書店で「モチベーション・リーダーシップ−組織を率いるための30の原則」という本を買った。
この中で「5つの影響力でメンバーを動かす」と言うページから抜粋しつつ解説する。
<人を動かす5つの力>
ビジョンを描き、その実現のために様々な矛盾を統合することがリーダーの役割であり使命である。そして自らの責任において決断を下し、成果に向けて組織を導く。その際、リーダーにとって不可欠なものが「影響力の発揮」である。
リーダーシップとは突き詰めるとメンバーとの相互作用である。リーダーを震源地とする相互作用を組織内につくり出せなければ、リーダーシップは発揮できない。
ビジョン実現のための戦略を描き、その実現のプロセスで直面する様々な対立事項を統合して、メンバーから望ましい行動を引き出していく。リーダーのこのような活動は、人々に一定の影響力を発揮しなければ成立しない。
では、いったいリーダーの影響力の源泉にはどのようなものがあるのか。ここではリーダーが発揮すべき影響力の5つの源泉について解説する。
■影響力の源泉@「専門性」
私たちは、ある分野の専門家の助言や指導を素直に聞き入れる。
プロゴルファーにゴルフのスイングを教わるときに、反論する人はいないだろう。また、医者からの指示は積極的に受け入れ、処方された粟を何の疑いを抱くこともなく飲んでいる。これらはプロゴルファーや医者というある分野の「専門性」に対して、私たちが信頼を置いているからだ。
このように考えると、リーダーが人を動かす場合にも、「自分たちを取り巻く環境に精通している」「当該業務の権威である」「メンバー以上に経験が豊富である」などの、メンバーから見た「専門的信頼」が影響力発揮の前提となることが分かる。
すべての領域でメンバーを上回る専門性を身につけようとすることはナンセンスだが、何らかの専門性を身につける必要がある。人は、自分が認める分野で高い能力や豊富な経験をもったリーダーから影響を受け、その指示を受け入れて、自らの思考や行動を変える。
【自然保護の中での専門性は、多種多様な自然保護問題に対処してきた専門性だと考えられる。一種の生き物だけ相手にしているような人は、豊富な経験をもったリーダーとは言えないだろう】
■影響力の源泉A「人間性」
私たちは、人間的に魅力のある人からの指示を受け入れる傾向がある。では、私たちはどのような相手に人間的魅力を感じるのだろうか。
人間的魅力を形成する要因は大きく分けて四つある。
第一に「身体的魅力」。顔立ちや表情、髪型から服装やスタイルに至るまで、私たちは外見的な魅力によって相手に好意を抱く傾向がある。
第二に「態度の類似性」。これはある特定の事象に対する「賛成」や「反対」という態度が自分と似ている人に共感を覚えるという傾向を指す。巨人ファン同士が仲良くなる、喫煙者同士が親密度を増すなどがこれにあたる。
第三は「相手からのポジティブな評価」である。自分のことを認めて、高く評価してくれる相手に人間的魅力を感じて、その人を好きになるというのは自然な感情である。
第四は「空間的近接」。耳慣れない言葉だが、要するに「身近な存在」というように解釈してよいだろう。人はよく顔を合わせる(接触頻度が高い)人や同郷の人に親近感を覚え、人間的魅力を感じる傾向があるものだ。「専門性」に欠けるリーダーは、「人間性」という影響力を手に入れるために、自らを磨き続けなければならない。
【人間性は、最も重要な点だと考える。ポジティブな評価ができる人、自分のことを認めて、高く評価してくれる相手に人間的魅力を感じるものである。部下を高く評価できない人を選んではならない】
■影響力の源泉B「返報性」
私たちは恩義を感じている人に対して、どうにかしてその相手に報いたいという心情を抱く。いわゆる「借りを返したい」「期待に応えたい」という心理のことだ。
暑いなか、遠方から何度も足を運んでくれたセールスバーソンから何か買ってあげたいと思った経験は、誰もがもっているだろう。また、「親孝行をしたい」という気持ちも、両親に対する返報性の心理がその根源にある。相手のために一生懸命に尽力するリーダー、親身になって相談に来るリーダーは、相手に対して影響力を発揮する。
仮に、あなたが「専門性」や「人間性」に自信がなくても、「返報性」を追求することで、人々への影響力を高めることは十分に可能なのである。
【相手のために一生懸命に尽力するリーダー、親身になって相談に来るリーダーは、相手に対して影響力を発揮する。正にその通りで、相談してもネガティブな答えや助言しかしないリーダを選ぶべきではない】
■影響力の源泉C「一貫性」
私たちはリーダーの一貫した態度に大きな影響を受ける。ビジョンが揺るぎなく、実現に向けた戦略も明快で、戦略とリンクした決断を下し、その決断と日常の言動が一致していれば、私たちは、その姿勢に強く感化され、自らの行動を変化させる傾向がある。「地域密着で顧客との距離を縮める」「顧客重視の姿勢でクレームを撲滅する」「技術力重視で市場を制覇する」「実力主義で人材の抜擢を行う」「全国展開で事業の裾野を広げる」など、自らが掲げたスローガンに対して徹頭徹尾ブレることのないリーダーの姿勢は、人々を強く巻き込む力を発揮するものだ。
リーダーに一貫性があると、メンバーはリーダーに相談する前から、「きっとこの件に関して、リーダーは○○と答えるだろう」という予測がつく。そして、自分自身の言動をリーダーが導く方向に同化させていくのだ。たとえ、リーダーに他の要素が欠けていたとしても、人は「一貫性」のあるリーダーに強く惹かれる。
【自然保護に一貫性は、必要不可欠である。毎回、言うことが変わるような人は、選んではならない】
■影響力の源泉D「恐怖心」
私たちは、恐れを抱いている人には素直に従う傾向がある。マキヤベリは『君主論』のなかで次のように述べている。「君主は恐れられるのと愛されるのとどちらがよいか。もちろん両方を兼ね備えているのが望ましい。しかしどちらか一つでやっていくとすれば愛されるよりも恐れられるほうが安全だ」と。「恐怖心」というものに逆らえない人間の弱さを現実的な目で見極めた、15世紀の思想家の含蓄ある記述である。
たしかに、リーダーシップを発揮するには、ある程度人々から畏怖の念を抱いてもらう必要がある。これは、恐怖政治を意味するのではなく、信賞必罰を迷いなく実行でさる「怖さ」「厳しさ」ととらえたい。「怖さ」「厳しさ」をもったリーダーは組織において強い影響力を発揮し、成果に向けて組織を統合する力をもつ。
ただし、使い方には十分注意すべきだ。「メンバーの力量が低いことや経験が浅いこと」「メンバーの自立心=プロ意識が低いこと」、そして「リーダー自身が誰よりも自分に対する厳しさをもっていること」、これらの条件が満たされたとき、マキヤベリの言うように、「恐怖心」は、ときに他の四要素「専門性」「人間性」「返報性」「一貫性」を凌駕する圧倒的な影響力を発揮することがある。
【この恐怖心は、決裁権限を持っているぞ!と言う恐怖心ではない】
リーダーシップを発揮することを影響力を発揮することだと考えれば、リーダーはここで述べた「専門性」「人間性」「返報性」「一貫性」「恐怖心」のうちのいくつかをもたなければならない。さらに、一流のリーダーを目指すのであれば、これらのすべてを高いレベルで保有すべきだ。そのために、自分に備わっている影響力の強弱を分析して、自分に足りない影響力の源泉を手に入れるよう努めなければならない。
人々にとって「すごい」と思える能力や経験をもっているリーダーが、「すてき」な人間的魅力に満ち、「ありがたい」と思えるほど親身で、どんなときでも「プレない」一貫性によって、状況によっては「怖い」「厳しい」と感じるような態度を示す。そんなスーパーなリーダーは間違いなく大きな成果を生み出す。なぜなら、このようなリーダーには、誰もが自分のエネルギーを最大限に捧げようとするからである。
貴方の団体には、この5つを兼ね備えたリーダーがいますか?

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