この小説どおりに進むのではないかという懸念が投資家の中に出だしている。金融危機の基本構造が、ギリシャなりアイルランドの銀行が多額の資金調達をユーロ圏内の大銀行からして、国内に貸し付けたものの、回収できなくなり、自国政府に泣きついたものの、資金不足の政府は救済資金が無いのでECBや欧州の救済ファンドに出資を求めるものである。

ギリシャもアイルランドもECBや欧州の救済ファンドに参加し、応分の出資をしているが、危機でお金を受取る方に入ると、出資は漫才になるのでしなくなる。つまり、危機に陥るたびに、欧州の救済ファンドの額は減ってゆくのだ。スペイン、ポルトガルの事情はアイルランドに酷似している。不動産投資で大きなバブルが生まれ、弾けた。若者の失業率は4割を越えたままだ。

不良債権処理をせずに騙し騙し帳簿を弄っているだけだから、アイルランドと同じ事態になる事は周知だから、誰もが西・葡政府や銀行に貸したがらないで、国債金利、CDSスプレッドが上昇する。そして、借入額は他国より大きく、危機の影響は更に大きくなる。そうなれば、救済するための資金が増えて大きくなる一方で、出資国や出資額は減る。救済しなければ貸込んでいる独仏英銀行などが破綻してしまう。

西・葡の危機が通り過ぎたら、次は同様のイタリアかとなるだろうし、西・葡やアイルランド、ギリシャに貸している銀行を抱える独仏英が危ぶまれるようになる。つまり、救済できる国が無くなるまで危機は進行する。まさに「そして誰もいなくなった」となる。
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(神無月壱拾四日) バーナンキの裏技  金融

FRBのバーナンキ議長が先週末行った講演で議長は「インフレ率は、長期的なFRBの2つの責務に最も整合性があると連邦公開市場委員会(FOMC)が判断している水準に比べ、低過ぎる」と指摘。「2つの責務」とは物価安定と低失業率の達成である。米国の失業率を引き下げることがFRBで第一の仕事になっている、というバーナンキのメッセージは、これ以上ないほど明確だ。バーナンキ議長が言わなかったことに、さらに強い印象を受けた。4000語近くインフレについて語った部分で、議長は一度もドルの価値について言及しなかった、とWSJが伝えた。

バーナンキ議長のこのスピーチを受け、「FRBは追加緩和をする」と市場が受取り、債券、株式市場が好感して上昇。為替も悪材料出尽しと見てドルが買い戻された。発言の中でFRBが重視するインフレ率については、ここ数ヶ月アメリカの消費者物価が下落したため、名目金利からインフレ率を差し引いて求められる実質金利が急上昇してマイナス2%弱から0.8%になった。このため、アメリカと欧州間の実質短期金利が同じ水準になった。ちなみに、実質短期金利が最も高いのは日本で2%近くもある。これを、短期金利はゼロなので下げられないが、量的緩和でデフレからインフレに戻すことで、実質金利を下げようというわけだ。

講演や記者会見の際に、メディアは「何を語ったか」を主にニュースにされる。しかし、「事実」は語られた内容だけでない。語られなかったことがあることも「事実」なのである。語られなかったこととは、言いたくないことか、考えていないことだ。語ったことと、語らなかった事を両方考えれば、その人がどんな考えか見えることがある。

WSJの記事はは話したことの他に、話さなかった事として米ドルについて語らなかったと着目した。FRBは財務省と並んでドルの貨幣としての価値に責任があるにもかかわらず!ドル安は通貨の価値を下げ、輸入インフレを招くので、その経済成長への影響もFRBは考えなくてはいけない。そしてデフレからインフレ変える容易な手は、通貨価値を下げて輸入インフレを起こせばよい。しかしあえて書かないのは、ドル安が望ましいと考えても、話せば急速な為替の動きに繋がるからに過ぎない。

よって、講演の結果の一時的ドル高は作戦成功といったところだろう。
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(神無月九日 上弦) 不吉な予言  金融

「FRBはすでに買われすぎの米国株を、危険なほど割高な水準まで押し上げようとしている。相場は遠からず砕け散る」

資産運用大手のGMOのジェレミー・グランサム共同創業者が米CNBCテレビで語っていた。サムは1980年代末の日本株バブル、90年代の米ITバブル、2007年までの米住宅バブルといった相場の天井をことごとく言い当てた伝説の投資家である。

米国株もやや調整をし始めたが、それ以上に反動安が目立つのが新興国や資源国の株式である。12日に今年最大の下落を記録した上海株をはじめ、ブラジルやインドも3〜4%下落している。ゴールドマンサックスは10日中国株の買い推奨を取り下げている。当局の追加引き締めが確実で短期的に投資の見返りが少ないというのが判断理由らしい。カルパースも商品相場への投資を10分の一に落としたとも云われている。

新興国の成長見通しに変化は無いだろうが、右肩ばかりではないと云うことだろう。サムは墓場のダンサーといわれており、底値を拾うことにも慧眼の持ち主であることをお忘れ無く。
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