2016/10/26

『過激派オペラ』江本純子監督  映画

『過激派オペラ』江本純子監督
うわー、よくも悪くもやっぱり時代は少しずつ、変わってきていて、こういう映画が出てくる時代にいつの間にか、なっていたんだなあということを実感させてくれる作品。しかし、江本純子の、自身のセックスの欲望で劇団を作り芝居をしているというしょうもなさを描いたセルフパロディとも言える作品でありながら、しょうもなさなんてどこかに吹き飛んでしまって清々しい映画になっているのが凄いよね。やはりやっていることが本質的にラジカルだからなのか。もちろん、そのラジカルさをホースで水浴びなどの具体的な映像で見せていて、とにもかくにも映画になっている。
ちなみに、さりげなくカサベテスへのオマージュ(?)も。
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2016/10/21

『ハトは泣いている』  映画

松本武顕監督のドキュメンタリー『ハトは泣いている』を見た。松本さんは、私の師匠、故 浅野辰雄監督の助監督をかつてされていたことがある方で、つまりは私の兄弟子にあたる人だ。
中垣克久氏の立体作品が現政権を批判しているからと都の美術館から撤去された事件と、さいたま市の公民館が「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」という俳句を月報に掲載拒否した事件の顛末を追いかけたものである。作品撤去や掲載拒否といった表現の自由にかかわる重大事を題材にしているものの、それらは公害のように症状をともなう被害者がいるわけではないのでいわば目に見えない被害だし、そうした題材で130分という長さの映画はどうなのかと見る前は思っていたのだが、飽きることなく見ることが出来た。何より、被写体の中垣さんが魅力的。深刻な題材の立体作品、彫刻作品を作っているのだが、この人には言葉の端々にユーモアがある。また、俳句の会の方々の言葉にもユーモアを感じた。今の時代に表現の自由がなくなってきているという深刻なテーマを扱っていながら、ユーモアを感じ、ところどころで笑える映画になっている。もともと被写体の方たちが魅力的だったことと、松本監督がうまくインタビューで誘導してそういう魅力的な言葉を引き出しているところがあるのではないかと思う。良作。
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2016/10/5

『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』  映画

アニメ、もう1本、傑作を見ていた。

『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』トム・ムーア監督
この、アイルランド神話をもとにした優れたアニメーション映画は、ジブリ作品、宮崎駿監督作品の影響を受けているようだが、それは絵柄のタッチやユニークなキャラクター造型だけでなく、結局、善と悪の対立といった視点は無効化してしまう物語であることからもうかがえるだろう。
かつて僕は宮崎駿について以下のように書いた。
「宮崎駿は、端的に勧善懲悪、善人対悪人みたいな話に集約されるようには物語を描かない作家です。イーストウッドと同じ。宮崎の場合は、その世界を、 変なキャラクターを出すことで成立させているのです。つまり、妖怪なんだけど、妖怪だから悪とは言えない。
 とにかく、妖怪がユニークで、変なんですね。トトロにしても、カオナシにしても、善悪をそのユニークさでこえている。見てて「変なの、おもしろーい!」と見てしまうから、妖怪は悪い奴ということをこえてしまう。人間(人類)が善で、妖怪が悪といった区分けをこえてしまうわけ。」
このような、宮崎駿的な、キャラクター造型のユニークさで善と悪の概念を踏み越えてしまうということを、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』のトム・ムーア監督 は踏襲していると言えるのだけど、さらに物語の構造上に善と悪の対立の概念を無効化する構造を持ち込んでいる。
端的に言って、『ソング・オブ・ザ・シー』は、人(妖精も含む)は複雑な感情を持っていてめんどうだから、魔法の力で感情がない石にしてしまうという魔法の使い方をしてしまい、それを解き放つという物語なのであるが、結局、これは人間と妖精の対立、善と悪の対立といった概念は無効化されていると言えるのだ。
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2016/10/5

『君の名は。』  映画

ようやく、新海誠監督『君の名は。』を鑑賞。タイムパラドックスの処理の仕方に疑問が残る点はあるものの、新海誠監督の作家性というのか、『ほしのこえ』以来、SFものでありながら携帯など、日常的なアイテムで少年、少女の気分をとらえる遠距離恋愛ものという、やっていることの一貫性はそのままで、今回はスケール大きな話も取り込みエンタメ作品にしてしまったという、作家性はそのままでエンタメとしてスケールアップしてしまったという力量には素直に感嘆するべきなのだろう。亡き、かがみあきらの路線の最上の達成ではあるのだろう。
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