TRICK-トリック-劇場版
2002年東宝、テレビ朝日、オフィスクレッシェンド作品
ジャンル:ミステリィ
監督:堤幸彦
脚本:蒔田光治
出演:仲間由紀恵、阿部寛、生瀬勝久、前原一輝、野際陽子
何かあったらって、携帯通じないじゃろが〜!
ニセモノの何が悪いんじゃ〜!
お前、やっぱりいかさまやないかッ!
テレビドラマの映画化に望むもの・・・
人によって意見は分かれるだろうけど、私の考えではこうだ。
そもそもテレビドラマが映画化された際に当然それを劇場まで観にくる客層の大半はそのドラマのファンのはずです。
ではそのドラマのファンが望むものとは何か?何を期待して劇場版を観にくるのか?これは人によって意見が分かれるところだろうが、私としてはテレビ版と同じ物を映画版にも望みます。
これはハリウッドでも日本でも言える事ですが、どうもテレビドラマの映画化というやつは製作側が何かを勘違いしたような創り方をする傾向がある。
当然、映画という事で普段のテレビドラマとは比べ物にならない程の予算があると想像される。で、やはり予算があればいろいろとやりたくなるというもの。脚本もテレビ版よりも贅沢な事ができるということで金のかかりそうな話になるだろう。CGなど普段では使えそうにない技術も使いたくなるだろう。もしくは海外ロケなどをしたりもするだろう。
しかしそんな事をしたらどうなるでしょうか?
当然普段とはまるで違った世界になってしまうだろう。
そうなるとテレビドラマと同じ世界を期待して観に来た客は当然がっかりするだろう。
現に日本のテレビドラマの映画化は普段では使わないような効果を使ったりするものをみかける。そうすると例えば普段は庶民的な世界を描いているドラマが映画になると壮大なものになってしまったかのような錯覚に陥る。
ハリウッドでは普段のドラマはセットの中で撮影しているシットコムのはずなのに、映画になると予算があるからと、じゃあ主人公達家族を海外旅行させてそこで騒動を起こさそうという事になってしまう。
でも私はそれって違うと思う。余程脚本が面白くない限りそれは失敗する可能性が大である。
そんな中、雑誌インタビューで「普段のテレビどおり、普通にはじまって普通に終わる」物語を約束した堤監督。
えー、本当にその言葉通りの脚本でした。
そのおかげで雑誌などの批評は酷いものでした。「テレビの枠を出ていない」とか「二時間ドラマにして放映するべき内容」とか・・・
しかしね・・・
それでいいではないですか。
ま、「トリック」だから許される贅沢でしょうねこれは・・・
この「トリック」というシリーズには科学では説明できない面白さがあると思う。どこがどう面白いのか、自分でも把握しきれていないのですが、多分私のツボをつく要素が沢山含まれているのだろう。
その証拠に私は今まで日本のテレビドラマのビデオやDVDというものは一度も購入した事がありませんでした。このドラマ以外に「ケイゾク」と「踊る大捜査線」も結構はまったのですがそれらの作品はすべてダビングという形で所有していたりする。
しかし「トリック」は日本のテレビドラマとしては初めて全巻揃えてしまった作品です。しかも「トリック2」は「トリック1」も収納できるBOXで・・・当然この劇場版もDVD購入しましたし、さらに第三シーズンとその後のスペシャルのDVDも当然揃えています。更に劇場版2も発売されたら購入予定。
「ケイゾク」と「踊る大捜査線」も映画化されましたが、個人的にはイマイチだったりする。普段ではできないような豪華な事をしているだけでなく脚本もイマイチだし、「ケイゾク」に至っては後半から意味分からん状態でした。「ケイゾク」はそもそもテレビドラマ版も前半は「トリック」と似たのりの推理ものだったので面白かったのに後半から変なサイコスリラーものな方向に走ってしまい、あげく映画版では霊界と繋がったりしている意味不明な作品になってしまった。
きっと堤監督はこの失敗を教訓にして今回の「トリック」はきちっとした世界観を貫いたのだろう。あくまで私の想像ですが。
さて「トリック劇場版」ですが、本当に文字どおり普段通りはじまり、そして最後も普段通り終わります。
ただやはり劇場版という事で普段より予算があるのか、それとも単にシリーズとして常に進化していきたいのか、「トリック」第一シーズンで各エピソードの冒頭にあった紙芝居みたいな部分がちょっと贅沢に特殊効果使っていました。それとお馴染みのオープニング曲「Mystic Antique」とオープニングの例の卵のシークエンスが少しアレンジされていて結構格好良いと思った。
それ以外にもシリーズでお馴染みの場面が台詞面、映像面でオリジナルの雰囲気を壊すことなく正統進化されています。
しかしやはり普段テレビでは予算的に無理だろうと思うような映像を使っていたりもする。どんな映像かはネタバレに繋がってしまうのでここには書きませんが、とにかく最後は凄い事になります。しかし、それはテレビドラマの雰囲気を不思議と全然壊していない。むしろアホさに磨きをかけてくれた無駄に派手な映像効果だったりする。「トリック」らしい派手さといえばいいでしょうか。
ようは無駄に贅沢な予算の使い方をしているのでしょう。
そもそもこのシリーズには沢山の無駄がある。意味のなさない人名ギャグや言葉の聞き間違いギャグ、思わせぶりだが結局意味のない場面、無駄な間、無駄な台詞などなどが無駄に詰め込まれている。
無駄なドラマだ。
なので劇場にもっていくのは無駄。と批評家に思わせた事自体、このシリーズらしくていいし、ひょっとしたら堤監督はそれを狙っていたのかも知れないとさえ思えてくる。
唯一の贅沢といえば、できる限りシリーズで定番のネタをびっしりと詰め込んだところ。これだけでも劇場に観に来た甲斐があるというものです。
私のような盲目的「トリック」ファンにとっては「トリック」の新作エピソードがもう一話観れるというだけで実は嬉しかったりするのです。
本当にファンのために作ったという感じです。テレビ版でお馴染みのキーワードも多数登場し、それに気付くことができればそれが直接笑いのネタに繋がっているので楽しい。逆をいえばテレビ版のキーワードを知らないと笑いをその分だけ損してしまう。ちょっとネタバレかどうか微妙だが「来さ村」という単語も出てくる。ちなみに劇場で観た時「来さ村」という単語に反応して笑っていたのは私と相方以外ほとんどいなかった。
ま、もともとテレビ版でも分かりづらいギャグが多く散らばっているのでいいかとは思うが、シリーズ全部観たことある人なら「来さ村」にすぐに反応してもらいたい。しかもこれ出てくるの「トリック2」の最終話だよ。一番記憶に新しいはずなのに・・・「椎名桔平」のほうが強烈に印象に残ってしまっているのだろうか・・・
とにかく「トリック」シリーズを愛してやまない人にはオススメの映画です。抱腹絶倒の二時間でした。言い過ぎか?
「トリック」シリーズのDVDといえば物凄く充実した特典映像が特徴ですが(しかも結構無駄な企画が多い)、中でも「やむなく落としたカット集」が目玉。「トリック1」では特典映像として収録されて、「トリック2」ではDVD自体を「超完全版」と銘打って本編に復活させたかたちで収録されています。第三シーズンは「腸完全版」(誤変換ではないですよ)としてテレビ放映版と腸完全版の本編2枚組みとして、劇場版と2時間スペシャル版は特典映像としてそれぞれ楽しめます。
さて、「トリック劇場版」のもう一つの注目すべき点はパンフレットです。
これ物凄く凝っています。やはり「トリック」はこうでなくてはという位充実しています。これ全国の書店で書籍として出版しても私なら買っていると思う。
まず最初のページは、まあどんな映画にもありそうな映画の場面写真や劇中の台詞や言葉などのキーワードが羅列されています。しかしそこは「トリック」です。「巨根」だの「貧乳」だの「カメーッ!」だの「まぐわい」だの・・・あまりストーリーには直接重要でないキーワードばっかり。
で、それに圧倒されつつ次のページを開いてみると「劇場公開記念スペシャル〜哲!この部屋」という企画ページが!こ、これは・・・あの上田が毎回欠かさずみている番組の形式をとった座談会か?出席者は山田奈緒子、上田次郎、矢部謙三、山田里見。同じページにこの四人の登場人物紹介も載ってます。
その次のページは、登場人物紹介ページ。レギュラー陣をはじめ劇場版の登場人物の簡単な紹介がされています。
更に次のページにいきましょう。このページでは多くの映画パンフレット同様あらすじが紹介されています。
さ、そして次のページは「TRICK TRIVIA」。「トリック」シリーズの用語辞典のようなものになっています。小道具やフレーズやネタなどのキーワードが満載。しかもページの端には縦書きで「ネタバレご注意」と表記されていてその下には恐らく平蔵さん(トリック2の第一話に登場した言葉の丁寧な渡辺いっけい)が書いたものと思われる注意文がやはり過剰に丁寧な言葉使いで載っている。
その次のページは両側が折込になっていて外側には劇中の冒頭で上田が科技大出版の編集者に見せられる糸節村の文献になっていて、内側が「糸節村殺人観光案内」と書かれていて糸節村の地図と糸節村のあれこれが書かれている。
劇中では出てこないのでネタバレにはならないと思うので書きますが、この地図結構笑えます。糸節村に隣接している村の名前も書かれているのですが、先ほどの「来さ村」以外にも「毬蹴弱村」「情事張村」「素端半村」と明記されています。分かります?マイケル・ジャクソン、ジョージ・ハリソン、スタン・ハンセン・・・
さて次に進みますと、また「TRICK TRIVIA」が載っています。ちなみにこれ結構細かいデータまで載っています。例えば書道教室で子供達が書いた言葉集とか奈緒子の意味不明なフレーズとか、各登場人物が言い間違えたり聞き間違えてしまった言葉とか、上田の学んだ事一覧とか、里見の「お気持ち」価格一覧とか・・・
で、次のページは堤監督へのインタビュー。「ギャグ担当」「村」「映画化」「トリックの今後」等々のキーワードに沿った裏話などを読めます。
その次のページは仲間由紀恵や阿部寛を始めとする出演者のプロフィールが紹介。
とまあ、これだけでも満腹なのですが最後の最後に最大の企画が!
なんと「トリスポ」まで収録されています!
なんの事?と思われる方もいるとは思いますが、これは「トリック2」のDVD各巻にその巻のエピソードに沿った新聞形式の記事が同梱されていたのですが、それの劇場版向けの記事がなんとパンフレットに隠されていたとは・・・
ここまで私の好みにしてくれるとは・・・本当、トリック好きで良かった。
それと私の好きなナイロン100℃という演劇ユニットのみのすけと三宅弘城も出演していたし、本当至れり尽くせりでした。