2006/2/3

『運命のつくりかた』  映画

昨日に続き、アテネフランセ文化センターで『フランス現代映画への視線−「横浜シネマテーク」所蔵作品から』という特集上映で、今日は『運命のつくりかた』(2002年、121分、監督/アルノー&ジャン=マリー・ラリユー、出演/マチュー・アマルリック、エレーヌ・フィリエール、ピエール・ペレ)を鑑賞。
冒頭からどんどんあっけにとられる方向に物語が逸脱していき展開するほとんどトンデモ恋愛映画の怪作だった。
ラリユー兄弟監督の作品は先日、日仏学院で見た『描くべきか愛を交わすべきか』もエリック・ロメールのようなタッチでスワッピング(夫婦交換)を描いたというトンデモ映画だったが、この『運命のつくりかた』はそれ以上の暴走ぶりだった。
もちろん、これはありきたりなパターン通りの恋愛ものにうんざりしたシネフィル(映画狂)の作り手が、どんどん物語があらぬ方向に逸脱して展開していったらどうなるかと確信犯的につくっているものなのだろう。そうした感覚は分かるけれども、注目するべきなのはシネフィル的な、ある種の自家撞着を起こしているような作品だとは思うんだけれども、かといって、いかにも過去の映画へオマージュを捧げたようなシーンにポイントが置かれているわけではないように思えるところではないだろうか。いかにもシネフィルっぽいミュージカルシーンも出てくるのだけれども、それよりも山のクライミングとか、オス鳥とメス鳥の愛の交歓(まるで自然科学映画みたいな)とか、そういうシーンが魅力的なのだ。つまり、シネフィルっぽい過去の映画へのオマージュのシーンよりも自然そのものをとらえたシーンに逸脱した瞬間が面白みになるようにつくっているのではないだろうか。ここに、この物語をどんどん逸脱させる映画のユニークさがあるのだろう。
ラストの雪が舞うクレジットタイトルのシーンも、ダグラス・サーク監督の『悲しみは空の彼方に』の冒頭のクレジットタイトルのシーンを思い起こさせるものなのだけれども、いかにも人工的な作り物の雪という感じでどことなくいかがわしさを感じさせるのだ。
それにしても、マチュー・アマルリックはこのトンデモ恋愛映画がなんとも適役で魅力的に思える。煮え切らないダメ男をやらせると輝く役者なのだろうか。
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2006/2/3

斉藤久志の『三年身籠る』評  映画

『映画芸術』誌最新号に斉藤久志監督が『三年身籠る』について書いているのだけど、『三年身籠る』は映画だけでなく小説版もあるのだが、小説版のほうに大島弓子の『バナナブレッドのプディング』で主人公が見る夢のエピソード(生まれるのが恐いと言っている胎児に、生まれてみてご覧なさい、素晴らしいことが待っているからといったことを言うというエピソード)を思わせるエピソードがあるそうなのだけれども、たしかに『三年身籠る』はちょっと大島弓子的な作品だと思う。作品の雰囲気が大島弓子的ということではなく、やろうとしていることが大島弓子的。雰囲気が大島弓子風というものはこれまでもあった気がするけれども、雰囲気ではなくやろうとしていること自体が大島弓子的というのはけっこうありそうでなかったものかもしれない。
ただ映画では小説版とは変更してあるようで、どのように変わっているかも斉藤久志が書いているのだけれども、小説と映画との違いを考えさせるもので興味深い。(僕は小説のほうは読んでいなくて映画しか見ていないのだけれども。)
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2006/2/3

『ラクダと針の穴』(その2)  映画

昨日、見たフランス映画『ラクダと針の穴』で興味をひくのは、ヒロインの兄のような、家(親)が金持ちなので働かなくてよく、人生を無為に過している人間が出てきたりしたところだろう。
そういうブルジョアだからといって人間的に悪いことをしているわけでもない。ブルジョアなので逆にいつまでも結婚もしなくて、ただ無為に過している。
貧しくてハングリーという人間や、退廃したブルジョアの人間とか、あるいは貧しい人間とブルジョアの人間の葛藤のドラマとか、そういう人間ドラマは多くの映画が描いてきたけれども、ブルジョアで、かといって特別、悪人というわけでもなくてただ無為に生きている人間というのは意外と描かれてこなかったのかもしれない。日本で言うと働かないニートでただぶらぶらしているみたいな。そういう人間の話はあまり誰も見たくないからだろう。金持ちの人間が働かなくてぶらぶらしている姿よりも貧しい人間が働いていつか世間を見返してやると頑張っている姿のほうが見る人は共感するのではないだろうか。
でも実はぶらぶらと無為に生きている人間にもドラマがあるはずなのだ。

『ラクダと針の穴』はそういうのを変に自虐的になったりもせずに客観性を保って描いていると思う。
これはたしかにアルノー・デプレシャン以降のフランス映画として注目できるものだろう。
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