2016/5/10

映画紹介『飯舘村の母ちゃんたち 土とともに』  映画

ポレポレ東中野で上映中の『飯舘村の母ちゃんたち 土とともに』について、下記の紹介文を書きました。

映画紹介 『飯舘村の母ちゃんたち 土とともに』

 『飯舘村の母ちゃんたち 土とともに』(古居みずえ監督)は、2011年3月に起こった福島原発事故により全村避難となった福島県飯舘村の人たちの避難所での生活を追ったドキュメンタリー映画である。菅野榮子さん、菅野芳子さんという2人の女性を中心に追いかけている。菅野榮子さんは、農家だけあって避難所でも畑を借り農作物や植木を育てていて、自給自足の生活をしている。また、菅野榮子さんと菅野芳子さんは、「ばば漫才」と言いながら、しょちゅう冗談を言い合っていて、なんともたくましい。2人の掛け合いがあまりに面白いので、この映画の試写会場では何度も笑いが起こっていた。原発事故からの避難生活の悲惨さを描いているのかと思って見に行ったのだが、ちょっと異なる印象を受けた。飯舘村民が国と東電に賠償申し立てをするシーンなども出てくるのだが、この映画の中心は飯舘村の母ちゃんたちが避難所生活をバイタリティたっぷりに過ごしている姿なのである。
 こう書くと、原発と放射能被害を告発する映画とは違うようだが、しかし、実は飯舘村は日本の原風景を残した農村地帯で、昔ながらの村落共同体が成立していた地域である。菅野榮子さんが避難所にあっても農作物や植木を育てているのは、いわば、原発事故により失われた村落の場を取り戻そうとしている行為だと言えるのではないだろうか。こう考えると、この映画は、原発と放射能被害を直接的に訴えているわけではないが、その中で抗って生きている人たちの日常を深く見つめて描き出した映画なのではないかと思えてくる。
 古居みずえ監督は、5年の歳月をかけて、じっくりと飯舘村の人たちを追い続け、映画の製作資金の調達も含めて様々な困難を乗り越え、この映画を完成させた。その古居監督の粘り腰によって、避難生活を送る人たちの精神性を深くとらえだすことが出来たのではないかと思う。
 東日本大震災と福島原発事故については、多くのドキュメンタリーや劇映画がつくられ続けている。むしろ、安易に題材に寄りかかって映画を次々とつくり過ぎているのではないかという批判もあるようだ。しかし、同時代に起こった未曽有の震災と原発事故に日本の映画人たちは衝撃を受け、それぞれのやり方で取り組まないではいられなかったのだろうし、こうして数多くの東日本大震災と福島原発事故に関わる映画をつくり続けていることは日本の映画人の良心と言えるのではないかと思う。
( 『飯舘村の母ちゃんたち 土とともに』は5月7日よりポレポレ東中野で公開。以降、横浜シネマリン、名古屋シネマテーク、大阪・第七藝術劇場ほかで公開。)
1



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ