2009/2/25

アカデミー外国語映画賞、『情況』3月号のことなど  イスラエルとパレスチナ、中東

アカデミー外国語映画賞を『おくりびと』が受賞したことは日本人としては喜ぶべきことなのかもしれないが(しかし、ひねくれ者の僕は、オリンピックで日本人選手が金メダルをとった時と同じで、日本人が何かしたということでやたらと騒ぐのを見るとそんなにそればっかり騒がなくても・・と言いたくもなるんだけど・笑)、イスラエル映画の『バシールとワルツを』がこの時期だからこそ、とったほうが良かったかなという気もする。というのは、個人的には見てないんだけど、どうもイスラエルが行なっている戦争を批判的に描いた作品らしいので、そうした映画がアカデミー外国語映画賞を受賞することは、アメリカやイスラエルの人達が、イスラエルが現在、している戦争がいったい、なんであるのかを改めて考える契機になったかもしれないと思うので・・。
まあ、見てないので、見て自分がどういう感想を持つかは分からないけどね・・。

いや、もしかしたら、見ても分からないかもしれないが・・。というのは、何日か前の毎日新聞で、イスラエルがガザで行なっていることについて、広河隆一氏とジブ・コーレン氏の見解が対比的に掲載されていて、あまりに考えが180度、違うというのか、ジブ・コーレン氏の考えがシオニストそのものという感じだったので、ちょっと驚いてしまったので。『1000の言葉よりも/報道写真家ジブ・コーレン』という映画を見た限りではこの人、ここまでシオニストそのものの考え方をする人だとは思わなかった。

ところで、『情況』3月号で「ガザ虐殺・敗走するイスラエル」という特集がされている。
内容は

「ガザ戦争後の世界 ー敗退を続けるイスラエル」高橋正則
「ガザ虐殺後とオバマ政権」中野達彦
「パレスチナのゲルニカーガザ 屋根のない収容所」槙渡
「村上春樹氏への公開書簡」パレスチナの平和を考える会
「書評 共存の芽を摘むために ーエリック・アザン著『占領ノート』」吉沢樹

まあ、この雑誌には、イスラエルの政策の擁護者の佐藤優氏の連載も載っていたりするので買うのはちょっとシャクだったんですが(笑)、ざっとパレスチナ関連のところを読んだ限りでは、とにかくいま、考えなければならない諸問題について提起している、考えさせられる特集かと思ったので、紹介する次第です。
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2009/2/25

『ポーラX』  映画

ロードショー公開当時、僕が書いたこの映画の感想。

「『ポーラX』は確かに希薄な映画かもしれない。だがそうした希薄感、空気のようなものがむしろこの映画の独特の魅力だと思える。この作品は表面的には熱い恋愛映画のように思えるが実は全然そういうものではないのかもしれない。ここで描かれているのは実は恋愛ではないのかもしれない。この映画ではやたらと近親相姦的な関係性を主軸にした言葉が交わされ、それを信じる、信じないといった言葉が交わされるが、そうした言葉が交わされれば交わされる程、何やら世界が空転していく。むしろこれは、恋愛の、恋愛に関する言葉の空転性を描いた作品なのではないかと思える。その意味でこの映画で描かれる人間関係は恋愛というよりもむしろ新興宗教的な関係性に近いような気がする。男1人、女2人の関係が全く三角関係的に展開しないあたりも新興宗教っぽいのでは。ある意味では古典的とも思えるような物語をなぞりながら、底部にそうした現代的な関係性をとらえようとするかのような領域にカラックスが踏み出したと思えることにやはり僕は興味を覚える。」

付け加えることはない。
(つーか、自分でも「うわー、ひどい文章だなあ・・」と思うので、付け加えようがないと言うのか・笑)

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2009/2/24

『チェンジリング』  映画

ロン・ハワード製作。先日、見たアポロ計画のドキュメンタリー『ザ・ムーン』もなかなか良かったし、ロン・ハワードはプロデューサーとしてなかなかいい仕事をしている・・と書き出すと、またまたkusukusuさんはひねくれちゃって、イーストウッドは凄い!とかは言わなくて、ロン・ハワードがどうのなんて言っちゃって・・と言われてしまいそうだし、まあ、実際にその通りで僕は単にひねくれているだけなんだけど(笑)、しかし、クリント・イーストウッドとは本当に神々しい偉大な映画監督なのか?と言うと、いや、そうではなく、むしろ、本当にただただ面白いB級映画の傑作を職人的に撮り続ける監督なのだ・・という風に僕としては言いたいように思う。たとえば、黒澤明やキューブリックのように、ただただ面白いB級映画を撮っていた監督だったはずが、いつの間にか、「巨匠」になってしまったという監督とは違うところこそがイーストウッドの真価なのではないか・・という風に言いたいのだ。もちろん、『許されざる者』や『ミスティック・リバー』を撮ってしまったイーストウッドは十二分に「巨匠」であるのだろう。しかし、本当に凄いのは、『許されざる者』を撮った後も、『ミスティック・リバー』を撮った後も、これで「巨匠」になったわいとふんぞりかえって、後は余生は田舎で過ごす・・なんて道は選ばずに、まったくペースを落とさずに次々といろいろな題材の作品を職人監督として量産し続けている・・ということなのではないのだろうか。
これは、要するに、この人は単に「名誉欲」で映画を撮っているというわけではないということなのではないか? 世界最高峰の映画監督として世間の人々から賞賛されたいという「名誉欲」だけで撮っている監督ならば、『許されざる者』を撮れば、あるいは『ミスティック・リバー』を撮れば、ああ、俺も名実ともに「巨匠」になったとばかりに、後はゆっくりと余生を過ごそうと考えそうなものだけど、これだけ次々と、それも「巨匠」になった監督が自分が確立した作風を模倣しているというのともちょっと違って、何か、新たな題材のものにチャレンジしていっているというのはやはり「名誉欲」といったものでは説明がつかないものを感じるのであり、早い話が、この人はなんだかんだ言っても本当に映画を撮ることが好きで好きでたまらないんだろうなあ、だから次々と新たな題材に取り組み、映画を撮ることしか興味がないような、正真正銘の映画バカなんだろうなあ・・とでも思うしかないような気がするのである。(追記のコメントあり。)
だから、クリント・イーストウッドは実は普通のB級映画の監督なんだ、決して特別な監督ではないんだ・・と書くと、いや、それはあなたがイーストウッドの凄さが分かっていないんだと言われてしまうかもしれないし、まあ、実際に分かっていないのかもしれないけど、だがしかし同時に、僕はイーストウッドを「普通のB級映画の監督」と書いたけれども、現在のところ、こういう「普通のB級映画の監督」と言えるような映画監督はもしかしたら世界でこの人しかいないのかもしれないとも思っているということを書いておこうと思う。実際、先に書いた通り、黒澤明やキューブリックにしろ、これほど才能がある監督にしろ、やはりどこかで「巨匠」になってしまって、むしろ、ただただ面白いB級映画を撮り続けるということは出来なくなってしまうのであって、イーストウッドのように、『許されざる者』なり『ミスティック・リバー』なりを撮って「巨匠」になったと思われる後も、でもやっぱりただただ面白いB級映画みたいな作品を量産し続けている・・という方が、めったにないという意味ではたしかに「特異」であるとは言えるのかもしれないとも思うのだ。(だから、僕がここで「普通」であると言っているのは、しかし「普通」であることこそが「特異」であるということなのだ。)
まあ、今の日本映画の監督で比べる人がいるとするならば、『女咲かせます』や『ニワトリはハダシだ』を撮る森崎東ではないかと僕は思うのだけど、でも森崎だってこれほどコンスタントに撮り続けることはやっぱり出来なくなっているのであって、イーストウッドの新作がコンスタントに作られ公開されているのはやっぱり驚くべきことではあるのだと思う。

あ、『チェンジリング』という作品そのものについて何も書いてないので付け加えておくと、これはミステリーとしてもかなり高度なものかとは思うが、本当に凄いのは謎がとけてからの展開だ・・。ロン・ハワード製作ということで連想したのだけど、『身代金』でちょっと面白いと思ったのは、事件が解決したと思えた後にさらに展開があったことだけど、この『チェンジリング』はそのさらに上を行く。事件が解決したかと思えた後の展開に、ああ、まさにこれこそが映画の面白さなのだ、映画ってこういうこと(いわゆるミステリーの謎ときの面白さとは異なるストーリー展開の面白さ)が可能だったんだと思う。まあ、これは実際にあった出来事を題材にしたものなので実際の通りだと言われるとそうなのかもしれないんだけど、でもたとえばミステリー小説だったら、こういうストーリーにはならないと思う。ここには、小説とは異なる、映画ならではのストーリー構成と思われるものがたしかにあるように思えるのだ。
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2009/2/19

村上春樹スピーチ全文和訳(再投稿)  イスラエルとパレスチナ、中東

*以下のブログの方が全文和訳を掲載してくれています。

しあわせのかたち:「村上春樹スピーチ全文和訳」
http://d.hatena.ne.jp/sho_ta/20090218/1234913290

*なお、この記事は一度、投稿して、そこに僕がこのスピーチの件についてどう思うのかということを書いたのですが(これだけこの話題を取り上げているからには自分の考えも正直に表明しておいたほうがいいのではないかと思って)、あまりにも乱雑な文章になってしまったかと思い、まずかったかなと思って、その記事は消して再投稿することにしました。もし読んで不快に思われた人がいたならごめんなさい。この件については、自分の考えは何も書かないほうがいいようですね・・。
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2009/2/19

『キャラメル』  映画

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初めて見るレバノン映画。これが面白い。素晴らしい。嬉しくなってしまうような、女性たちの群像ものの傑作。
レバノンというとどうしたって内戦とか戦争とかを思い浮かべてしまうのだけど、そういうことについては一切、描かれない。ベイルートのエステサロンで働く女性たちの、恋愛のことで悩んだりしている、生き生きとした日常が描かれているだけだ。でも、だからこそ、これこそ、イスラエルで公開してイスラエルの人達にも見てほしいもの・・。

かなり「説明していない」映画なので、いったい、このシーンの描写はどういうことなのだろう・・と最初、分からないところも多々、ある。だんだん展開していって、ああ・・と分かってくるのだけど。そうしたつくりが洗練されている。
たとえば、このエステサロンで働いている女性たちにはイスラム教徒の人とキリスト教徒の人とがいて、そういうことでも結婚に対する家族の考え方の違いなどもあってそれがそれぞれの女性の悩み方の違いにも影響しているらしい・・ということが中盤まで見ていって、だんだん分かって来て、ああ、これはいろいろな宗教の人達が暮らしているレバノンの姿を描いたものなんだなあと気がつくわけだけど、そういうことも途中までは分からない。エステサロンで働く女性たちの姿を描いたところだけでは、素晴らしいことにこの女性たちはそんな宗教が異なることなんてまったく気にもせずに友情で結ばれているようなので、普通の仲のいい女性たちの日常の描写としか見えないからだ。だから、そうか、これは異なる宗教の人の話がごっちゃになっている群像ものなのかと途中で気がついた時、そういうことに途中までは気がつかないぐらい、そんな宗教の違いなんて気にもせずに女性たち同士の間では友情が結ばれているのだ・・ということが描かれていることに気がついて、それこそ、素晴らしいことじゃないかと思ったのだ。
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2009/2/19

僕は残念ながら行けないのだが・・  映画

*僕は残念ながら仕事があり行けないのですが、以下で土本典昭監督のテレビ作品の上映があるそうです。関心がある方は行かれてみては・・。

第1回恵比寿映像祭

○『少年は何を殺したのか 日本の教育1976』(50分) 
ディレクター 土本典昭
カメラマン  大津幸四郎 一之瀬正史
アシスタント 小池征人 熊谷博子
プロデューサー 牛山純一
                    他
東京12チャンネル 生きている人間旅行
芸術祭奨励賞受賞

2月28日(土) 
16時〜上映 
17時〜トーク 「追悼・土本典昭 テレビドキュメンタリーと作家性」                    
熊谷博子(映像ジャーナリスト) 濱崎好治(川崎市市民ミュージアム学芸員)

東京都写真美術館 1Fホール 恵比寿ガーデンプレイス内 
http://www.syabi.com/index.shtml 03-3280-0099
入場料 1000円
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2009/2/16

村上春樹さん、エルサレム賞記念講演でガザ攻撃を批判  イスラエルとパレスチナ、中東

(ニュース)
村上春樹さん、エルサレム賞記念講演でガザ攻撃を批判
2009年2月16日8時27分

15日、エルサレムで開かれたエルサレム賞の授賞式で、市長から同賞を贈られる村上春樹さん=平田写す

 【エルサレム=平田篤央】イスラエル最高の文学賞、エルサレム賞が15日、作家の村上春樹さん(60)に贈られた。エルサレムで開かれた授賞式の記念講演で、村上さんはイスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に触れ、人間を壊れやすい卵に例えたうえで「私は卵の側に立つ」と述べ、軍事力に訴えるやり方を批判した。

 ガザ攻撃では1300人以上が死亡し、大半が一般市民で、子どもや女性も多かった。このため日本国内で市民団体などが「イスラエルの政策を擁護することになる」として賞の返上を求めていた。

 村上さんは、授賞式への出席について迷ったと述べ、エルサレムに来たのは「メッセージを伝えるためだ」と説明。体制を壁に、個人を卵に例えて、「高い壁に挟まれ、壁にぶつかって壊れる卵」を思い浮かべた時、「どんなに壁が正しく、どんなに卵が間違っていても、私は卵の側に立つ」と強調した。

 また「壁は私たちを守ってくれると思われるが、私たちを殺し、また他人を冷淡に効率よく殺す理由にもなる」と述べた。イスラエルが進めるパレスチナとの分離壁の建設を意識した発言とみられる。

 村上さんの「海辺のカフカ」「ノルウェイの森」など複数の作品はヘブライ語に翻訳され、イスラエルでもベストセラーになった。

 エルサレム賞は63年に始まり、「社会における個人の自由」に貢献した文学者に隔年で贈られる。受賞者には、英国の哲学者バートランド・ラッセル、アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘス、チェコの作家ミラン・クンデラ各氏ら、著名な名前が並ぶ。欧米言語以外の作家の受賞は初めて。

 ただ中東紛争のただ中にある国の文学賞だけに、政治的論争と無縁ではない。01年には記念講演でスーザン・ソンタグ氏が、03年の受賞者アーサー・ミラー氏は授賞式に出席する代わりにビデオスピーチで、それぞれイスラエルのパレスチナ政策を批判した。
http://www.asahi.com/culture/update/0216/TKY200902160022.html

村上氏、イスラエル授賞式で講演 「制度が組織的に人を殺す」
(中國新聞)

 15日、「エルサレム賞」授賞式で講演する作家の村上春樹さん=エルサレム(共同)  【エルサレム16日共同=長谷川健司】作家の村上春樹さん(60)が15日夜、イスラエルの文学賞「エルサレム賞」の授賞式で記念講演し、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ攻撃に言及した上で「わたしたちを守るはずの制度が組織的に人を殺すことがある」と述べ、一人一人の力で国家や組織の暴走を防ぐよう訴えた。

 村上さんは、エルサレムで開かれた授賞式に出席することが「圧倒的な軍事力を使う(イスラエルの)政策を支持する印象を与えかねない」と熟慮した末、「欠席して何も言わないより話すことを選んだ」と明らかにし「メッセージを伝えることを許してほしい」と切り出した。

 村上さんは、小説を書く時「高くて固い壁と、それにぶつかって壊れる卵」を常に心に留めており、「わたしは常に卵の側に立つ」と表明。壁とは「制度」の例えだと説明し「制度は自己増殖してわたしたちを殺すようになったり、わたしたちに他人を冷酷かつ効果的、組織的に殺させる」と警告した。

 これに対し、「卵」は壊れやすい殻に包まれたような個々人の精神を意味するとし、個性を大切にすることで「制度がわたしたちを利用するのを許してはならない」と語った。

 講演は英語で約15分間行われ、約700人の聴衆が大きな拍手を送った。一方で「政治的な内容で不愉快。イスラエルに賞をもらいに来て批判するのはおかしい」(中年男性)という声も聞かれた。
(初版:2月16日9時32分)
http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2009021601000122_Main.html

2月16日10時6分更新
村上春樹さんの講演要旨 
 【エルサレム16日共同】作家の村上春樹さんが15日行った「エルサレム賞」授賞式の記念講演の要旨は次の通り。

 一、イスラエルの(パレスチナ自治区)ガザ攻撃では多くの非武装市民を含む1000人以上が命を落とした。受賞に来ることで、圧倒的な軍事力を使う政策を支持する印象を与えかねないと思ったが、欠席して何も言わないより話すことを選んだ。

 一、わたしが小説を書くとき常に心に留めているのは、高くて固い壁と、それにぶつかって壊れる卵のことだ。どちらが正しいか歴史が決めるにしても、わたしは常に卵の側に立つ。壁の側に立つ小説家に何の価値があるだろうか。

 一、高い壁とは戦車だったりロケット弾、白リン弾だったりする。卵は非武装の民間人で、押しつぶされ、撃たれる。

 一、さらに深い意味がある。わたしたち一人一人は卵であり、壊れやすい殻に入った独自の精神を持ち、壁に直面している。壁の名前は、制度である。制度はわたしたちを守るはずのものだが、時に自己増殖してわたしたちを殺し、わたしたちに他者を冷酷かつ効果的、組織的に殺させる。

 一、壁はあまりに高く、強大に見えてわたしたちは希望を失いがちだ。しかし、わたしたち一人一人は、制度にはない、生きた精神を持っている。制度がわたしたちを利用し、増殖するのを許してはならない。制度がわたしたちをつくったのでなく、わたしたちが制度をつくったのだ。

(初版:2月16日10時6分)
http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2009021601000180_Detail.html


*この件に対するブログ上などでの論争を村上氏なりに熟考された上での発言と思われます。
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2009/2/10

『ベンジャミン・バトン−数奇な人生−』  映画

凄い。本当にこの最上のラブストーリーと言える映画をフィンチャーが撮ったのか!?

まあ、原作のフィッツジェラルドの短編小説、読んでいないわけだが、この長い年月をこえたラブロマンスものっていうのはやっぱり『グレート・ギャッビー』のフィッツジェラルドの世界なんだなあ・・と思っていたら、後でパンフレットを読んだら、これ、原作の短編ではヒロインの名前はデイジーではないんですね。それを脚色のエリック・ロスがデイジーという『グレート・ギャッビー』のヒロインの名前にしたのは『グレート・ギャッビー』を強く意識していたのでしょうか。『グレート・ギャッビー』の映画化作品『華麗なるギャッビー』(1974年、ジャック・クレイトン監督)ではミア・ファローがデイジーを演じていて、そのほうがエキセントリックなイメージはあるので、今度の、ケイト・ブランシェットのデイジーは上手いけど、ちょっとイメージ的には違うのかな?というのはあるんだけど、ただケイト・ブランシェットはさすがに品のようなものはありますね。

昨年の『コッポラの胡蝶の夢』と比較する見方もあるようだけど、その『コッポラの胡蝶の夢』の編集マンであるウォルター・マーチの『映画の瞬き ー映像編集という仕事』(フィルムアート社)には次のようにある。
「ここで強調したかったのは、そのときの優先順位である。泣く泣くどれかを諦めなければならない状況に追い込まれたら、感情よりもストーリーを先に諦めることだ。ストーリーより先にリズムを、リズムより先に視線を、視線より先に平面性を、平面性より先に空間の継続性を諦めるようにしよう。」
ここで書かれている、映像編集において何を優先させるかという話は、まあ、ハリウッドの、映画の極意みたいなものなんだろうか・・。
『セブン』の映画監督がこのような作品を撮るようになっていくとは思っていなかったけど、フィンチャーはこうした極意のような領域に達しつつあるのか?

しかし、印象的な雪の降らせ方。予算とか、規模が違う映画作品だけど、瀬田なつき監督の『彼方からの手紙』の雪の降らせ方とともに最近、見た映画では印象に残る雪の降らせ方です。

デート帰りのケイト・ブランシェットのバレエシーンも絶品だけど、戦争の描き方もさりげなく凄いのでは。第一次世界大戦が終わったことを喜ぶ人達のシーンや、真珠湾攻撃のシーン。あんな風に「真珠湾」を描いたものがこれまであったのだろうか?
ティルダ・スウィントンが演じる人妻が英国スパイの妻というところにも、ちょっと昨年、見たロメールの『三重スパイ』を連想したりもしたんだけど、戦争への意識を感じます。
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2009/2/6

『ハチはなぜ大量死したのか』  公害・薬害・環境・医療問題

『ハチはなぜ大量死したのか』ローワン・ジェイコブセン著、文芸春秋

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本の帯にある通り、これは「現代版『沈黙の春』」と言うべき警告の書である。
映画『ハプニング』でも取り上げられた、働きバチがすべて失踪、コロニーが全滅する蜂群崩壊症候群の原因をいろいろと考察していっている。
いろいろと説はあるのだが、僕個人は、遺伝子組み換え技術の作物が出て来たことが影響しているのではないか?と疑っている。遺伝子組み換え食品は安全だ・・と言う専門家もいるようだけど(というか、そういうことになっているから実際に実用化されているわけだと思うのだけど)その安全だという根拠はなんなのか? 単にその危険性が現在の科学では明らかにされていないだけだ・・ということかもしれないのに、なぜ安全だと断言できてしまうのか? 
また仮に人間にとっては安全なものだったとしても、他の生物にとってはどうなのか? 仮に遺伝子組み換え作物の影響で、蜂が大量死している・・ということが事実であったならば、自然界の生態系を破壊しているものかもしれないわけで、そうすると結局は人間にも響いてくることになるのではないかと思う。仮に人間自身にとって安全な食品だというのが事実だったとしても、生態系を破壊していくのなら結局は人間にとっても危機的なことなのではないか?
蜂が大量死していることは本当に人類に対する警告であるのかもしれない。

そして、遺伝子組み換え技術というのがさらに恐ろしいのは、そうした危険性があったということがこの先、明らかになったとしても、すぐに回収してしまえばいい・・ということも出来ないものである点だ。たとえば、これが何か、化学物質で毒性があることが分かったならば、その化学物質を含んでいる製品をつくることを中止してすべて市場から回収すればいいわけだけど、遺伝子組み換えの生物はすでにどんどん繁栄していってしまっているのであり、回収することなど、不可能なのだ。
人類は、またひとつ、やっかいなことを抱え込んでしまったものだ・・とため息が出てくる・・。
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2009/2/5

『空とコムローイ』  映画

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淡々としているようでいて、かなり作為的なドキュメンタリー。
もちろんドキュメンタリーとは言え、編集、構成など作為でつくられているものであることは映画作品の前提であり、そのこと自体が悪いなどとは思わないのだけれども、ただナレーションの説明がちょっと多い気がするというのか、このシーンはこういう意味・・みたいな作り手の解釈をあれこれ言うものだから(ちなみに監督、撮影、編集とともにナレーターも全部、ひとりでやっている作品。その点は敬服するのだが。)、見る側が映像にひたって考える前に、作り手側が答えを提示してしまう・・という感じになってしまっているような気がした。内容的には興味を持てるものだっただけに、こうした作り方で微妙に乗れなかったのは残念。
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2009/2/2

木村文洋監督作品『へばの』  映画

冒頭、六ヶ所村の風景にゆっくりとオーバーラップで絵画のような映像が浮かび上がってくる。一瞬、なんだろう・・と思ってよく見てみると、なんとヒロイン、西山真来の裸の映像なのだった。

これは、不器用で粗忽な映画である。木村文洋という新人監督は、たとえば、『彼方からの手紙』の瀬田なつき監督のような、「天才」ではないのかもしれない。
「物語」というよりも、僕達がここにいる・・ということの「痛み」をゆっくりと確認している・・なんか、そんな感じだ。
これこそが映画だ・・とは思わないけれども、ああ、映画ってこういうのもありだよな・・と思う。

男には、セックスする「性欲」と、子供を妊娠して出産する願望の「欲望」がストレートに結びついているわけではない。
女にとっては両者は直結している。
だから、男は恐くなって、ウジウジと逃げているのだろうか。

このウジウジした男を演じているのが吉岡睦雄だ。そう、田尻裕司やいまおかしんじのピンク映画で見て来たウジウジとした男を演じさせるとうまい俳優。吉岡には、田尻、いまおかに、新たに木村文洋というユニークな監督の作品世界を支える存在というキャリアが加わった。

それにしても、この『へばの』という映画は、何か、得体が知れないところがある。
それは、たとえば安全地帯の歌がえんえんと流れたりするところだろう。
たとえば田尻裕司監督の傑作『OLの愛汁 ラブジュース』で椎名林檎の歌が流れる時、ああ・・と観客はある種の感慨に浸ることが出来る。
しかし、2009年に公開される映画で、安全地帯の歌が流れるのを聴く時、どのような感慨に浸ればいいというのだろうか・・。観客はポカンとするしかないのではないか・・。なんで安全地帯なのだ? いったい、どういうつもりで安全地帯の歌を持って来たのだ?
そもそも六ヶ所村核燃料処理施設と男女のウジウジとした恋愛の話・・というのを結びつけてこのような映画を撮ってしまったところからして得体が知れないことをやろうとしている監督だと思うのだけど、安全地帯の歌を持ってくる・・というあたりにも得体の知れなさを感じる。
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2009/2/1

最近、コメントを寄せたブログの記事2つ  時事問題

最近、ついコメントを寄せたブログの記事、2つを参考にリンク。

関係性
「“安さだけで買うな”“無駄遣いも必要”と言われても」
http://green.ap.teacup.com/passionnante/166.html

*個人的に関心がある有機農業の話題だったので。

琥珀色の戯言
村上春樹さんの「エルサレム賞」受賞について・付記
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20090129

*個人的には村上春樹にはほとんど興味ないんだけど、パレスチナ問題につながる話題だったので。
というか、パレスチナ問題について載せてるあちこちのブログがいつの間にか、村上春樹についての議論になっているんでびっくりした(笑)。

僕個人の考えは、このブログの記事にコメントした通り、mojimojiさんのような主張をすることは言論の自由だし、これを村上春樹氏への恫喝だとするのは見当違いの批判なのではないか?と思うというもの。

ただし、これもコメントで書いている通り、mojimojiさんの主張の内容自体には必ずしも僕は賛同しているわけではないが。
村上春樹がすんなり賞をもらったら、村上春樹の小説をイスラエル製品ボイコットの運動の対象の中に加える・・というのは、やっぱりちょっと筋違いの運動ではないかと思う。そもそも村上春樹の小説は日本の出版社で売っているのであって、イスラエル製品ではないし、イスラエルが戦争する資金になっているわけではないし。イスラエル製品ボイコット運動というのは、イスラエルが戦争するための資金を少しでも減らして行こうという目的でやっているものなのであって、それに結びつかないものまで加えてもそれでは意味がない。
もし運動の主旨を変えて、イスラエル寄りの気に入らないやつの本を買わないようにしよう・・ということなら、村上春樹より佐藤優の本を買うことをボイコットする運動でもしたほうがまだしも意義があるのではないだろうか・・。

・・と書いている僕は、まあ、結局のところ、本当に村上春樹という人についてはまったくなーんの興味もないのだ・・と自分でもちょっと呆れますが・・。
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