(長月壱拾七日) 日経平均6300万円  経済

仏投資銀行大手ソシエテ・ジェネラルのエコノミストであるディラン・グライス氏は、自身の連載コラム“Popular Delusions(大衆の妄想)”の中で最近、いつもの控えめな語り口から一転、日経平均株価が15年後に6300万円に達する可能性があると予測した。現在の日経平均が9500円前後で、史上最高値を記録した1989年末でさえ4万円の大台に達しなかったことを考えると、相当な飛躍である。

一見すごく明るい話に聞こえる。しかし、少し考えると逆だ。日本経済が破綻するという予想である。株価が6600倍に上昇するという予想結果は荒唐無稽だが、そうなる過程の説明は現状に沿った理論的なものである。現在の政府の国債費は税収を上回る。借り換えも入れた国債の年間発行額はGDP比で6割に及ぶ。人類史上類例のない巨額の借金を日本政府は積み上げているのである。共産党一党独裁の資本主義という社会実験をしている中国を笑えないのだ。

この巨額の国債を、日本は外国に頼らずに賄ってきた。不景気を20年も続けることによって国内の投資需要を押し潰し、家計と法人の貯蓄を政府が国債という形で吸い上げて来た。個人向け国債は全く売れないが、日本の金融機関は軒並み国債保有比率を急上昇させている。家計貯蓄の大半が、銀行経由で国債に投資しているわけである。

しかし、金融機関が国債を買うにも限度がある。資産以上は買えない。郵貯、簡保等の公的金融機関は既に国債比率が高くなりすぎて、これ以上増やせないところまで来た。民間銀行もこの5年で保有を倍増させたので、以降は民間貸し出しを回収しないと国債の追加購入が厳しくなってきた。日本は外国に国債購入を頼ってないからとか、1500兆の貯蓄があるから大丈夫という説もあったが、いずれも成り立たなくなっている。すると、国債を買ってくれるのは日本銀行ぐらいしか残らない。日銀がお札を無限に増刷したお金で買うことになる。その手段が、先日発表した量的緩和である。

国債は消化できても、お札が市中に溢れればハイパーインフレになり、物価も株価も、不動産価格も暴騰する。ただし、物価の上昇率より株価や不動産価格は上がらないので、実質的な価値は下がるという恐ろしい時がやってくるのである。
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(長月壱拾四日) 英国の財政改革  経済

英国の財政赤字はGDP比で11%と過去最大で、G7のなかでは最高水準となっている。これを改善し、5年以内にGDP比で2%付近に引き下げることを目指し、付加価値税等の増税と幅広い歳出削減をすることにした。省庁平均で24%の支出削減のため、公務員数の8%にあたる49万人の人員削減も含まれている。

英国も急速な高齢化が始まっているし、賦課型の年金制度を持っているので、社会保障費が急膨張する事は免れない。そのショックに備えるために身軽な政府にしようということだ。財政再建のための手法はいくつかある。1)経済成長による増収、2)増税による増収、3)財政支出削減による赤字削減が主なものである。英国は3)をメインにし、2)も抱き合わせというものだ。日本から見ればうらやましい改善策だが、不況をもたらすリスクも大きい。IMFの試算に拠れば1%の歳出削減は0.5%のGDP成長率の削減をもたらすから、9%の削減予定の英国は成長率が4.5%も低減しマイナス成長になることに等しい。そして、来る不況脱出のために財政支出を余儀なくされ、赤字を再拡大させる可能性も高いのである。

英国に限らず、赤字政府に必要なものは、「シーリング」のような単純な歳出削減ではなく、「民間に任せたほうが上手く行く分野の民営化」を徹底して歳出削減し、同時に成長分野に豊富な労働力の分配がされる政策を巧みにすることである。英国の計画は総論的には良いものだが、重要なのはその実行の中で、どれだけ経済成長を促せる内容かという各論と実行力にかかっている。高齢化の進む日本の方が深刻なのに。
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(長月壱拾参日) 中国の利上げ  経済

中国人民銀行は19日、金融機関の貸し出しと預金の基準金利(期間1年)を20日から0.25%上げると発表した。利上げは2007年12月以来、2年10カ月ぶりである。今回の利上げの目的はインフレ対策や、人民元切り上げ圧力への対応など容易に推察できる。しかし、中国の利上げと共に、世界中が株安になり、ドルが上昇し、商品価格が下落した。この理由は、大方の意見では「世界の景気が減速するから」としている。

ここまでの事実から見える事は、景気悪化ではなく、投機資金の膨張と縮小だ。現在のアメリカは短期金利がゼロ金利、そして為替はドル安というコンセンサスがある。つまり、アメリカドルで短期借入すれば、利息がゼロかドル安によってマイナス金利傾向で調達できるから、他の株や商品などを購入すれば、コストゼロで大きく儲けられる。つまりドル・キャリートレードが大きく市場を覆っているということであり、これがこの二ヶ月の間に株や商品価格が上昇した大きな要因である。

ここで中国経済が利上げによって減速すれば、商品需要や減少したり株価が利食い売りに押される可能性が出る。こりゃまずい、投資していた資金を引き上げてドル借入を返済した。商品価格・株価が下がり、ドルが上昇したというこの1日の流れとなる。

世界中の経済や投資市場が密接に連動して動いていることをしみじみと感じさせる一連の動きである。基軸通貨のドルがこの一連のキャリートレードのための投機資金の源泉であることを理解すれば、米国の金融緩和姿勢はこの投機がより活発に行われ、今後も市場価格の変動が増幅されるということになる。
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(長月壱拾壱日) バーナンキ講演  経済

FRBのバーナンキ議長が先週末行った講演で議長は「インフレ率は長期的なFRBの2つの責務に最も整合性があるとFOMCが判断している水準に比べ、低過ぎる」と指摘した。「2つの責務」とは物価安定と低失業率の達成である。米国の失業率を引き下げることがFRBで第一の仕事になっている、というバーナンキ氏のメッセージは、これ以上ないほど明確だ。バーナンキ議長が言わなかったことに、さらに強い印象を受けた。4000語近くインフレについて語った部分で、議長は一度もドルの価値について言及しなかったとWSJが伝えている。

バーナンキ議長のこのスピーチを受け、「FRBは追加緩和をする」と市場が受取り、債券、株式市場が好感して上昇。為替も悪材料出尽しと見てドルが買い戻された。発言の中でFRBが重視するインフレ率については、ここ数ヶ月アメリカの消費者物価が下落したため、名目金利からインフレ率を差し引いて求められる実質金利が急上昇してマイナス2%弱から0.8%になった。このため、アメリカと欧州間の実質短期金利が同じ水準になった。ちなみに、実質短期金利が最も高いのは日本で2%近くもある。これを、短期金利はゼロなので下げられないが、量的緩和でデフレからインフレに戻すことで、実質金利を下げようというわけだ。これはインフレターゲットと違うのだろうか。

講演や記者会見の際に、メディアは「何を語ったか」を主にニュースにされる。しかし、「事実」は語られた内容だけでない。語られなかったことがあることも「事実」だ。語られなかったこととは、言いたくないことか、考えていないことだ。語ったことと、語らなかった事を両方考えれば、その人がどんな考えか見えることがある。WSJの記事はは話したことの他に、話さなかった事として米ドルについて語らなかったと着目した。FRBは財務省と並んでドルの貨幣としての価値に責任があるにもかかわらず、コメントがないということはドル安容認ということであり、この基調は当分続くということだろう。
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(長月七日)付加価値  経済

平均的な企業活動では、生み出された付加価値は、人件費として従業員に(付加価値の75%)、支払利息(4%)として金融機関に、賃料(10%)として不動産業者等に、租税公課(4%)として政府・地方政府に、営業純益(7%)として配分される。

付加価値の4分の3もが人件費なので、日本で雇用を生むことが、日本経済にとって重要だということが理解できるだろう。その付加価値を製造業と非製造業に分けると、平成20年では製造業が73.7兆円、非造業が190.5兆円で7割強を占めている。

人件費をみると、製造業は2000年には67.8兆円支払っていたものが59.3兆円まで減る一方で、非製造業は134.6兆円が138兆円に増えている。製造業には男性単身者が、非製造業には女性単身者の入職が多いので、この総人件費の増減の変化を色濃く受けて、可処分の所得の男女逆転に繋がっているというわけである。特にサービス業は、人と人のつながりを要するゆえに代替が利かないことが多く、付加価値率が高い。

一方で、半導体のエルピーダのような会社はライバルも同じものを量産しており幾らでも代替が利くので競争優位性を持てずに価格競争に陥りやすく、付加価値獲得を長期間維持することができない。だから人件費を削った後でも利益が出ないので、次は税金を減らせという大合唱となるのである。

日本経済全体で考えた場合に、「競争優位性があり、付加価値も多く雇用を増やしている主力産業」と「競争優位性が無く、付加価値が激しく増減し、雇用を減らす小数派産業」のどちらを手助けして伸ばせば良いか。

やはり前者ではないか。

半導体製造会社を助けるよりも、半導体を使って動かすソフトを作る会社(ゲームでもビジネスソフトでもOSでも良い。すなわちサービス業)を助ける方が良いのではないか。

多くの高齢者を養う必要がある今からの日本には、税収全てを社会保障に使ってもまだ足りない。無駄に減税する余地は無い。経済の本質は「希少資源の配分」である。日本の例なら「社会保障や政府支出に対する日本人の要求が、実際に得られる税収や、支援して増やせる将来の税収の額を上回っている」ということである。

働く人も希少資源であることにもっと目を向ける必要があるのだ。
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(長月六日)外資系企業  経済

当たり前の話だが、日産の大株主は44%を所有する仏ルノー。他の外国人投資家の持分を合わせると65%にもなる。しかも。株主だけでなく、海外生産が7割を超えていることから、従業員も外国人が圧倒的に多い。そして現地調達比率が93%もあることから、部品等の関連会社との取引も外国が主となっている。これは日本企業か、外資系企業かと問われれば、外資というほうが相応しいだろう。

日産の語源は、創業当時の持株会社が日本産業からだが、実態は既に日本産業ではないのだ。日本企業といえるのは「本社登記を日本でしている」といった派生的な定義でしかない。

世界の投資資金の中で日本人の持つ割合は約一割しかないのだから、世界の投資家が日本株を保有する比率が高まってもおかしくはない。しかし重要視したいのは、その企業が日本でどれだけの付加価値を産んでいるかということである。

日本で生まれた付加価値の中から、従業員を雇う人件費が生み出され、設備投資・研究開発する経費も生まれ、部品を購入して納入企業を潤わせることも出来る。

外資ということが嫌われるのは、「利益を本国送金して日本には残らないから」という理由からだが、利益は売上げのせいぜい一割程度で、付加価値は売上げの半分近くある企業が多い。つまり、日本で営業する100%外資企業のほうが、利益を本国送金しても、海外生産の多い日本出身企業よりも多大な恩恵を日本経済に与えているということである。

日本出身の企業が世界で活躍しているニュースは、日本人のプライドをくすぐるが、プライドで飯は食えない。足元の事実を見る必要があるのではないか。
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(長月壱日 朔)アジアの成長  経済

IMFによると2010年の世界経済は成長が加速し、4.8%と5%近い高成長になるという。4.8%という数字は、日本にあてはめてみれば過去20年来ない高成長であり、日本に住む私たちにとってはちょっとぴんと来ない数字だ。ただ、先進国全体の成長率は2.7%、日米欧はそれぞれ2.6%、1.7%、2.8%なので世界全体の成長率から大きく離されている。今回目立つのはアジアNIES諸国が7.8%、新興国が7.1%と、目を疑うような高成長率であることである。

新興国は2008年の不況前の数字を抜き、NIESは実に10年ぶりの高水準の成長率である。日米欧以外は超がつく好景気なのだ。IMFの作っている世界地図を見ると面白い。今年の経済成長率の幅で色分けしているが、今年の経済成長率が3%以下の国は少なく、日米欧以外の国は片手で数えるほどという事実をもっと知るべきである。
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