2009/9/29

『リミッツ・オブ・コントロール』  映画

端的に言って、僕個人としては、これなら『ブロークン・フラワーズ』のほうがずっといい映画だと思えるんだけど・・。
いまさら、こんないかにもシネフィルですっていうようなフィルムノワールを作られてもなんだかなぁ・・という感じで、ジャームッシュはやっぱりシネフィルなんだなぁとは改めて思ってしまったのだが・・(いや、ジャームッシュがシネフィルなのは当然ではあるんだけど・・)。

この作品で参考にしているという『ポイント・ブランク』はたしかに変な映画だった。うわー、世の中には変な映画があるなぁとたしかに思うものだった。
だが、『リミッツ・オブ・コントロール』に乗れないのは、最初から、そういう変なものを目指して作っているものだからではないだろうか?
つまり、なんだか、よく分からないけど、変な映画を作ってしまった・・という「変な映画」(作り手自身にとってもなぜそういう作品を作ったのか、分からないような、わけがわからないものなんだけど面白いという「変な映画」としか言いようがないような「変な映画」)ではなくて、ジャームッシュはあまりに聡明なので・・、こうやると変な味わいの映画になると分かってて、分かりながら作った「変な映画」だという気がしてしまうところが結局、乗れないわけなのではないだろうか・・。
また、詩的な言葉を散りばめたりしていて、そういうところもなんだか的確すぎて、ああ、ジャームッシュっていう監督は本当に映画について考え抜いていて、分かっているだなぁと思うわけだけど、今回、目指しているのは混乱したフィルムノワールの「変な映画」であったはずなのであるからそれだとなんか、違うなぁという気がしてきてしまったわけなのだ。そういう「変な映画」というのは、本当に作り手自身がもっともっと混乱してしまって、それでも映画を作ろうとする情熱にかられて、完成するはずがないような映画を完成させてしまった時にうまれるものなのではないかと思うので・・、作り手が変な味わいを分かってて作った「変な映画」というのは本質的な意味で混乱していないのではないだろうか?
それなら、ジャームッシュのような監督は『ブロークン・フラワーズ』のような作品を目指したほうがいいのではないかと僕は思ったのだが・・。
もしかしたら、僕の判断が根本的に間違っているのかもしれないが・・。

かなり否定的なことを書いているようだけど、実はこの映画、見ている時はものすごく面白かった。久々にうわー、「変な映画」だなぁと思い、傑作かもしれないと思っていたんだけど・・。でも見終わって、うーん、でも本当に脳天からぶっとぶような、全くいまだかつて見た事がないような「変な映画」だったのだろうかと考えてみると・・、なんだか、違うんだよなーという気持ちもどんどん沸いて来てしまって・・。
結局、こういうことをウダウダと書くことになってしまった・・。
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2009/9/23

鎮西尚一監督のピンク映画、新作  映画

新宿国際名画座で『熟女 淫らに乱れて』。 鎮西尚一監督の新作と聞いて、いそいそと見に行く。
鎮西尚一監督がゴダール、というのか、ヌーヴェルヴァーグの映画が好きだというのがよく分かるなあ。海のシーンとかを見ていると。
素晴らしいのは、窓越し、戸越しに人物がやり取りするシーン。窓はあけっぴろげにあけられていて屋内にいる人物と屋外にいる人物が平然と通じ合っていて会話する。まるで長屋みたいだ。今時の日本でそんなことあるのか?と思うかもしれないけど、こうした演出をアルコール中毒や失業、痴呆症の老人の介護といったものと絡ませることによって独特の現代的な人情ものになっているんだな。
痴呆症の老人がいる部屋の襖戸をあけると隣の部屋でパサッと何かが落ちる。あ、これは幽霊(幽界)とのやり取りっていうことか!?
鎮西ワールドを堪能。
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2009/9/21

水俣病大検診、行なわれる  公害・薬害・環境・医療問題

(以下、民医連新聞より引用)
民医連新聞2009年8月3日/1457号

水俣病大検診 9月20〜21日
隠された被害 掘り起こそう
重い症状 まだまだある

 「毎朝四時には、手が痛くて目が覚める。ぎゅっと握ってがまんします」。水俣病公式発見から五三年。不知火(しらぬい)海沿岸には、手足のしびれや麻痺、こむらがえりなどの症状に苦しむ人が多くいます。ところが、自民、公明、民主の各党は七月、被害者の抗議に耳を貸さず、加害企業「チッソ」を救済する「水俣病特措法」を成立させました。「被害者を切り捨てさせない」という患者団体の要請を受け、九月二〇〜二一日に地元の医師らとともに不知火海沿岸大検診(一〇〇〇人規模、二〇会場)を行います。(丸山聡子記者)

樋島(ひのしま)の出張検診で

 水俣市は、三方を山に囲まれ、一方を不知火海に面しています。対岸に天草諸島も望める美しい海に、チッソは三六年間、有毒な有機水銀を流し続けました。
 熊本県民医連は七月五日、天草諸島の樋島で出張検診を行いました。この島での検診は初めてです。必要な機材を船で運び、にわか診察室を準備しました。
 検診には同県連の医師一四人と看護師一八人、ほか二五人が参加。受診した五七人のうち、五〇人を水俣病と診断しました。
 中学卒業と同時に漁に出たという男性(71)は、手足のしびれやふらつきを訴えます。目を閉じた状態では自分の指を素早く鼻まで持ってくることができず、痛覚針で指や口周辺を突いても、「チクチクする」程度の感覚しかありません。水俣病にみられる運動失調や感覚障害です。
 男性は五〇代のころから、船でつまずくなどの感覚の異常を自覚していました。「三人の子どもがおったけん、水俣病と知れたら結婚させられんち思うて、言われんかったです。みんな結婚したから、申請しようと思うたです」
 「子どもが結婚できない」「魚が売れなくなる」という不安、「補償金目当てのニセ患者」という差別や偏見…。住民の多くに症状があるため、「これが当たり前で、自分が水俣病とは思わなかった」という人も多いのです。
 長年診察してきた協立クリニック(水俣市)院長の高岡滋医師は、樋島で検診を呼びかけてきた住民たちに言いました。「重い症状があることに驚いた。水俣病は国とチッソによって隠され、医学からも見放されてきた。行政が健康調査をしないなかで、ぜひ私たちの検診を受けてほしい。みなさんの苦しみが、なかったものにされてしまう」。
 七〇代の男性は語りました。米のとれない貧しい島で主食はイモと魚だったこと、麦が八割の飯に雑魚を混ぜたものがご馳走で何杯も食べたこと、「魚が売れなくなる。島から水俣病を出すな」と宣伝して歩いたこと、今になって大変なことをしたと頭を下げて回っていること…。「水俣協立病院を信頼しています。検診を受けるようみんなに話します」。

共通診断書を力に

 国は、複数の症状がなければ「水俣病」と認めないなど、認定基準を狭くとらえた一九七七年の「判断基準」に固執し、被害者に背を向けてきました。これに対し、高岡医師や藤野糺(ただし)医師(水俣協立病院名誉院長)、熊本学園大学の原田正純教授らは一万人超を診察し、多様な病像を明らかにしてきました。それに基づいてつくられたのが「共通診断書」です。
 ところが、環境省の原徳寿・環境保健部長は「共通診断書は信用できない」「受診者がうそをついても、見抜けない」と朝日新聞の記事で発言。患者、医師から「被害者を『ニセ患者』のように言う暴言だ」と抗議があがっています。原田、藤野、高岡の三医師は記者会見を開き、発言の撤回と謝罪を求めました。しかし、原部長は七月二五日水俣市で、患者団体に謝罪はしても「発言は撤回しない」と語り、反発が広がっています。
 長年にわたって被害者を切り捨ててきた国の姿勢は変わっていません。共通診断書に基づいた大検診が重要です。
 高岡医師は、「共通診断書は被害の動かぬ証拠。世界的にも水銀汚染が問題になり、私たちのデータは必要とされている。大検診が注目されている」として、検診への支援を呼びかけています。
http://www.min-iren.gr.jp/syuppan/shinbun/2009/1457/1457-01.html
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2009/9/20

祝島が燃えている  原爆・原発問題

*祝島がとんでもなく熱いことになっている!

(ニュース)
中電、8日連続で作業中止  中国新聞 '09/9/20
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 中国電力の上関原発(山口県上関町)建設計画で、海面埋め立てに向けたブイ積み出し作業は19日、計画に反対する上関町祝島島民たちの阻止行動で延期された。延期は10日以降、日曜日の13日、中止となった16日を挟み8日連続。中電は20日も作業を見送る。

 田名埠頭(ふとう)=山口県平生町=では19日も、祝島の漁船など約30隻が中電のブイ運搬用台船の接岸を阻止。中電は、これまでで最も早い午前11時すぎに作業延期を通告した。

 上関原発準備事務所の村田誠総務・広報部長は「これ以上の作業は難しいと判断した。中電社員にも多少の疲れがある」と説明。21日以降の作業予定は、今後協議するとして明言しなかった。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200909200018.html

原発反対派は抗議集会で気勢 中国新聞  '09/9/20
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 山口県上関町への原発建設計画を進める中国電力の海面埋め立てに向けたブイ積み出し作業は19日、反対派の阻止行動で8回目の延期となった。中電がブイを置く田名埠頭(ふとう)=山口県平生町=では、反原発団体などが抗議集会を開き、「埋め立て反対」と気勢を上げた。

 12日に続く2回目の集会には約300人が参加。「上関原発を建てさせない祝島島民の会」の山戸貞夫代表は「阻止行動は、長年無視されてきた島民の怒りの表れ。海は島民の生活の糧であり命だ」と支援を訴えた。

 中電上関原発準備事務所は、埠頭岸壁前に漁船が停泊し、ブイ運搬用のクレーン付き台船が近づけない状態が続く点について、「このままの方法でよいのかを含めて対応を検討する」としている。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200909200019.html


RadioActive
http://radio-active.cocolog-nifty.com/blog/

祝島島民の会blog
http://blog.shimabito.net/

長島の自然を守る会 スナメリ通信
http://green.ap.teacup.com/sunameri/

ミツバチ@staff Blog
http://888earth.net/staffblog/
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2009/9/20

前原国交相が泡瀬沖合埋め立て事業中止表明  公害・薬害・環境・医療問題

*全国紙では扱いが小さいですが、沖縄の新聞では一面トップで報じられているそうです。

(ニュース)
2009年09月18日 沖縄タイムス
新政権 即断に驚き 「泡瀬」中止表明
反対派「大前進」/賛成派「まだ望みある」

 【沖縄】泡瀬沖合埋め立て事業に関して、前原誠司国交相が「1期工事中断、2期は中止」の考えを示した17日、地元の同事業反対派は「政権交代の成果だ」と評価した。一方、事業の賛成派は「結果は予測していたが、まだ望みはある」と事業継続を求めている。

 「泡瀬干潟を守る連絡会」の前川盛治事務局長は「民主党が沖縄政策をまとめた『沖縄ビジョン』にあることが現実になった。中断は予想していたが、政権交代後、こんなに早く決断してくれると思わなかった」と喜ぶ。「(工事の)中止に向けた第一歩であり、大きな前進。控訴審判決が反対派に優位なら中断ではすまなくなる」と語気を強める。

 泡瀬干潟で自然観察を行う市民グループ「泡瀬干潟大好きクラブ」の水野隆夫代表は「(泡瀬の)埋め立てがストップしても大きな損はなく、自然保護の面から見ても、むしろ利点が多い。とてもうれしいニュースだ。公共工事を止める大きな力になるだろう」と評価する。

 一方、中部の振興策の一環として、同事業を支持する「市東部地域の発展を考える会」の當真嗣蒲会長は「政権交代直後の担当大臣による中断表明は極めて残念」と話す。「ただ、『中断』と『中止』を使い分けているので期待が持てる」と指摘。「工事はあくまで手段で目的は事業。今後も政府に理解を求め、2期を含めた事業の推進を求める」と強調する。

 沖縄市東部海浜開発事業推進議員連盟の新里八十秀会長は「ここまで進めてきた事業にこのような判断が下されて残念」と述べ、「沖縄市を含めた中部地区の発展に欠かせない事業に変わりはない。今後も東門市長と相談しながら推進に取り組みたい」と話した。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-09-18-M_1-029-1_001.html
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2009/9/18

原発推進の民主党と脱原発の社民党の溝  原爆・原発問題

*高速道路無料化の政策についての意見の違い(社民党は反対)だけでなく、原発をめぐっても、環境政策で抜本的に民主党と社民党とで違いがあることが鮮明に・・。民主党は原発推進、それによるCO2削減の立場、社民党は原発反対、脱原発の立場。果たして、この溝は埋められるのか?
 下記の記事を見ると、社民党の福島氏は「耐震性や安全性の確保は誰もが賛成のはず。」ということで、その点で見直しを提案したもので、決して原発全否定とまでは言えず、これでも社民党としては妥協したものだったのではないか?と思うのだけど、それでも民主党の直嶋氏は即座にノーと否定したのだという。うーん、そこまで民主党の考えは原発推進で固まっているのか・・と思わないではいられない。
 大体、僕は、頭が悪いのかもしれないが、原発を推進するとか、車社会を推進するとか、言いながらの環境政策っていう考え方がさっぱり理解できないんですけどね・・。


(ニュース)
原発行政 福島氏の見直し発言に、直嶋経産相「ノー」
9月17日11時41分配信
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2009/9/17

なぜかこのタイミングで花王、エコナ販売自粛  公害・薬害・環境・医療問題

*まるで鳩山内閣の発足に合わせたかのように(?)、バタバタと花王、エコナ製品販売自粛のニュース。
 これは厚生省より食用油として初めて特定保健用食品の許可を受けた製品であり、問題が表面化するのをおそれて自粛したのか?
 長妻さん、しっかり監視してください。

(ニュース)
花王、「エコナ」全製品を販売自粛 9月17日から
9月16日17時4分配信
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2009/9/10

モンサント社とFTA  公害・薬害・環境・医療問題

(前記事の「スーパー雑草大発生」の続きです。)

スーパー雑草大発生の話はまさにSFの世界のようなのであるが、人類がまったく予期せぬことが起こっているというより、モンサント社は、もしかしたらこうなることも織り込み済みで確信犯でやっているのかもしれない・・。

モンサント社は、自分の会社で開発した遺伝子組み換え種子と農薬を組み合わせて世界に売りまくっているのであるが、その種子は成長しても種子が発芽しない仕組みになっているのである。農家はいったん、モンサント社のものを受け入れたら、モンサント社の種を買い続けることになるのだという。遺伝子組み換えの種子がどんどん広がれば、在来種の種子は駆逐されていってしまうから、モンサント社が利益を独占できるというわけ。まさにアメリカが世界の農業を独占するために考えたとも言える。カナダなどはすっかり遺伝子組み換え作物が広がってしまった。
ある意味、そうした強引な商法がはじけた、というのか、デメリットを招いたひとつの現象がスーパー雑草発生なのかもしれない。そういう意味では、アメリカの強引な金融商法がバブルがはじけて世界金融恐慌が起こったのと構造的には同じようなものなのかもしれない。
日本は遺伝子組み換えに消費者の抵抗が根強く、アメリカのモンサント社は遺伝子組み換え作物を日本に広げることがまだ出来ないでいるわけだが、FTAがそこで問題になる。民主党はFTAをある程度、受け入れる方針であるが、これは民主党が国粋主義的に貿易をしない鎖国に戻る方針を打ち立てるわけにもいかないだろうから致し方がないことなのかと思うが。自民党でも、FTAを受け入れるしかないところまで来てしまっていたけれども、この先、FTAをまったく拒否しつづけるということは民主党的にも選択できないだろう。だから、どこまで受け入れるか?が問題なのであるが、遺伝子組み換え作物については拒否すると思うのだが・・。
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2009/9/10

スーパー雑草大発生(クローズアップ現代より)  公害・薬害・環境・医療問題

(7日にクローズアップ現代でスーパー雑草の話をやっていたのだが、途中から見だして、これ、最初から見ておくんだった・・と思ったのだが、インターネットとは便利なもので、内容についてまとめて記したサイトがあったのでここに参考までに載せておく。
 除草剤やモンサント社の遺伝子組み換え技術が招き寄せたまたひとつの事態・・。前に書いたけど、ミツバチがいなくなる蜂群崩壊症候群も遺伝子組み換えの影響が大きいのではないか?と僕は疑っているのだけど、遺伝子組み換え作物が直接的に人体に害を与えない・・というのが間違っていなかったのだとしても、それによって、自然界の循環を破壊してしまったら、自然界で様々な予期せぬことが起こり、結局、人間にはね返ってくることになるのではないか・・。
 やはり環境問題を軽視してはいけないのだと思う。環境問題を軽視すると、結局、人間の経済活動にだってはね返ってくることになるのだと思う。
 だから、民主党の、高速道路無料化案には車社会をこれ以上、進めることに根本的に僕は反対なので反対であるのだが、温室効果ガス25パーセント削減案には賛成である。環境問題を軽視したら、長い目では、人類の経済活動、というか、人類の存亡そのものが将来的に圧迫されることになるだろう。そういう長い目で問題を考えることが必要なのであり、目先の損得だけで考えるのは間違いであると僕は思う。)

(以下、参照。)
9月7日(月)放送
スーパー雑草大発生

今、除草剤が効かない"スーパー雑草"が拡大している。宮城県では田んぼに"オモダカ"という雑草が急速に増え、コメの収穫に影響が出ている。福岡県では麦畑に数種類の除草剤でも効かない雑草が出現した。雑草の効率的な管理は農家の宿願。それが1980年代に優れた除草剤が次々に登場し、一気に普及した。ところが同じ除草剤を散布し続けたことで雑草が抵抗性を獲得してしまったのだ。さらにアメリカでは、「グリホサート」という世界的に広く普及している除草剤が効かない雑草が登場。その除草剤に耐性を持つよう遺伝子組み換えされた農作物への影響が心配されている。この雑草とどう向き合っていけばよいのか?その現状と対策を探る。
(NO.2784)

スタジオゲスト : 伊藤 一幸さん
    (神戸大学大学院農学研究科教授)
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2009/0909-2.html

「肝臓みたいな解毒作用」もつ雑草 広がる「除草剤が効かない」
2009/9/ 8
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2009/9/8

シンガポール映画祭、『ミーポック・マン』  映画

シネマート六本木でシンガポール映画祭、『ミーポック・マン』(エリック・クー監督、1995年)。
映画とは画と音とで何かを表現するものだという基本的な当たり前のことだけどつい忘れられがちな基本に立ち返ろうとしていることが、しがない現実の中で生きる男女がボーイ・ミーツ・ガールの基本的な瞬間に立ち返ろうとしている初々しい姿と融合していっているという、実に刺激的な作品。特に無音のシーンは感動的な瞬間と言える。

エリック・クー監督の作品は昔、1990年のPFF(ぴあフィルムフェスティバル)で短編『バービーちゃんの彼はG.I.ジョー』を見た。(ちなみにこの年のスカラシップは矢口史靖監督の『雨女』。)20分の8ミリ映画で、まだエリック・クー監督が商業映画監督としてデビューする前に撮ったまったくの自主映画である。この監督はなんでも8歳の時に両親からキャノンの8ミリ映画カメラをプレゼントされて撮り始めたらしく、まさに8ミリ映画少年あがりの映画作家であるが、インディーズの精神のままで商業映画を撮り続けている監督だと言えるのかもしれない。
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2009/9/8

『サブウェイ123 激突』 トニスコの謎  映画

これは『サブウェイ・パニック』のリメークなのに、『デジャヴ』とやっていることが同じ・・、トニー・スコットってほんとにほとんど同じことをやっているんだなあと驚くのだが。

トニー・スコットの映画に驚くというのか、不思議なのは、決して昔の映画をなぞっているようなシネフィル的な作り方というわけではなくて、今風の撮り方、作り方(細かいカット割の編集や、離れた人物がいろいろなツールで遠隔操作してコミュニケーションをとろうとしているというのをたびたび描く点など、現代的な「今風」のものがうかがえる)のものなのに、にもかかわらず昔風の映画ならではの面白さを再現しているとも思えることである。
今作は、70年代の傑作映画のリメークであるが、実に奇抜とも思えるようなやり方で、今風の作り方でリメークしているのにもかかわらず、スピリットはちゃんと再現しているように思える。リメークであるだけに、「トニスコの謎」が浮かび上がっているとも言えるのかも。
すなわち・・
トニー・スコットはシネフィルなのか? 新しいもの好きな人なのか?
古いのか? 新しいのか?
という「トニスコの謎」が。
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2009/9/2

『マーターズ』  映画

まさに極限。
いくらホラー映画とは言え、普通はどこかに救いの要素がありそうなものだが、ここまでダークで救いの要素が見いだせない映画はちょっと見たことがない。その意味で、この手のホラー映画のひとつの金字塔と言っていいものかもしれない。
しかし、これは本当にダークで救いがない作品なので、ホラー映画がよほど好きと言うのか、興味がある人以外にはまったくおすすめしない。
どのぐらいダークなのかと言うと、たとえばトリアーなんて比じゃないよ・・と書けば、分かってもらえると思う。
なんて書くと、かえって恐いものみたさの感情を煽ってしまっているのかもしれないけれども・・、本当にダークで、ハードコアなホラー映画なので、普通の人は絶対、近づかない方がいい。

いや、もしかしたら、いわゆるホラー映画マニアの人でも、通常のスプラッタ映画の面白い要素はないとも言える作品なので・・、受け付けないかもしれない。たとえば、スプラッタ映画には笑える要素とかもあったりするけど、このパスカル・ロジェ監督の『マーターズ』にはコメディの要素はない。ひたすらダークに残酷な描写を積み重ねていく。このフランス製ホラーはアメリカ的なエンターテイメントの物語の語り口ではない。たとえば『ホステル』や『ヒルズ・ハブ・アイズ』なら物語の語り口を楽しむことで、残酷な描写から「気晴らし」を求めることが出来るかもしれないけれども、それもない。つまり、パスカル・ロジェ監督は、哲学者のパスカルのように・・「気晴らし」を求めていない。「気晴らし」を求めずにひたすら残酷と死を凝視しようとする。バタイユ的であるとも言える。

『サイレントヒル』(クリストフ・ガンズ監督)が近いのかもしれないが、『サイレントヒル』だって幻想的で美しいシーンがあったのだが、それもほとんどない。わずかに、冒頭と最後の8ミリ映画の映像のイメージと2人の少女の関係性の部分に・・、美しい夢のイメージを見い出すことが出来るのかもしれないが、それも8ミリ映画の映像としてこの作品の中では異質のイメージとして描かれているので、つまり、これは夢である・・と示されて描かれていると言えるので・・、こういうシーンがあってもより残酷な現実があることを暗示しているものだとも解釈できるので・・、より残酷かもしれない。

たとえば平穏な家庭の描写のシーンにさえ、ネズミのような無気味なものをしのばせて無気味な描写をしてしまう、この『マーターズ』のパスカル・ロジェ監督の深い心の闇というのか、この社会の残酷さを凝視しようとする姿勢には戦慄せざるを得ない。

すでにハリウッドから3本の映画のオファーが来ているというパスカル・ロジェ監督であるが、果たしてハリウッド映画を撮れるのだろうか? それだけの力量がないということではない。力量の問題以前に、これは本質的にハリウッド的なエンターテイメントの映画ではなく、ひたすら人間の現実を、人間の残酷さと死を凝視しようとするような作品なので・・、こうしたものがハリウッド映画として成立し得るのだろうか?という意味だが・・。

僕は果たして、パスカル・ロジェ監督の作品をまた見に行くだろうか? 恐くて見に行けないかもしれない。それとも、恐いものみたさにまた見に行ってしまうかもしれない。
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