2021/6/17

オペラ感想その2  音楽

オペラ「死の都」感想、その2

このオペラで一番有名なアリアは「私に残された幸せは」だ。テノールとソプラノのデュエット曲だ。

この曲はヨナス・カウフマンのCD「君はわが心のすべて〜華麗なるドイツオペレッタヒット・ソングの世界〜」の中で一番好きだ。



クラシカジャパンで放送した「ヨナス・カウフマンが辿る『ドイツオペレッタの黄金時代』」という番組があった。動画はその一場面。この番組は録画してるので、時々見る。

ドキュメンタリーでは、コルンゴルト20歳の時の作と言っていた。オペラは23歳で作ったという。天才だった。

Wikipediaによると、
「幼い頃から作曲の才能を示し、モーツァルトと同じ名前と相まって「モーツァルトの再来」と呼ばれる程の神童ぶりであった」

だがユダヤ人だったため、ナチスの迫害から逃れてアメリカに亡命。ハリウッドで映画音楽の作曲家として活躍、アカデミー作曲賞を2度受賞したという。

しかし、戦後欧州に戻っても映画音楽は一段下と見られ、評価されなかったそうだ。彼は失意のうちに亡くなる。

1970年代になって彼の音楽が再評価されるようになったそうだ(映画音楽のジョン・ウィリアムスも影響を受けたとのこと)。

この動画は2014年のもの。カウフマンさん、若々しいね。

オペラ「死の都」は2019年。太って、なんかくたびれた中年の雰囲気。だから、この「妻の死」を受け入れられず、彷徨う男には合ってる。

カーテンコールの時は「疲れ果てた」という表情だった。盛大な拍手にようやく表情が緩んで、共演のペーターセンさんを笑顔で抱き上げてた。

Wikipediaによれば

「テノール歌手は、2時間あまりほぼずっと舞台に留まり、ワーグナーの楽劇のような、巨大なオーケストラを圧倒しながら歌い続けるだけの体力が要求される。しかし、《死の都》のパウルはそれに加えて高音域を要求される」

ソプラノもかなりの技量と体力を要する。

しかも、あの演出だから、主役二人は超人的だ。

かなりエロい場面、歌詞も多いと思うが、ベタついてなくてアスリートっぽいサッパリ感がある。ペーターセンさんの個性によるのだろう。

しかしなぁ、古い作品だから仕方ないけど、パウルは暴力的だ。その上に自分勝手。でもマリエッタが負けてないから、そこはよかったけど。が、妄想の中でひどい目に会うのはデスデモーナと同じ。

(とはいえパウロの妄想の世界なので、あのマリエッタの言葉もパウロ自身のものだ。もう一つの自分の声だ。この混乱を経て彼は妻の死を受け入れる)。

ところで他の共演者たち、家政婦役も友人役も温かい人柄が感じられて、この混乱するパウルの世界の中で、ホッとする存在だった。

(追記:このお二人、服が茶系とグレイ系だ。落ち着いた色。女性のコートが茶系スカートがグレイ系、男性は上下が逆。考えてあると思った)

マリエッタの遊び仲間、みんな若々しかった。女性二人は最初ダンサーかと思った。ポールをよじ登ったりする。歌い出したのでびっくりした。

このオペラの舞台装置がとても凝っていて、家の間取りをどう組み立てているのか不思議だった。そこに設えてあるインテリアはモダンでスッキリしてセンスが抜群。

それと、衣装がすてき。

マリエッタの黒地に花柄のワンピースにジーンズのジャケット、その上に真っ赤にハーフコート。この真っ赤なコートが印象的。赤はビビッドな色だから「生」そのものだ。

マリエッタがこの赤コートで白い壁の家の前を自転車で通るところは映画のようだ。

(映画といえば、パウルの家の壁には「気狂いピエロ」や「欲望」のポスターが貼ってあった)

たくさん出てくる女の子たちのベージュの花柄のワンピースにサーモンピンクのカーディガンもとても可憐。男の子たちのセーラー襟の緑灰色のセーターも可愛い。

マリエッタの遊び仲間の女性、ゴールドラメのピッタリしたスリットの入ったワンピースもすてき。これを見事に着こなしてた。もう一人は青のシフォンの上に光る青の模様が散らしてあって、ボブスリープにローウエストのギャザー・ミニスカート。これもきれいな着こなしだった。

このお二人が第一幕で着ていたブルーグレイのコート、赤のチェックコートもおしゃれだった、特に赤のチェックコートは可愛かった。

本当に、美術系もセンスが良い。もちろん照明も効果的だった。

目に入る全てにおいてセンスが良すぎて、音楽が素晴らしすぎて、オーケストラも歌手も超一流過ぎて、平伏するしかない。総合芸術としてのオペラが成熟しているんだと思った。

洗練、成熟した文化の厚みよ。

なお、このオペラの原作はジョルジュ・ローデンバック「死都ブリュージュ」で、岩波文庫で手軽に読めるそうだ。
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