2013/8/25

原一男監督『命てなんぼなん?』  映画

原一男監督が、アスベスト被害者たちの裁判闘争を記録した『命てなんぼなん?』を、シューレ国際映画祭にて、見る。真正面から被害者たちの訴え、闘病や暮らしの様子を撮っていて、迫力ある。風呂場で咳込むシーンが特に‥。ただ、国や企業の非情さばかりが目につき、希望も持てないので、見るのがつらい。しかし、原一男監督はどんなにつらい話でもアスベスト被害者をあくまで正面から撮っている。僕みたいに、カネミ油症被害を、変化球的に撮るのとは違うなあとちょっと自分のことを反省。
アスベスト裁判は、国の責任を認め勝訴と思えるケースでも、原告の中には認められない人がいたり、時期で分かれたり、原告によって判決がわかれていることが分かった。被害者を分断しようとしているためでもあるのだろうか。しかし、それでも、この原告たちは結団力が強く、分断せずに闘っているよう。そうした『命てなんぼなん?』に出てくる、泉南アスベスト訴訟の原告の人たちの結団し、まとまる姿には感銘を受けたが‥。
この『命てなんぼなん?』は集会などで上映するバージョンとしてつくった67分のもので、原一男監督としては、まだ完成品とは言えず、もっと長いバージョンを製作中のようだ。しかし、7年、かかっているがどういう作品にするのか、相当、悩んでつくられているようだ。(上映後の監督の話によると。)
僕の『食卓の肖像』はカネミ油症を変化球で描いたと書いたけど、正直、正面からこうした被害を描いても、それで映画が出来るのかなあという気持ちもある。でも、『命てなんぼなん?』ぐらいのクオリティなら、正面からで十分に見れる。ただし、原一男監督自身は、それでいいのかと悩んでいらっしゃるのかも。

シューレ国際映画祭では、あわせて、一般公募からの入選5作品を見てきたが、『いたいのいたいのとんでいけ』(朴美和監督、30分)の子役の使い方と子役のうまさに感心。この『いたいのいたいのとんでいけ』は9月の「ぴあフィルムフェスティバル」にも残っていて上映されるようだ。まあ、この作品はよく出来ていると思うので、評価されるのは妥当かと思う。ただ、自主映画としてはレベルは高いが、新しい才能に出会った衝撃とかは感じなかったが・・。
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2013/8/14

『トゥ・ザ・ワンダー』  映画

テレンス・マリック監督の『トゥ・ザ・ワンダー』、最先端のスタッフによる映像技術でつくられた、ただのプライベートフィルムとして祝福したい。前作『ツリー・オブ・ライフ』に続き、ただの個人映画を豪華につくっているという域に達しているマリック監督なのだけど、『ツリー・オブ・ライフ』は、宗教的イメージそのままのシーンに、「うわ、これではほんとの宗教映画」と、やや気持ちが引いたところはなかったわけではない。しかし、今回の『トゥ・ザ・ワンダー』も、主人公の内面的葛藤の背景には宗教的要素がかなりあるようだけど、表に描かれているのはごくごく普遍的な男女の愛の葛藤の話なので、それほど、宗教的要素でひっかかることもなく、豪華な映像技術でつくられた、ただのプライベートフィルムという感じで、けっこう愛すべき作品という感じで見ることが出来た。
『シン・レッド・ライン』が好きだったのは、戦争映画でも、片方が善で片方が悪といった種わけはなく、善悪とか、生と死は超越して、いわば自然の観点から戦争を見ているみたいな感覚があったところであり、また『ニュー・ワールド』にしても、もちろん白人主義の映画ではないだろうが、かといって、先住民族の視点で、白人たちを批判的に描いているというわけでもなく、超越的な観点からのドラマだったと言えるのだろう。そうしたマリックの『シン・レッド・ライン』や『ニュー・ワールド』の超越的な視点に僕は興味をひかれるのだけど、これはいわば神の視点なので、そうした神の超越的な視点で描くのってどうなのかとか、態度として中途半端だという批判があるのも、もっともではあるのかもしれない。実際、『ツリー・オブ・ライフ』では本当に宗教的イメージがかなりそのまま出てきたので、うわっと、さすがに僕もひくところはあった。でも『トゥ・ザ・ワンダー』のように、背景として宗教があるということならいいのでは。
それにしても、寡作で知られたマリック監督のこのところの量産ぶりはなんなんだろう。「あ、俺が撮りたかったのは結局、ただの個人映画だったんだ」とようやく自分で気がついて、気持ちが吹っ切れたのかも。
いずれにしろ、テレンス・マリックのようなアメリカ映画の巨匠の映画監督が、脚本なしの、ただのプライベートフィルムみたいな作品を、最先端の映像技術で豪華につくっているって、いいことなんじゃないのかな。
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2013/8/2

『風立ちぬ』(ツイッターから)  映画

ツイッターで宮崎駿の『風立ちぬ』について、ツイート、やり取りをしました。
しかし、僕もオタクだな・・。



(未見の方は注意。やや、ネタバレかも・・)






映画『食卓の肖像』(金子サトシ) ‏@satokaneko
宮崎駿の『風立ちぬ』をストレートに反戦を訴えている映画ではないと批判している人がいるようだが、しかし、宮崎駿がストレートに「戦争はいけない」と声高に訴えるような映画をつくったとして、多くの人が見るものなのだろうか。

観客というのは、ひねくれたものだから、ストレートに「戦争はいけない」と言っても、「そんなこと、分かっているよ。わざわざそんな説教を聞きにお金、払って、映画、見てるんじゃねえよ」と思って、素直に見てくれないものなのではないだろうか。

それが分かっているから、宮崎は、ストレートに戦争はいけないと訴えるような作り方ではなく、戦争とは何か?と考えさせるような作り方をしているのではないか。

おそらく宮崎自身は日頃の言動からすると「戦争はいけない」と思っているのではないかと感じているが、そう思っていたからといってそういう作り方はしない。それは、そうしない方が広く観客に伝わる作品になると考えているからなのでは。現に『風立ちぬ』はヒットしているようだし。

(本田孝義さんへの返信)
映画『食卓の肖像』(金子サトシ) ‏@satokaneko
@hontaka1229あのラストは涙なしには見れませんよね。まあ、堀辰雄題材にしながら感傷的なところはかなりおさえている映画ですので、それで泣いてしまうのは、観客の僕のただの感傷でしかないかもしれませんが。

@hontaka1229 いやー、でも、とにかく、戦争そのものについては一切、描かず、それで戦争に関して表現してしまう、その表現力がただただ凄いと思いました。戦争というと「死」が当然、テーマなんだけど、「死」についても戦争とは直接、関係ない結核の「死」という形でしか出てこない。

@hontaka1229 宮崎駿の表現力に驚くなんて、あまりに今さらという感じでしかないかもしれないけど‥。でも、この『風立ちぬ』のように、いったい、どうすればこんな風に、戦争を直接、描かずに戦争を描くことができるのか?

@hontaka1229 本当に、どうすれば戦争を描かずに戦争について描けるのか?すなわち、公害を描かずに公害について描けるのか?あるいは、原発を描かずに原発について描けるんだろうか?

(大久保英樹さんへの返信)
映画『食卓の肖像』(金子サトシ) ‏@satokaneko
@okokubo そうかなあ・・。僕は、予測はしてたけど、まさか、ここまで爆撃シーンとか、まったくなしに戦争の映画を描いたのかと驚いて、そのことに圧倒されてしまったんですけど・・。中途半端にちょっとでも爆撃シーンを入れるなら、ここまで一切、ないほうが潔くていいと僕は思います。

@okokubo 「誉め殺し造型」って、どういう意味ですか?キャラクターが類型的みたいなこと?うーん、そう言われると、そういうところはあるのかな・・。それは当たっているかも。僕は見ている時はそこは気にならなかったけど、そういう点を見れば乗れないことはたしかにあるかもしれませんね。

@okokubo 考え直してみましたが、キャラクター造型という点では『風立ちぬ』はたしかにひどいと言えばひどいところはあるかもしれないが、そもそもこれは戦争の時代、「個人」がなかった時代の話なので・・。そのへんもわざと確信犯で「個人」がなかったということを描いているとも思えます。

@okokubo もし、そうだとすると、それはたしかに、エンタメ映画の作りとしてはひどいことだし、大久保さんのご指摘も当たっているのかもしれないという気もしてきましたが、でも、やはり、僕はそこまで冷徹に、見据えて作品をつくった宮崎駿監督を支持したいと考えます。

(再び、大久保英樹さんへの返信)
@okokubo そうです。宮崎駿は、端的に勧善懲悪、善人対悪人みたいな話に集約されるようには物語を描かない作家です。イーストウッドと同じ。宮崎の場合は、その世界を、 変なキャラクターを出すことで成立させているのです。つまり、妖怪なんだけど、妖怪だから悪とは言えない。

@okokubo とにかく、妖怪がユニークで、変なんですね。トトロにしても、カオナシにしても、善悪をそのユニークさでこえている。見てて「変なの、おもしろーい!」と見てしまうから、妖怪は悪い奴ということをこえてしまう。人間(人類)が善で、妖怪が悪といった区分けをこえてしまうわけ。

@okokubo で、端的に言うと、この『風立ちぬ』の菜穂子も妖怪なんですよね・・。はっきり言って、人間の大人の女というより妖怪と言っていいかも・・。それに対して、戦争中の恋愛話の映画でそれはないだろ!?というのは当然、あっていいかとは思います。大人の恋愛、ちゃんとやれよって。

@okokubo 僕は、山口百恵主演の『風立ちぬ』(相手役はもちろん三浦友和)がけっこう好きで、泣きながら見た覚えがあるので、ヒロインのキャラクターについて、それと比べたらというのはないこともないけど、でもまあ、宮崎アニメと劇映画をそういう比較するのは無理があるのかなあと…。
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