被災地で思ったこと
今年になってから約半年かけて計画してきた「東日本大震災復興支援コンサートツアー」から帰ってきました。全てのスケジュールを無事に終えホッとしています。
1年3か月たち、大津波に破壊された街は、瓦礫が撤去されたものの、建物の基礎の部分が痛々しく、見渡す限りいまだに悲惨な光景です。その中をひたすら走る大型トラック。またそんな何もない中で、仮設の商店街での営業が始まっていたり、ビニールハウスで居酒屋さんが開店したり、少しずつ復興への兆しが感じられました。高台にある小中学校の校庭には所狭しと仮設住宅が建てられていて、たくさんの方々がそこで肩を寄せ合って励ましながら生活されていました。大変な生活を目の当たりにしましたが、皆さん一様に元気で前向きで笑顔でいらっしゃったことに驚きましたが、ホッとした瞬間でもありました。
大震災の5か月前、僕は大船渡市でリサイタルをしました。その時に聴きに来てくださっていた方が、今回の復興支援コンサートがあることを知り、駆け付けて下さいました。「私は、あの大津波で家を流され、今は近所の仮設で暮らしています。2年前に斉藤さんの演奏を聴いていて、今回大船渡にコンサートに来られるということを聞いて楽しみにしていました。実は震災後、音楽を聴く心の余裕なんて全くなくて、今回、震災後初めてコンサートに行く気になったんです。」
そういう言葉を聞くと、震災で受けた心の傷はまだまだ癒えていないのだなぁ…と思いました。それでも、今回こうやってまた演奏を聴いてくださり、しかも、終始ニコニコ笑顔で聴いて下さって、手が真っ赤になるほど拍手して下さって、こちらが泣きそうになりました。
今回のツアーのために制作したCDを出会った方全てにプレゼントしました。音楽は人の心を癒すだけでなく、励まし、そして人と人をつなげていく…そんな力を持っていることを改めて知りました。
今年は可能性があれば秋にも被災地を訪れたいと思っています。来年からは年に1回になるかもしれないし、2年に1回になるかもしれないけど、継続して、被災地の方々とつながっていこうと思っています。それが自分にできる復興支援の形のような気がしています。
今回のツアー中もたくさんの方から励ましや応援のメッセージを頂きました。とても嬉しく心強く感じました。ありがとうございました。


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