(長月壱日 朔) 加藤和彦  音楽

「あの素晴らしい愛をもう一度」は私のカラオケの定番だったが、学校の音楽の教科書にも取り入れられていると聞いてから辞めてしまったのはなぜだったのだろうか。教科書という体制への反感とか、そういったものではなく、なんとなく北山修と加藤和彦が遠くなったような感覚だった。

その加藤和彦が軽井沢のホテルで自殺したという。呆然自失というのは今の心境である。日曜でTVでは若さ溢れる石川遼がトップ争いをしているゴルフの日本オープンを見ながらも上の空だった。なぜ彼が死ななければならないのか、死にたいくらいなのは私なのに。自分の能力が並外れたものであればあるほど、現状の仕事との距離に対して躁鬱になってしまったのだろうか。音楽プロデューサーと名乗る人は多いが、所詮は売名と功利の何者でもない。挙句に詐欺など起こした小室など典型的だろう。

しかし、一般人はあのようにいとも簡単に音を操る魔術師に憧れるものである。誰もが若かりし頃ギターを奏で、ギタリストに憧れたのではないか。アイドルのちゃらちゃらしたラブソングに肌が合わなかったためか、フォークの世界で学生生活を送っていた。下宿の隣の学生がセミプロだったので、コンサートのチケットを融通してもらったことも多かった。

加藤和彦はそういう私の青春時代を飾った人だった。最近では大腸がんの啓蒙CMで弾き語りが様になっていたのに、なぜ自ら命を絶ったのだろう。過去の自分が偉大であれば、そのギャップに苛まされたということだろうか。過去に特に実績の無い自分はまだ自殺の資格も無いということかな。                   
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(卯月九日 憲法記念日) 帰れない二人  音楽

《思ったよりも夜露は冷たく 二人の声も震えていました
「僕は君を」と言いかけた時 街の灯かりが消えました
もう星は帰ろうとしてる 帰れない二人を残して

街は静かに眠りを続けて 口癖のような夢を見ている
結んだ手と手の温もりだけが とても確かに見えたのに
もう夢は急がされている 帰れない二人を残して

もう星は帰ろうとしてる 帰れない二人を残して》

今はほとんど行かなくなったカラオケだが、私のペースで歌っているときに必ずトリを飾った名曲「帰れない二人」である。作詞作曲は井上陽水&忌野清志郎で、陽水の伝説のアルバム「氷の世界」に収録されていた。

今朝清志郎の訃報を聞き、反射的に思ったのがこの曲である。いろいろ探してみたが、このコンビでカラオケに収録されているのはこれだけではないかと思う。今夜は酒を飲みながらYouTubeの二人のライブを見ている。人間死んだらおしまいだぜ、清志郎。合掌。

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(睦月廿四日 雨水) 八分音符が聞けない  音楽

1975年だからもう30年以上昔の話である。日本屈指というか、世界屈指のロック・ギタリスト、鈴木茂は単身渡米し、現地の腕達者たちと一枚のアルバムを完成させた。強靭なリズムが弾み、それに負けじとギターがうなっていた。その瞬間日本のロックの本当の夜明けが明けたのかも知れない。「バンド・ワゴン」は傑作だったのだ。

はっぴいえんどは日本語ロックの元祖である。さらにそのメンバー、松本隆、細野晴臣、鈴木茂、そして大瀧詠一をみれば、このグループがどれだけ音楽界に影響を与えたか理解できるだろう。4人が純粋に自分の持てるものをさしだし、時にはぶつかりもしたが、バンドとしてひとつの世界を作りあげた。もともと不器用な鈴木茂である。スタジオで多彩な要求に応えるには、彼のギターは個性的でありすぎた。しかし、ロック然としたたたずまいがこれほど似合う若者もいなかった。

風街30周年記念コンサートをNHKBSが放送し、動く鈴木茂を本当に久しぶりにみたが、少しはげかかった赤いギターが印象的だった。シャイなところも全く変わっていなかった。あのギターテクニックを目の前で見たときの興奮は昨日のことのように覚えている。

それが大麻で逮捕とは・・・。ちなみの私のiPodで一番演奏回数が多いのは「砂の女」である。


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(長月廿五日) いとしのエリー  音楽

サザン桑田の実姉、岩本えり子さんがなくなったという。享年56歳、若いなあ。音楽面で桑田に大きな影響を与え、サザンファンの間でも有名な存在だった長いがん闘病を献身的な介護で支えてきた桑田にとっては、これ以上ない悲しい結末となった。

昨年だったか、女性週刊誌で彼女の記事を目にしたことがある。書き出しが<その人には「砂まじりの茅ヶ崎」が、怖いほどに似合っていた。>だった。愛され続けるサザンの歌の源泉は彼女かもしれない。しかし、彼女は超一流のミュージシャン専門の通訳者でありコーディネイターとして日米の両国で知られていた。<「サラボーン、マイケル・ジャクソン、アース・ウィンド&ファイアー、コモドアーズ…。そうしたミュージシャンたちの演奏を、舞台の袖で聴けるんですから。毎日が夢みたいな生活でした」>こうした彼女の音楽的体験が桑田さんにフィードバックされたことは想像に難くない。いや、そもそもサザンオールスターズの楽曲の原点でも言うべきビートルズの世界へと弟を誘ったのがえり子さんだったのだ。

「新譜が出ると、友達から借りて、父が持っていたオープンリールのデッキへ録音。それを大音量でかけました。この時ばかりは、留守番をさせられているのが嬉しかったですね。だって、弟と私だけなので、うるさい!と言う大人がいないんだもの」かくして、幼い佳祐さんは、ビートルズ漬けになったのである。「否応にもビートルズを聴かなきゃならないわけですから。あの子も、ビートルズナンバーは、全部歌えるはずですよ」

帰国した彼女は、茅ヶ崎の景観保存のために奔走した。茅ヶ崎の海岸に建つマンションの建設に反対して住民の署名を集め、高さを低くすることに成功した。茅ヶ崎の海を愛するその気持ちと、彼女がいちばん好きだと言う桑田さんの楽曲は『真夏の果実』だという。

砂に書いた名前消して
波はどこに帰るのか
こんな夜は涙見せずに
また逢えると言って欲しい
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(皐月壱拾九日) クラシック  音楽

先日娘の養護学校の先生に誘われて、伊丹でクラシックのコンサートに行ったのを機会に、車でもクラシックを聞くようになった。最近聞いているのは、「The legendary Berlin Concert」である。録音日時は1957年5月26日、今から51年前、というかほぼ私が生まれた頃であり、20世紀を代表するグールドとカラヤンの競演である。グールドは前年にバッハの「ゴルドベルク協奏曲」のレコード・デビューで世界を驚愕させたばかりで、この年、北米出身のピアニストとして世界大戦後初めて旧ソ連で演奏旅行した後、欧州に帰ってベルリンでカラヤンと組んでベートーベンを弾いたのである。

しかし、ジャケットを見ると二人とも若い。特にグールドはまるで少年である。この鮮烈な欧州デビューだったのにいくら探しても録音されたレコードはなかった。その幻の演奏がとうとう世に出たのである。ホールでライブ録音したものでモノラルなのだが、残響がこもってオーケストラが時代がかって聞こえてくる。

ベートーベンのピアノ・コンチェルトはオケの前奏が恐ろしく長い。ベルリンフィルがなにか違うなあ、つまりちょっと古めかしくて、グールドと合わないと思っていたら、ピアノが始まった途端、曲が一変するのである。やはりグレン・グールド、只者ではない。あのカラヤンから完全に主役の座を奪ってしまったのである。第二楽章はピアノのソロで始まり、独壇場であり、第三楽章が終わると万雷の拍手である。これほどの嵐の拍手はクラシックではなかなかお目にかかれないだろう。51年前にベルリンでは奇跡があったのである。そしてその場にある日本人がいた。ソニーの元社長、大賀典雄である。留学中だったらしいが、この演奏をライブで聴けたというのは何とも羨ましい限りである。
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(卯月壱拾五日) 活動中止  音楽

今日の個人的に最大の関心事はサザンの「活動中止」かな。そりゃ1978年にデビューし(私、大学3年でした)30年も経てばくたばってくるし、休みたいと思うのが自然だろう。でも彼らはプロだから気持ちが充足すれば、アゲインという方向もあるかもしれない。私の80年代はまさに彼らの時代とともにあった。90年代自分の趣味が少し変わったのか、ちょっと遠ざかることもあったが、TSUNAMIで再びカムバック!カラオケで彼らの歌を歌わない日は無かったはずである。

しかし、1978年といえば、あのピンクレディーと同期だし、それから今までトップランナーを走り続けてきたこと自体が奇跡である。おじさん、おばさんから若者まで惹きつける彼らの魅力は何だろうか。摩訶不思議な歌詞もあれば、思わず涙がというバラードまで、その幅広い能力がその主因だろうが、たかが歌である。理屈も何も無い、楽しければ、心に響けば、それでいいではないか。そうシングル イズ ベストなのだ。

さあ、今年の夏が最後になるというのであれば気が狂いそうな灼熱の暑さを彼らは日産スタジアムから発散させるのだろう。少しは羽目を外すのもいいんじゃないか。最後の4日間なのだから。

でも数日前の東スポ!お見事でした。「解散か」と打ったのは東スポならだったが、誰も信じていなかったでしょうし。
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(長月廿八日) あじわい  音楽

ネプチューンの原田泰造が缶ビールを飲んで「美味しい」とつぶやくCMを知っているだろうか。アサヒビールが先月下旬から売り出している「アサヒ あじわい」というビールである。新ジャンル市場で既にアサヒは「極旨」と「ぐびなま」を出荷しているが、さらに新ブランドを追加投入したのである。

新ジャンルはビールではないので、当然あの独特な大麦のコクがないのは当たり前である。そこで、アサヒはちょっと偽装っぽい感じもするが、大麦由来原料99.9%使用と銘打ってこの商品を出した。大麦由来原料とは麦芽・大麦・大麦スピリッツで、ホップ使用量0.1%未満ということらしい。新ジャンルで、ゆったりとリラックスして飲むという目的に作られるというのは、ちょっと出来過ぎだと思うが、思わず買いたいと思うのはそのCMで流れているBGMの影響かもしれない。

はっぴいえんどの「風待ろまん」のなかの、というか名曲「風をあつめて」なのだ。松本、細野、大瀧、そして鈴木の息吹が聞こえてくるこの曲を聴いていると、このビールではないが、ゆっくりとリラックスできるのである。今日は久々にあのアルバムを聞いてみようか。そうそう、細野で思い出したが、彼は今話題の映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」の原作者、西岸良平とは立教高校の同級生である。西岸の才能にはかなわないということで、漫画家になるのをあきらめ、音楽への道に進むことになったというのは本当の話である。だから、はっぴいえんどもYMOも西岸のお陰ともいえるのだ。
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