ロボコップ
原題:ROBOCOP
1987年Orion Pictures作品
ジャンル:SF
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
脚本:エドワード・ニューマイヤー、マイケル・マイナー
出演:ピーター・ウェラー、ナンシー・アレン、カートウッド・スミス
SFヴァイオレンスの金字塔・・・
舞台は近未来のデトロイト。犯罪の蔓延する街では、新しく、安全な都市計画が予定されていて、そのためには犯罪を撲滅していかなければならない。デトロイト警察はオムニ社(OCP)という企業に経営権を持たれていて、この会社はその他にも軍事や宇宙開発など、一見無益に見られがちな事業に手を出してきて、成功し急成長した企業である。
そのOCPで今、犯罪撲滅のため、新しい技術が開発されようとしていた。それが24時間不眠不休で働く事が出来、強力な重火器が装備及び扱う事を可能とする警察官を誕生させるという計画だったのである。そして開発されたのがED-209であった。
しかしそのED-209には欠陥がある事が判明する。社内会議で発表されたED-209がなんと、武装を装って実験に協力したOCP社員を射殺してしまったのである。
社長は激怒し、このような事態を想定し、密かに計画が進んでいた二次グループに新たなる警察官ロボの開発にGOサインを出す。それがロボコップである。ただこのロボットは人間の感性と機械の運動能力を融合させた技術のため、実験台となる人物が必要となるのである。
時を同じくして、転属された初日にある犯罪者グループを追跡、逮捕しようとして無残にも射殺された一人の優秀な警官マーフィがいた。
マーフィは手術の甲斐もなく死亡してしまい、ロボコップとして生まれ変わることとなる。
ロボコップの活躍により、デトロイトの犯罪は徐々に徐々に撲滅されていくのである。
かつての相棒ルイスやマーフィを殺害した犯人グループの一人に出会う事により、抹消されたはずの人間だった頃の思い出が蘇り、やがてはその犯人グループに復讐するのであった。
劇場で観た時、私は確かまだ12か13歳(年がばれてしまう)で、当然アメリカでは親同伴でないと観れないレーティングだったと思う。母親と一緒に観に行ったのを憶えているが、その母も結構この映画を気に入っていたように記憶する。
正直ショッキングだったよ。なにせその当時は今まで観た作品の中で一番ヴァイオレントな描写をしていたのだから。ただ、ショックはショックだったのですがこんなに面白い映画が世の中あるものだ、というショックだったのであり、決してヴァイオレンス描写がどうこうというわけではなかった。
残虐な描写はむしろ、映画でこんな過激な描写が許されてるんだ!!と感心していた方である。
実写映画でロボットを取り扱った作品でこれほど成功を収めた(と思う)作品もめったにない。当時はあのED-209が動いているのを観て、すごいな〜なんて思ったりしたが今観てみるとどうって事ない。というか、ちゃっちい動きしてるじゃないか。確かに当時の技術ではこれが限界であったのだが、それにしてもストップモーションアニメがこれほど荒いと感じてしまった事にショックを憶える。到底今の特撮技術には追いつけないという事なのだろう。
それでもやはり、ED-209の動きの細かさには感心させられる。普通に観ていては気づかないような、細かいパーツまでちゃんと動いているのである。分かり易い例を挙げれば最初にED-209が出てくるシーンで部屋へ歩行して入り会議テーブルの手前で止まると足の間接にとりついてるモーターみたいな部品がくるくる回るのである。
でもやはりED-209といえばラストでロボコップに吹き飛ばされたあと下半身だけ残って足の指(?)がぴくぴくと痙攣するシーンでしょう。
ヴァイオレンス描写は、例えば冒頭マーフィが射殺されるシーンで最初に右手をショットガンで撃たれるのだが、右手首から先が破裂し吹っ飛ぶ描写がちゃんとカメラに撮られている。その後、苦しみもがきながら立ちあがり右腕を押さえるのだがその右腕の吹き飛ばされた場所から血がビュッっと飛んだりとなかなか凝ったというか過激な場面がある。
そんな中で私の一番のお気に入りは、ラストで犯人の男の首めがけてロボコップが手の中に格納してあるコンピュータ接続用ソケットを突き刺し、それを抜くと肉片とともに血を吹き飛ばす場面。そのあと犯人が首を押さえながらのたうちまわる場面で、首から噴水のように大量の血がビュッ、ビュッ、ビュッと噴出す。バイオレンスでありながら、特殊効果としてもなかなかの出来である。
その他にもとにかく「ロボコップ」にはこうした残酷なバイオレンス描写がごまかしなく映像として表現されている場面が多いのである。
この作品で本格的にハリウッドに進出した(ハリウッドデビュー作は「グレート・ウォリアーズ」で今作は二作目になる)ポール・ヴァーホーヴェンだが、最初にこの脚本を映画会社から渡され、監督を依頼されたときは断固として拒否したらしい。SF映画であるという事もそうだが、安易なタイトルが連想させる安っぽいイメージのため、自分が作りたい作品とはかけ離れていると語っている。しかしその後、この映画のメガホンをとってくれる監督は見つからず、再度映画会社から連絡があった時、仕方なく脚本を読んでみることにした。細部では納得のいかない場面が多かったが、作品の中に人間の根本にある感情や醜さも少なからず描かれていた事から、「これならいける」と思ったらしい。
その後は「トータル・リコール」「氷の微笑」「ショーガール」「スターシップ・トゥルーパーズ」と数々のヒット作を発表していったのは皆さんご存知の通りです。これらの作品を観た人は分かると思うが、ヴァーホーヴェン監督はヴァイオレンス色が強く、なおかつ、ある意味人間の根本や本能について思い悩んでしまいそうな映画を好んでいる。
この「ロボコップ」のシリーズは私の中では個人的に「ロボコップ2」で完結している。それ以降の「3」やテレビシリーズはもはや、別物である。それらは単にロボコップの仮面を被っただけの駄作である。はっきりいって、つまらない。一度も観たことがないのであれば、まあ一回くらいは観てもいいが、多分後悔すると思う。
これから「ロボコップ」を観るのであれば、「1」と「2」だけで充分である。
私としてはヴァーホーヴェン監督にメガホンをとってもらい、なおかつ脚本もじっくりと時間をかけ、正真正銘の「ロボコップ3」を作って欲しいものである。
ちなみに「ロボコップ」のオリジナル劇場予告編には「ターミネーター」のサントラが利用されていたりする。