2006/8/31

薬害C型肝炎九州訴訟 一部勝訴  公害・薬害・環境・医療問題

*一部勝訴という微妙な判決。「線引き」の基準がややっこしくて分かりにくい。
 それにしても、たびたび薬害を起こすミドリ十字。こうした会社はなんとか出来ないものなのか?

(ニュース)
薬害肝炎九州訴訟 原告、残酷な「線引き」判決に憤り
拡大写真
記者会見で「勝訴」と掲げる(右から)山口美智子さん、出田妙子さん、福田衣里子さん、小林邦丘さん=福岡市中央区で30日午後3時33分、西本勝写す 
 30日の薬害C型肝炎九州訴訟判決。6月の大阪地裁判決より原告の救済範囲は広がったものの、全面勝訴を目指してきた原告は、残酷な「線引き」に憤り、涙した。一方で、国の不作為責任は再び認められ、全面解決の道はさらに一歩進んだ。「被害者全員の救済まで歩みは止めない」。薬害の根絶を誓い、原告たちは力強く前を向いた。【清水健二、石川淳一、高橋咲子】
 午後2時。定刻に須田啓之裁判長が口を開くと、原告・弁護団40人余であふれ返る傍聴席を静寂が包んだ。約5分の主文読み上げ。原告の間で勝敗が分かれ、多くが唇をかんだ。傍聴した支援者らも表情は硬く、閉廷後もしばらく沈黙が続いた。
 原告番号1番から順に、読み上げられた原告が勝訴。番号を飛ばされれば棄却。「1番」の全国原告団代表、山口美智子さん(50)は真っ先に勝訴を告げられたが、「2番」「3番」が飛ばされた。「予想してなかった。悔しさがこみあげた」。口を真横に結んだ。
 クリスマシン(第9因子製剤)を投与された福田衣里子さん(25)は飛ばされた。「負けた……。じゃあ何で病気にならなければならなかったの?」。山口さんから手を握りしめられた。「治療でつらい時、頑張った分だけ喜びがあると思っていたから悔しい」と声を詰まらせ、「でも、必ず問題は乗り越えたい」と絞り出すように言った。
 地裁前では、100人を超える他地裁の原告や支援グループが判決を待った。弁護士が「勝訴」の垂れ幕を掲げて駆け寄ると、拍手がわき起こったが、詳細な内容が分かると動揺が広がった。
 判決後の記者会見と支援者への報告集会。原告の出田妙子さん(48)は「私たちの苦しみが癒えることはない。国と製薬会社の謝罪なしに、被害回復の第一歩を踏み出すことはない。一刻も早く謝罪すべきだ」と訴えた。
 弁護団代表の八尋光秀弁護士は「大阪地裁判決が明確にした国と企業の責任を一歩進めた判断だと評価している。C型肝炎は死に至る病。目をそらしている間に多くの命と人生が奪われた。これ以上被害を拡大してはならず、全面解決まで戦う」と決意を表明した。
 ■解説 同じ一部勝訴だが6月の大阪地裁判決より意味重い
 原告18人中11人への救済を命じた福岡地裁判決は、同じ一部勝訴ではあるが、6月の大阪地裁判決より意味は重い。国の責任の時期をさかのぼったというだけでなく、医薬品の安全性について国により高いレベルの情報収集や調査・検討の義務を課しているからだ。
 医薬品の安全性は、効能(有効性)と副作用(危険性)のバランスで決まる。HIV、ヤコブ病など近年の薬害訴訟では、患者に未知の症状が表れて危険性が急に高まった時、国や製薬会社が「いつ気付き、止められたか」が問題になった。
 87年の集団感染を責任発生の起点とした大阪判決もこの延長線上にあるが、今回はやや異なる。血液製剤による肝炎感染は、40年以上前から医療現場で指摘されていた。判決は、集団感染のような際立った状況変化がなくても、米国内での承認取り消しなどさまざまな知見の積み重ねで、製造・販売の中止が判断できたはず、という理屈だ。
 結果的に違法とはされなかったが、判決は80年以前についても、製造承認時の申請データを「水準に満たない」、製剤が71〜78年の再評価を免れたことを「不相当」と批判している。制度を充実させても運用がずさんである限り、薬害は繰り返されるに違いない。
 原告と同じ血液製剤によるC型肝炎感染者は1万人以上。ウイルス性肝炎全体では約350万人もの感染者がいる。その多くが輸血など医療行為に起因することを考えれば、国が主導して対策を取らねばならないのは明らかだ。検査や治療の体制整備は、将来の医療費抑制にもつながる。
 法的責任の争いに固執し、背後にいる多くの患者の救済を先送りするのは、薬害という「人災」の拡大にほかならない。大阪、福岡と敗訴を重ねた以上、国は被害実態を直視し、和解と恒久対策の確立を急ぐべきだ。【清水健二】
 ■薬害C型肝炎九州訴訟判決要旨
 薬害C型肝炎九州訴訟で、国と製薬会社に賠償を命じた30日の福岡地裁判決の要旨は次の通り。
 1 1964年6月の非加熱フィブリノゲン製剤承認の際の責任
 当時は、医薬品の有効性を判断するために提出を義務付けられた資料に関する規定はなく、当時の知見によれば、産科出血原因は低フィブリノゲン血症であり、フィブリノゲンの補充が有効であると考えられていた。
 また、産科出血の重篤性や肝炎の予後が重篤とは考えられていなかったことからすると、非加熱フィブリノゲン製剤の医薬品としての有効性が認められ、その適応を先天性低フィブリノゲン血症に限定することなく、旧ミドリ十字がこれを製造、販売したことに過失はなく、厚生大臣がその製造を承認したことが違法とはいえない。
 2 77年12月までに非加熱フィブリノゲン製剤の適応を先天性低フィブリノゲン血症に限定しなかった責任
 当時の知見によると、非加熱フィブリノゲン製剤に有効性がなかったとまでは認められないし、肝炎の予後が重篤であるとも考えられていなかったから、非加熱フィブリノゲン製剤の有用性が認められる。したがって、77年12月までに非加熱フィブリノゲン製剤の適応を先天性低フィブリノゲン血症に限定しなかったことについて、旧ミドリ十字の過失は認められないし、厚生大臣の権限不行使が違法ということもできない。
 3 80年11月までに非加熱フィブリノゲン製剤の適応を先天性低フィブリノゲン血症に限定しなかった責任
 78年には米国食品医薬品局(FDA)によるフィブリノゲン製剤の承認取り消しが公示され、当時の知見としてもフィブリノゲン製剤の有効性に疑問が生じていたのであるから、医薬品の安全性の確保等について第一次的な義務を有する旧ミドリ十字だけでなく、厚生大臣としても、その詳細を含めた情報を得た上で、非加熱フィブリノゲン製剤について調査、検討を行うべきであった。この時点で調査、検討を行えば、遅くとも80年11月までには、有効性及び有用性についての判断を行うことができたし、厚生大臣については、仮にそうでないとしても、旧ミドリ十字に対して緊急安全性情報を配布するよう行政指導すべきであった。
 その結果、当時の知見によれば、非加熱フィブリノゲン製剤の有効性がないとされた蓋然(がいぜん)性があるとまでは認められないものの、産科出血及びDICに対する知見が集積されるにつれ、その有効性が乏しいとされていた状況であって、そうした知見に加えてFDAによる承認取り消しによって示された知見や当時においては既に代替製剤が存在していたことなどからすると、この時点における判断として、非加熱フィブリノゲン製剤には後天性低フィブリノゲン血症に対する有用性が認められないとして、適応が制限された蓋然性が高い。
 従って、旧ミドリ十字と厚生大臣は、遅くとも80年11月までに非加熱フィブリノゲン製剤の適応を先天性低フィブリノゲン血症に限定するか、または緊急安全性情報を配布すべき義務があったにもかかわらず、これを怠ったことに過失及び違法性がある。よって、被告会社らと国は、その後に同製剤の投与を受けた原告らに対する損害賠償義務を負う(適応外使用の主張は理由がない)。
 4 加熱フィブリノゲン製剤の適応を先天性低フィブリノゲン血症に限定しなかった責任
 加熱フィブリノゲン製剤は、非加熱フィブリノゲン製剤と有効成分が同一なものであるから、加熱処理によるウイルス不活化の効果がない限り、有用性が認められないところ、不活化の効果は認められない。
 従って、加熱フィブリノゲン製剤の適応を先天性低フィブリノゲン血症に限定しないまま製造、販売した旧ミドリ十字には過失があり、厚生大臣がこれを承認したことは違法である。よって、被告会社らと国は、その投与を受けた原告らに対する損害賠償義務を負う(適応外使用の主張は理由がない)。
 5 クリスマシンの製造承認の際の責任及びその後にその適応を限定しなかった責任
 クリスマシンが適応となる場合には、他の薬剤によっていては早急な効果を期待できず、重篤な結果をもたらすことが考えられるような場合があった。87年に行われた医薬品の再評価手続きにおいても、クリスマシンはその適応に対する有効性が認められ、FDAも一般的には有効で安全であるとしている。
 従って、クリスマシンについては、医薬品としての有効性及び有用性が認められるから、その製造承認をし、これを製造、販売したこと及びその後にその適応を先天性第9因子欠乏症に限定しなかったことについて、被告会社らと国に責任はない。
 6 製剤投与の有無に関する事実認定
 非加熱フィブリノゲン製剤の投与を受けたとする原告らのうち1名(原告番号2)については、その投与を受けたことを認めるに足りる証拠がなく、母子感染したとする原告(同3)についても、フィブリノゲン製剤によってC型肝炎に罹患(りかん)したと認めることができない。
 7 因果関係
 80年11月以降にフィブリノゲン製剤の投与を受けた原告ら11名のうちには、輸血を併用された者もいるが、フィブリノゲン製剤の投与とC型肝炎ウイルス感染との因果関係はすべて認められる。
 8 除斥期間
 C型肝炎ウイルスの持続感染となったことによる損害賠償請求権の除斥期間の起算点は、その旨の診断がされた時または持続感染による症状が発症した時であり、除斥期間が問題となる3名の原告らについて、いずれも除斥期間の経過は認められない。
(毎日新聞) - 8月31日10時8分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060831-00000003-maip-soci
0



トラックバックURL

トラックバック一覧とは、この記事にリンクしている関連ページの一覧です。あなたの記事をここに掲載したいときは、「記事を投稿してこのページにお知らせする」ボタンを押して記事を投稿するか(AutoPageを持っている方のみ)、記事の投稿のときに上のトラックバックURLを送信して投稿してください。
→トラックバックのより詳しい説明へ



teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ