2015/1/19

斎藤環氏の『沈みゆく大国 アメリカ』批判について(続き)  公害・薬害・環境・医療問題

前の文章を書いた後に、斎藤環氏のツイートを見たら、『沈みゆく大国 アメリカ』について、「最大の問題は、オバマケア導入以前から存在している問題を、まるで導入以降に生じたかのように印象操作していること」と斎藤氏がツイートされていました。しかし、この読み方のほうが誤読ではないでしょうか。
たとえば、『沈みゆく大国 アメリカ』の、重要なドン・ダイソン医師のインタビューを読み直してみると、この医師は、オバマケアによってメディケア、メディケイドの問題が生じたなどとは言っていないように思います。
ドン・ダイソン医師は、メディケア、メディケイドの保険の問題があり、むしろオバマケアによってこれが解消されることを期待していたが、しかし、オバマケアはまったくその解決策にならなかった、それでオバマケアには失望したということを言っているのではないでしょうか。私にはそう読めます。
これは「オバマケア導入以前から存在している問題を、まるで導入以降に生じたかのように印象操作している」ということではないと思うのですが…。
ただ、『沈みゆく大国 アメリカ』にはオバマケアによってそういう問題が生じたとは書いていないと思うが、オバマケアがその解決にはならないどころか、事態をさらに深刻化させているということを主張しているのかなとは思います。この点はたしかに異論はあり得るかもしれません。
つまり、メディケア、メディケイドの保険の問題はオバマケア以前からある問題であり、オバマケアとは別問題。なので、オバマケアによってそれが良くなるとかさらに悪化するということでもなく、そもそも違う問題ではないかと考えるなら、オバマケアについて論じる時にそれを持ち出すのは印象操作だと。
そのような考えで、印象操作だと言われているのかなといま、思いましたが、もしそうだとしても、オバマケアによってこうした問題が生じたという風にはやはり書いていないように思うので、その点は誤読のように思います。
堤氏はオバマケアがアメリカの医療問題を解決しないどころか、さらに深刻化させると考えて、それでこうした医療問題について書いているのではないでしょうか。ただ、この点は、オバマケアがそうした医療問題をさらに悪化させるのかどうかは、オバマケアはまだ始まったばかりだし、評価できないところはあるのかもしれません。
堤未果氏の著書に対して、そうした異論はあるのかなとは思いますが、でも堤氏は、オバマケアによってこうした問題が生じた、オバマケア以前にはこうした問題はなかったとは書いていないし、オバマケア以前からあるこうした問題が、オバマケアによって悪化するのではないかという主張と思われます。
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2015/1/19

斎藤環氏の堤未果『沈みゆく大国 アメリカ』書評に疑問を感じる  公害・薬害・環境・医療問題

堤未果『沈みゆく大国 アメリカ』について、斎藤環氏が朝日新聞で内容に批判的な書評を書いていると知って、批判的な書評というのはどういうものかと思ってつい読んでみたのだが(だって、書評ってほめるものが多くて、貶す書評って珍しいから逆に興味を感じる)、斎藤氏が言われていることは、堤未果氏のこの本を読んだ私からすると、ちょっと違うのではないかと思った。
斎藤氏は、堤未果氏の著書は、あまりに一方的にオバマケアを批判しているもので、公平さに欠けるといったことを批判されているようだが、もし、堤未果氏が学者で学問的にオバマケアをどう評価するかということでこの本を書かれたのならたしかにそうした客観性を欠いていることは問題があることなのかもしれないと思うのだが、堤未果氏は、学者じゃないし、むしろ、明らかに、日本が世界に誇る国民皆保険制度が崩壊するような事態は回避したい、オバマケアは日本の国民皆保険制度とは全然ちがう、オバマケアを徹底的に批判しなければならないという考えで、この本を書いていると思う。つまり、これは学問的にオバマケアをどう評価するかという本ではなく、政治的な目的のために、一方的に書かれた本なのではないかと思う。むしろ、そこがすがすがしいというのか。それは私だって、読みながら、ここまで一方的にオバマケアを否定しているが本当なのだろうか…とは思いつつ、読んだのだが、なんのために、オバマケアの問題点を列挙して批判しているのか、その目的が明快(日本の国民皆保険制度を守ることを訴えようという)なので、その意味で、著者の主張は実に分かりやすいし、そこがすがすがしくていいなと思ったのだ。つまり、これが学問の書だったらたしかに問題なのかもしれないとは思うんだけど、一方的な主張を述べる政治的な目的のための本という感じなので、この著書はこれはこれでいいのではないかと私には思えるのだが。
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2015/1/17

『そこのみにて光輝く』『WOOD JOB!』など  映画

『そこのみにて光輝く』をDVD鑑賞。なるほど、これが昨年の日本映画ベストワンか…。たしかに凄い力作だとは思ったんだけど、個人的には、ちょっとここまでひたすら暗い話はかなり苦手で、この監督の作品は前の『オカンの嫁入り』のほうが個人的には楽しめたかなあと思う。が、映画的な技術としては『そこのみにて光輝く』は凄く上達していることはたしかで、それはそれでたいしたものではあるが。
あと、『WOOD JOB!』もDVDで見たけど、相変わらずの矢口史靖のエンターテイメント作品でじゅうぶんに楽しめたけど、なるほど、なるほど、面白いなあ…というのをこえて印象には残らなかった。ある意味、矢口監督の作品はエンタメとしてあまりに出来すぎていて、かえって、「ああ、面白かったなあ」で終わってしまうのかも。いや、もしかしたら、映画というものはそれでいいのかもしれず、ついつい「面白さ」とは違うものを求めてしまう僕のほうがおかしいのかもしれないんだけど…。
というわけで、個人的には、『WOOD JOB!』より、石井裕也監督の『バンクーバーの朝日』を買う。『バンクーバーの朝日』は野球ものとしては盛り上がらないし、その意味ではエンターテイメントとしては失敗しているのかもしれないが、むしろカナダ移民の話を盛り上がるエンタメとしてつくらなかったところに作家性を感じる。
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2015/1/17

『その街のこども』  映画

『その街のこども』を実は見ていなくて、今年の再放送で初めて見たのだが、なるほど、これは大震災という社会派的テーマを、ユニークなとらえ方で描いた作品だなあと思った。
同時に思ったことは、この作り方だと低予算であまりお金をかけないでつくれるのではないかと…。だって、男と女の2人がいて、歩いているところを追いかけて撮るだけでつくれるので。昔、ヌーヴェルヴァーグで、男と女と車があれば映画は出来るみたいな言い方をしていたけど、もはや自動車さえもいらない感じ…。変な言い方かもしれないけど、社会派的テーマの作品を、あまりお金をかけないで(というか、かけるだけのお金を持っていなくて・笑)、低予算でヌーヴェルヴァーグ的につくろうとする場合に参考になる作品なのではないかと思った。
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2015/1/15

フランスのデモに感じる違和感について  時事問題

フランスのデモ、何百万人も集まったというのは凄いなとは思うんだけど、各国首脳が集まり、各国首脳が先導するデモというのは違和感がある。
そもそもデモというのは、権力がやっていることに対して、これは違うなと異議申し立てをしたいようなことがあった時に、市民の側が意思表示として行うものではないのだろうか。各国首脳が集まって、権力の側が主導して、国歌を歌いながらのデモというのはなんか、違うのではないか。
政府が呼びかけたわけではなく、自発的に、市民が集まって、それが何百万人にも膨れ上がったということなら素直にフランスは凄いなと思えるのだけど、どうも今回は違和感を感じてしまう。
下手すると、権力側に都合がよい方向、たとえばテロとの戦い(戦争)のために団結しようみたいな方向に行かないかという気もしてきてしまう。テロはもちろん言語道断だが、テロとの戦いというのが「戦争」になってしまってももちろんいけないわけで、市民の側としては、テロにも反対だし、「戦争」という形でのテロとの戦いにも反対という立場でなければいけないのではないだろうか?
ということは、テロにはもちろん反対だが、「戦争」という形でのテロとの戦いもいけない、「戦争」という形ではなく平和的なやり方でテロとの戦いをしていかないといけないという理屈になるかと思うのだが、このように書くのは簡単なのだが、実際のところ、それはどうすればいいのかと言うと、難しい問題で、実は僕も明快には答えられないのだけど…。
なので、結局、自分自身の考えがよくまとまらないまま、この文章を書いているわけで、自分でも俺も優柔不断だなあとは思うんだけど、とにかく、これはなんか、ちょっと違うのでは…という違和感をどうも感じるということを書いておきます。
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2015/1/6

『バンクーバーの朝日』  映画

世評の通り、なんとも地味で、盛り上がらない野球映画ではある。でも、そこがいいと思う。
なんといっても、主人公の妻夫木聡が、ヒーローらしくないヒーローなのがいい。勇ましいところがまったくなく、キャプテンなのにキャプテンらしくないし、演説は口下手でまるで気合いが出ない。まったくヒーローらしいところがない、等身大の主人公。
野球の仕方もバント攻撃とかせこいし、野球ものとしては、ちばあきおの漫画(『キャプテン』『プレイボール』)の世界に近いのかもしれない。
考えてみると、石井裕也監督の作品は、『舟を編む』の松田龍平も、『ぼくたちの家族』の妻夫木も、やっぱりヒーローらしくない、勇ましいところがまったくない等身大の主人公という感じで、そうした主人公がコツコツと地道にやってたら何かを成し遂げてしまったという感じだった。こうした路線、味わいを築いているのはいいなと思う。
特に、今回の『バンクーバーの朝日』は第二次世界大戦時の話で、妻夫木の父親役を演じる佐藤皓市をはじめ、戦争をしている勇ましい日本人というキャラクターの人物が出てくる。妻夫木演じる主人公の描き方はそれと対照的になっていて、ここにつくりての戦争に対するスタンスがうかがえるようにも思える。
山田洋次の『小さいおうち』にしろ、この『バンクーバーの朝日』にしろ、戦争に対するスタンスという点ではいいところをつかまえているように思う。
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2015/1/2

『東京難民』  映画

DVDで鑑賞。ネットカフェ難民のワーキングプアの話かと思いきや、ホストの話や、あちこちに話が行き過ぎで、なんの話なの?という気はしたが、目的もなく生きていて流されていくタイプの主人公なので、リアリティはある。リアルに現代の世界をつかまえているという意味ではたしかに今の映画だと思う。
ただ、それでも最後にこの映画が辿り着いたところ、え、これが結論でいいのかなという疑問が…。最後まで結局、この主人公は流されているままのようにも思えて…。別にドラマとは何か主人公が成長しなければいけないものだとまでは思わないけど、これで終わりというのはちょっと…。

でも、この映画、いろいろと社会勉強(?)にはなりましたが。
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2015/1/2

『小さいおうち』  映画

DVDで鑑賞。山田洋次監督がどういう欲望でこれを撮ったのかは知らないけど、「反戦映画」というオブラートをすることで「不倫の話」をきれいな話であるかのように撮ってしまった映画と見えなくもない。成瀬や矢崎仁司がそういう映画を撮っても驚かないが、山田洋次がそういうのを撮るのがちょっと面白い。
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