憲法改正に関連して環境に関する記述の議論で度々浮上すると言われる「ドイツ連邦共和国基本法」の改正は、東西ドイツの統一時期と95年の改正と分けて見ることができます。1990年10月の東西ドイツ統一を機に、「ドイツ連邦共和国基本法」に環境保全の重要性と将来世代に健全な環境を引き渡すべき国の責務を盛り込もうという声が連邦議会や政党の間で起こりました。憲法の環境保護規定は、現在の世代から
将来の世代へ環境保護の重要性を確実に伝えて行くことになりました。環境保護を国会の目的の一つとして基本法に盛り込む機運が急速に醸成されていきました。92年から94年にかけて6回の憲法改正が行われ、まず連邦と州の各レベルにおける自然的生活基盤の保護を総合的に規定し、様々な責任について定めることになりました。94年10月の憲法改正の際、国民の自然的な生活基盤を保護すべき国の責務として「第20条a項」に盛り込まれました。「現在の世代と将来の世代への責任を理解し、国は、憲法秩序の枠内で立法機関を通して、また、法律と、正義、行政と司法の原則に基づいて、生命の基となる自然を保全しなければならない。」とされ「生命の基となる自然を保全しなければならない」とされ、自然の保全が国家の責任とされました。その後、95年以降の改正のなかで注目されるものとしては、2002年の第20条a条への動物保護規定の挿入が挙げられます。第20条a条[自然的な生活基盤]「将来の世代への責任をも理解し、国は、法律と正義に基づく立法によって、また、行政と司法の決定により、生命の基となる自然と動物を保全しなければならない。これらすべては憲法秩序の枠内で行うものとする。」
動物保護条項は、家畜を含む動物愛護運動の高まりを反映するものです。第20条a条は人権条項でないとはいえ、日本でも自然の権利が主張されるなか、先進的な規定として注目に値します。

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